段取りをきちんと丨アマノ文筆クラブ
「段取り八分」
仕事一筋の父の口癖だ。
勉強の話でも、旅行に行くときも、娘の私が何かを相談するたびに、父はまずそう言った。子供の頃は、うるさいなぁと思っていたが、自分が社会人になってその意味が少しずつ分かってきた。
その父が、突然、七十八で逝った。
呆然としながら片付けをしていると父の引き出しから封筒が出てきた。
私宛で「葬儀のこと」と書いてある。
いつの間に、と訝しく思いながら開けると、式場の希望、花の種類、呼ぶ人のリスト、戒名の方向性まで細かく記されていた。
段取りをきちんとしておけ、と言い続けた人は、自分の死後まで段取りしていた。父らしい最期だと思った。
最後の一行を読みながら私と母は、笑いながら泣いた。
段取りなどあろうはずもなかった。
「香典返しは三千円程度で十分。母さんに負担をかけるな」
甘野充さんの、アマノ文筆クラブに参加します。
▼今回、「段取り」について、こちらのnoteで勉強させていただきました。
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