益子京右選手(ブリスベン/横浜DeNA)インタビュー
何事にも“一歩踏み出す勇気” が芽生えた
プロ入り3年目の2021年、プロ初出場・初スタメンとなった試合(10月22日=中日戦)で3投手をリードし、完封勝利に導いた。その後も二軍で着実な成長を見せながら、なかなか一軍での出場機会を得ることができないまま、7年目のシーズンを終えた。そこで益子選手が選んだのは、ABLでの“フルシーズン出場”。その選択の理由と、ここまで得たものを聞いた。(トップ画像ⒸBaseball Australia)

「何か変えなければ」「変わらなければいけない」
――NPBでの2025年は益子選手にとって、どんなシーズンでしたか?
24年同様、オープン戦からシーズンを通して、一度も一軍登録されることがなく、「不甲斐ない」のひと言に尽きる1年でした。
――途中、2カ月弱の故障離脱がありましたね。
左手の有鈎骨骨折でした。バットを振ったときに、グリップエンドが手のひらに当たって折れ、手術をしました。
――もし、その離脱がなかったら、ということは?
確かにシーズン序盤は例年に比べると感覚がよく、4割近く打っていました。それが5月に入ったくらいから少し落ちてきて、その後骨折。骨折がなければ、シーズンを通して試合に出続けて、もしかすると結果は変わっていたかもしれませんが……いや、なんともいえないですね。
――今回、ABLへの派遣を希望したのは、どういう気持ちからでしたか?
やはり「何か変わらなければ」「変えなければいけない」と思いました。(プロ入り後の)過去7年間、1年を通して試合に携わることがなかったので、ここでそんな経験をしたら、来年8年目がどんなシーズンになるのか。覚悟を持って、やってみようと思いました。
――プロ野球選手はオフもほぼ練習を続けていますよね。それを敢えて実戦にすること、しかも環境を変えることに意味がある、と?
そうですね。野球に対する価値観はもちろん、環境を変えることで自分の生活や人とのかかわり方など、中身から変えなければいけないなと思いました。前にオーストラリアに来た先輩たちから、「オーストラリアは環境も人もいいよ」と話を聞いていたこともありました。
――現状、益子選手のポジションである捕手ではなくDHもしくは一塁での出場になっていますが、それは最初から分かっていたのですか?
はい。DHでも一塁でも、ポジションに関係なく、打席に立てればいいと思って来ました。
――ABLの雰囲気、レベルなどの印象はいかがですか?
正直なところ、レベルについては日本のほうが高いのではないかと想像していました。でもブリスベンの選手を見て、こちらも意外と細かい野球をするんだなと感じました。バッティング練習でも最初は逆方向から入るなど、一人ひとりが意識していることが、話を聞いてみても結構細かいんです。野手の返球も、思った以上にコントロールがいいですね。
――他に印象に残ったチームはありますか?
(今首位の)シドニーは、とにかく振りが強い印象です。2ストライクに追い込まれても、あまりスイングを変えずに強く振ってきます。バッティングのいいチームですね。
――益子選手自身は今、どんなことを意識して打席に立っていますか?
相手は全員、初めて対戦する投手ばかり。自分が(NPBで)一軍に上がったら、やはりほぼ対戦経験のない投手を相手に結果を残さなければならないので、そこは意識しています。それから僕、外国人投手にありがちな、コントロールがアバウトで、2ストライクを取っても平気でど真ん中に投げてくるような投手が少し苦手なんです。そういう投手を相手にして、データもほとんどない中、どれだけ自分のポテンシャルで戦えるか、試している面もあります。
――データなしの野球なんて、すごく久しぶりなのでは? そこで何か感覚が研ぎ澄まされてきたとか、学べた部分はありますか?
手元で動くボールに対して、アジャストできるスイングをすること。それからスライダーなどの変化球がメチャクチャ曲がるので、そこへの対応ですね。一軍に行ったら、そのくらいキレのある変化球を持った投手はざらにいるでしょうから、データのないABLでやっていければ、日本でも対応できるようになるんじゃないかと思っています。

(ⒸBaseball Australia)
ABLの選手たちのマインドを見習って
――オーストラリアでは基本、(中川颯投手と一緒に)キッチン付きのアパートメントでの生活ですよね。食事やトレーニングの工夫は、どうしていますか?
食事はほぼ、自炊です。ほとんど、僕が作っています(笑)。でも、そういうところも含め、生活の充実が野球の充実にもつながるかなと思って、自炊や掃除など計画性を持って行うよう心掛けています。トレーニングについては全体練習前や試合前、ジムに行ってトレーニングをしてから球場入りしています。こっちでも自分のやりたいトレーニングができているので、よかったです。
――試合があるから、いつものオフのメニューとは違うトレーニングになっているわけですか?
今まで僕はシーズン中、筋力を付けるようなウエート・トレーニングはしていなかったんです。体に張りがある状態で試合に行きたくなかったので、違う種類のトレーニングをしていました。だけど「来年変わる」という意味でも、(試合をしながら)ウエートをしてみようと思って、10月から続けています。体を強化しながら試合に出続けたときにどうなるか、来季に向けてもいい発見があると思っています。
――今のところ、体の感じはどうですか?
毎日腹筋をしているんですが、ボールを捉えたときの感じや、打球が変わってきたように思います。体の内側で回転できている、遠回りせずに振れている感覚があります。
――そうやって自分に変化を感じられると、楽しみですね。オーストラリアに来て、よかったですか?
よかったです。何事にも、一歩踏み出す勇気が芽生えました。初めは野手が日本人一人で、特に遠征のときなど、かなり不安だったんです。そこは、ジョージ(カリル選手=お母さんが日本人で、英日バイリンガル)がいてくれて、とても助かったんですけれども。でも他の選手も、言葉の壁はあっても、こちらが積極的にコミュニケーションを取りに行けば、みんなよくしてくれます。リクソン(ウィングローブ選手)なんかも、ああ見えて同い年の同級生なんですけど(笑)、メッチャ仲よくなりました。
――自分から積極的にアプローチしないと、何も起こらないんですね。人生もそうなんでしょうね。
そう思いました。(中川)颯さんと僕だけでずっと一緒にいたら、こんなふうによくしてもらえなかったと思います。
――ここでの経験を生かし、26年はどんな益子選手をファンに見せてくれますか?
いい意味でも悪い意味でも、こっちの人って他人に興味がないというか、自分のことに集中しています。そのせいか、雰囲気にとても余裕があるように感じます。自信に満ち溢れているというか。そして、そういう雰囲気は、周りに伝染します。だからチームを変える意味でも、自分を変える意味でも、彼らのマインドを見習いたいです。そうすればプレーも変わるし、勝負どころで自分が決められるようなメンタルにもなれると思います。技術云々ではなく、そんなマインド、メンタルのほうが、自分の来年の野球には生きるんじゃないかと思っています。
――キャッチャーのライバルは多いですが、益子選手は何で勝負しますか?
マインドと、バッティングで勝負したいです。

ましこ・きょうすけ◎2000年12月27日生まれ。栃木県出身
176㌢95㌔。右投右打。捕手。青藍泰斗高からドラフト5位で19年、横浜DeNAに入団。
パンチ力のある打撃と強肩が持ち味。
25年はイースタン・リーグで67試合に出場、打率.239、打点22、本塁打5の成績
ABLブリスベンでは主にDH、一塁手として20試合に出場し、打率.241、打点3(12月27日現在)。
