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七転び、やっと起き|アマノ文筆クラブ|ひとりじゃない

「どんなに転んでも、すぐに起き上がれなくても、いつか起きればいい」
それが母の口癖だ。

私が失恋したときも、受験に失敗したときも、母はそう言った。

「でも、転ばない方が良いに決まってるじゃない」
そういう私に母は言った。

転ばないように注意するのはもちろん大事。
でも転んでしまったからと言って、いつまでも動かないわけにはいかないでしょう?

えいやっと、声をかけて。
それがだめなら時間をかけて。
誰だってやっとの思いで立ち上がるものなのよ。

「七転び八起き、じゃなくて、七転び、やっと起き、それででいいのよ」

母の励ましをありがたいと思いながらも、いつも素直には頷けない。

人生、山あれば谷ありというけれど、 私の人生はきつい上り坂の山と 這い上がるのが嫌になる谷ばかりがあるように思える。

そんな愚痴をこぼしながら、それでも いつの間にかなんとか立ち直ってこられたのは、 間違いなく母のおかげだ。

実は私は今、三度目の転職活動をしている。
一社目は、いわゆるブラック企業だった。 入社半年で体調を崩して退職。 二社目は、三年働いたが、部署の閉鎖で退職。
そして今、三社目を探している。

書類選考ではねられる。
面接を受けても、落ちる。

「前職を短期間で辞めた理由は?」
「なぜまた転職を?」

同じ質問に、何度答えただろう。

「お母さん、また落ちちゃった」
報告の電話をする私に母は静かに言った。
「でも、面接に行ったんでしょう?」
「うん」
「ならいいじゃない。」
母の声が、優しかった。
「やっとでいいの。ゆっくりでいいの」

電話を切って、私はカレンダーを見た。
来週の金曜日に丸を付けてある。
窓の外、冬の空が広がっている。

「何回転んでも、起きればいい。それだけ」
母の言葉を思い出す。

転んだのは石ころがあったからかもしれない。
誰かのせいかもしれない。

けれど、起き上がるのは自分だ。
誰かの手助けがあろうとなかろうと。

焦ってもしかたないんだ。
けれど「やっと」の報告を母に早く聞かせてあげたい。





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「ひとりじゃない」はこのnoteの独自企画で、シングルマザー・母子家庭の日常を描くシリーズです。


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