瞳|風まかせ文芸部
生まれたばかりの娘の瞳。 じっとこちらを見ていた。
「見えてるのかな」
夫が言った。
「ちゃんと、見えてるわ」
私は、娘の手を握った。
その眼差しが愛しくて、娘を「瞳」と名付けた。
3歳。娘の瞳は、いつも輝いていた。
「ママ、見て!」
拾った石を差し出してくる。
「きれいでしょ?」
ただの石だった。
けれど、娘には、宝石に見えていたのだろう。
「うん、きれいだね」
私は、私の宝物を見ながら微笑んだ。
小学生。
瞳は、少しずつ大人びてきた。
「今日、友達とケンカした」彼女が言った。
「どうして?」
「分からない。でも、仲直りしたい」
目に、涙が浮かんだ。
「じゃあ、明日、謝ろうね」
私は、娘を抱きしめた。
中学生になった娘。
私はその瞳を見ることが少なくなった。
「ママ、うるさい」
話しかけようとした私を振り切って、瞳は、部屋に入る。
ドアの前で私は立ち尽くす。
でも、今は、そっとしておこう。
それが昨日のこと。
「ただいま」
玄関から響く明るい声。
学校から帰ってくるなり、彼女は話し始めた。
「ママ、聞いて」
久しぶりに見る、キラキラした瞳。
「うん、聞いてるよ」
よほど嬉しいことがあったのだろう。
息をつくのも忘れて話している。
これから瞳は、何を見、何を学んでいくのだろう。
変わらない瞳。変わっていく瞳。
けれど、ずっとキラキラした瞳であって欲しい。
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