投げやりな恋|アマノ文筆クラブ
「もう、誰でもいいや」
そう思って、使い始めた婚活アプリ。
三十五歳。周りはいつの間にかみんな結婚している。私だけが取り残されている気がして、焦っていた。
プロフィールもろくに見ずに、とりあえず「いいね」を押しまくった。何人かとメッセージをやりとりして、適当に会う約束をした。
けれど正直なところ、あまり期待はしなかった。
何人かと会ったが当然大きな進展もなかった。
彼はそんな相手の一人だった。
カフェでの待ち合わせに、彼は時間通りに来た。
「はじめまして」
「はじめまして」
型通りな挨拶と会話。
期待に満ちた素敵な出会い、という雰囲気ではなかった。
当たり障りのない会話のあと彼が言った。
「ごめんなさい。僕、口下手で」
誠実そうな人柄が見て取れた。
「それに、正直、婚活にももう疲れて来ていて」
「分かります」
私も正直に答えた。
「会うのって、何人目ですか?」
「十人くらい」
「僕もです」
二人で笑った。それからの話は打ち解けたものになった。
婚活の失敗談。変な人に会った話。仕事にも結婚の憧れにも疲れた話。
気づいたら、二時間が過ぎていた。
「あの」
彼が言った。
「また会ってもらえますか?とても話しやすかったから」
「私も」
二回目に会った。三回目も。
相手に良く見られようという気負いはなかった。
素のまま話をした。
半年後、彼が言った。
「あのさ」
「何?」
「結婚、考えてくれないかな」
あまりにも唐突で、私は笑ってしまった。
「それ、プロポーズ?」
「うん」
「指輪は?」
「あ、忘れてた」
彼は本気で困った顔をした。私はますます笑えてきた。
「投げやりなプロポーズだね」
「ごめん。でも、本気なんだ」
その少しいい加減なところが、なぜか心地よかった。
「私も」
一年後、私たちは結婚した。
結婚式で、久しぶりに会った友人に訊かれた。
「二人はどうして結婚したの?」
「投げやりな恋だったから」
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