水飲み鳥|シロクマ文芸部
水を飲む鳥が祖父の書斎に居た。
本物ではなく、おもちゃの話。
赤い頭、細い首。
小さなグラスの前でゆっくりと頭を下げては、また起き上がる。
あきることなく、同じ動作を繰り返す。

「なんで動くの?」
知りたがりだった子どもの私は聞いた。
「水を飲みたいからだよ」
祖父はそう言って笑った。
大人になって、仕組みを知った。
蒸発と気圧の差で動く、「永久機関」に近いおもちゃ。
水を飲んでいるわけではない。
この夏、法事で久しぶりに実家に帰ってきた。
主はいなくなったが祖父の部屋の中は、昔と変わらない。
古ぼけてはいたが、机の上の水飲み鳥もまだあった。
面白半分に私はグラスに水を足した。
一度、頭を、水の中に押し込む。
水飲み鳥はまた、頭を下げ始めた。
当時は思いもしなかったが、まるで自分のようだ。
「水を飲みたいからだよ」
祖父の答えが、正しい気がした。
小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します。
