真夜中のメッセージ|シロクマ文芸部
深夜二時にスマホが震えた。 ベッドサイドに置いたままにしておいたのが失敗だった。マナーモードにしてはいたが、目覚ましには十分すぎた。
LINEの通知。差出人を見て、一気に眠気が飛んだ。 彼からだった。
「お疲れさま。まだ起きてるかな?仕事のことで相談があるんだ」
三ヶ月前に別れた彼。理由は些細なすれ違いの積み重ね。喧嘩別れをしたわけじゃない。でも、それからずっと連絡は取っていなかった。
画面を見つめたまま、私は固まっていた。
返事をするべきだろうか。仕事の相談なら、断る理由はない。でも、真夜中のメッセージには、別の理由も考えられた。
震える指でキーボードに触れる。
「お疲れさまです。大丈夫ですよ」
そう書いたけれど、送信しなかった。 他人行儀すぎる。
私は別にこだわってはいない。
文字を消して、もう一度打ち直す。
「お疲れさま。どうしたの?」
これも消した。軽すぎる。
「起きてます。どんな相談ですか?」
これも違う。
そんなことを何度も、何度も繰り返した。
時計を見ると、もう二時半を過ぎている。
私はなんでこんなことをしているんだろう。 そう自問しかけて、ふと気づいた。
私がこんなに悩むだろうということを、彼は考えたのだろうか。それとも酔っぱらってメッセージを送ってきたのだろうか。
スマホを裏返しにして、枕元から少し離れた場所に置きなおした。
今夜は、もうやめておこう。
明日の朝の自分は、きっと正しい答えを出せるはずだ。
布団に入りなおした私の部屋の隅で、時計の秒針だけが静かに時を刻んでいた。
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