自動ドアの向こう|風まかせ文芸部
自動ドアが、開かなくなった。
スーパーの入り口。
近づいても、ドアは動かない。
「故障かな」 後ろにいた人が言った。
見ると「故障中、手でお開けください」との貼り紙があった。
中に入ると、店員が謝った。
「申し訳ございません。修理中です」
自動ドアが開かない。 奇妙な感じだ。
そういえば、動いていないエスカレーターに乗ったことがある。
足元と視線がおぼつかなくなるあの感覚。
自動ドアは開くもの、エスカレーターは動くもの。
その常識を感覚から揺さぶる。
自動のものはほかにもまだある。
自動改札、自動販売機…。 私たちの生活は、「自動」に囲まれている。
自動のありがたさは、それを失って初めて分かる、といったところか。
しかし、自転車と言っても自分で進むわけではなく、自動車と言っても運転者が必要だ。ここまでの自動は機械的作業を置き換えて便利にしてくれていたにすぎない。
いまや、コンビニに行けばセルフレジがあり、ファミレスの配膳もロボットがやってくれる。 フリーダイヤルに電話をかければ、自動音声対応だし、ネット上の問い合わせ窓口もチャットボットだ。 何らかのサービスを受けようと思ったときにも音声認識と音声合成をAIが使いこなしているため、ヒトと会話しているのかどうかも怪しくなってくる。
買い物を済ませて、出口に向かう。
出口の自動ドアも、開かない。 また、手で押して出た。
振り返って、店内を見た。
私たちは自動ドアの向こうに、何を置いてきたのだろう。
店員がこちらを見て、軽く頭を下げた。
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