線香花火|3つのお題に空想のひらめきを
そのとき私は10歳だった。
明日は、母が退院して家に帰ってくる。
はしゃぐ私を、父は買い物に連れて行ってくれた。
母のための食材や飲み物と一緒に父は線香花火を買った。
「ママの体調がよさそうだったら、今度の日曜日にみんなでこれをやろう」
母の帰宅後、穏やかな日が続いた。
日曜の夜、3人で縁側に腰かけた。
父が一本ずつ火をつけてくれた。
上げたり下げたりして見ていた私の火玉はほどなく落ちてしまった。
母の花火は最後まで残っていた。
「お母さんの、強いね」
私が言うと、母は笑った。
父は何も言わなかった。
その時の私は何も知らなかった。
線香花火を長持ちさせる方法も。
父がコトリと咳をして母よりも早く火玉を落としたことも。
翌週には母がまた病院に戻ることも。
片桐みかんさんの企画に参加させていただきます。
昭和ノスタルジー部門の
⏳お題③:「線香花火」
を利用させていただきました。
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