時間が凍った空間で- マーク・マンダース「Silent Studio」(-3/8)
3月某日、銀座。

こんなディスプレイが、春を伝えてくれる、でもまだまだ寒い日。

ギャラリー小柳へ。


この度、ギャラリー小柳では2024年12月18日(水)から2025年3月8日(土)の会期で、マーク・マンダースによる個展「Silent Studio」を開催いたします。本展では、ギャラリー小柳の展示空間をアーティストのスタジオに一変させ、新作を含む9点を公開いたします。
マンダースは 1980 年代後半より、彫刻や家具、日用品や建築部材などを「想像上の」部屋に、緻密に練られた配置図に基づいて配するインスタレーションを制作してきました。それらはすべて作家が「建物としてのセルフポートレイト」と呼ぶライフワークの断片であり、時代や様式を超えて普遍的な美しさを醸し出す彫刻や、実物よりわずかに縮小された家具などを介して、作家自身の抽象的で個人的な思考や感情を、空間のなかで視覚化してきました。
(後に続く)
東京都現代美術館、常設のマーク・マンダース作品
マーク・マンダースといえば、2021年、コロナ禍の東京都現代美術館での展覧会開催が記憶に新しい。
Motでは、1月に訪れた際の常設展でも、その作品が楽しめた。

広い広い展示室の中央に、

不自然なくらいぽつんと、設置されたその作品では、

穏やかな表情の少女たちが、静かに向かい合っていた。





じつはこの作品は、本ギャラリーの所蔵品で、幸運なことに見るチャンスがあったのだと、あとで知った。
本展覧会の会期中、東京都現代美術館で開催されている「開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース Rising Light / Frozen Moment」展では、同館所蔵の《椅子の上の乾いた像》(2011-15年)が特別なインスタレーションで2025年3月30日(日)までご覧いただけます。こちらもあわせてご高覧いただけますと幸いです。
「凍結した瞬間」
さて、

ここ、ギャラリー小柳の展示では

(先ほどのつづき)
「Silent Studio」と題された本展覧会では、ギャラリーの空間を半透明の薄いビニールで囲い、アーティストのスタジオに一変させます。
展示空間の中央には、《Bonewhite Clay Head with Two Ropes》(2018-2024年)が配され、作業台の上に置かれた乾燥してひび割れたかのような彫刻はロープで留められ、今にも崩れそうな緊張感を与えます。
これらの作品がスタジオの設えに配されることで、作業の途中であるかのような印象を見る者にもたらし、静かなスタジオに作家がそれまでその場にいたかのような、あるいは長い間放置されたかのように感じさせます。
儚さが漂う彫刻は実はブロンズなどで強固につくられており、まさにひとつの瞬間が凍結したかのようです。
(後に続く)
今にも、休憩していた作家が戻ってくるのでは、という気配は漂わせながらも、



なにかの途中のある瞬間に、時間が途絶え、まさにそのまま瞬間冷凍されてしまったかのような、しんとした静けさが漂っている。

ただし、誰かが生活していたかのような、生々しさすら漂う痕跡もリアルに残されていて、


冷たさは感じない。

まるで、紀元79年、ヴェスヴィオ火山の大噴火で滅びてしまった、ポンペイの遺跡のように。
モノトーンの空間に映えるブルー
色調をおさえた空間のなかで、青い色が映えていた。


(先ほどの続き)
今回いくつかの作品につかわれた「Bonewhite」は灰色に近い白で、より一層作品に儚さを与えますが、マンダースの作品に見られる青い色彩は、その色合いや深さによって海や風景、そして空の異なる時間を表します。
《Nightfall Scene》(2024)の深い青色は黄昏時の空を表していますが、作品に配された色や素材を通して作品は静かに対話し、詩的な空間をつくりあげています。




動きの予感を孕みながら
止まった時間の中を、影響を受けていない自分だけが動き回っているかのような、ふしぎな鑑賞体験。


前に訪れたときの展示もそうだったが、実際の広さに比べて、空間の広がりを感じさせる。

それは、観る者が彷徨っているのは、自分の意識の中だったりするからかもしれない。



さて。
止まった時間は、いつ動き出すのだろう?

そんな妄想に、まだ囚われながら。
