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ラーメン食べたい|アマノ文筆クラブ

父が倒れた。
救急車の中で、母と私は父の手を握っていた。
父は目を閉じたまま、動かなかった。

集中治療室に入って三日目。
面会時間の五分間、私は父の顔を見ていた。
チューブにつながれた父は、小さく。まるで別人のように見えた。

四日目、父が目を開けた。

五日目、父が口を動かした。
聞き取れなかった。

耳を近づけた。
「ラーメン食べたい」
聞き間違いかと思った。
「えっ?」
「駅前の・・・」

意識が混濁しているのだろうか。
訝る私の目を見て、父がかすれながらも、はっきりした声で言った。
「醤油ラーメン、麺硬めで」

私は、泣き笑いしながら、父の友人でもある主治医に報告しに行った。
「父が、ラーメン食べたいと言いました。駅前の醤油ラーメン。」

先生も笑った。
「それは良かった。 お父さんが元気になったら、一緒に行きましょう。」





甘野充さんの、アマノ文筆クラブに参加します。




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