二本の傘|シロクマ文芸部
雨宿りは、結婚前の私たちのデートの一部だった。
急な雨に降られると、二人で手近な軒下に駆け込んだ。
私たちが持っていたのはせいぜいが一本の傘だった。
肩が触れる距離で、雨が上がるのを待った。
そのまま降り続けば良いと思った。
今は、それぞれのバッグの中に折り畳み傘が入っている。
雨が降っても、もう駆け込みはしない。
それぞれの傘を開いて、それぞれ歩く。
今日は、駅から二人で帰った。
雨が降ってきて、彼が傘を開いた。
私も開いた。
二本の傘が、別々に揺れる。
「昔、傘なかったよね」
私は思い出し笑いをしてそう言った。
彼は前を見たまま応えた。
「あったら、雨宿りしなかったな」
小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します。
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