プロットの続きを公開します。『アッコの夏』
先日、連載中の『アッコの夏』のプロットを公開しました。
100人を超える方に「スキ」をいただきました。
何人もの方から同じようなエクセルの表に書き込んで試してみたという
ご連絡がありました。
書き始める前の下準備や、書いている最中のチェック、振り返りの役に立っているようです。
とても嬉しいことです。公開して良かったと思います。
私のプロットは
①企画書
②ストーリー
③シーン表
から構成されます。
この中では特に③の『シーン表』が、私がもっとも工夫して作っているものです。
その『シーン表』ですが、小説自体が連載中ですので、前回は発表していた冒頭の2シーン分を公開しただけでした。
連載が順調に進み、次のシーンが書き終わりましたので、
今日はその第3シーンの『シーン表』を紹介しようと思います。
(サマスペという旅の行程で言うと、まだ始まったばかりの二日目です)
連載している原稿では下に貼付したマガジン内の⑨~⑫の原稿のシーン表になります。
それではさっそく、プロットの『シーン表』はこちら。
クリックして拡大して見てください。

原稿はシーン表からできている
○『アッコの夏』⑨ 原稿の冒頭
食当の東条がパックに入った卵を、車座になったメンバー一人ずつに配った。
「落とさないでくださいよ。朝はこれしかおかず、ないんですから」
アッコは手のひらの白い卵をじっと見て、隣の由里と顔を見合わせた。由里は平然としている。
●『シーン表』の「最初の三行」
食当の東条がパックに入った卵を、車座になったメンバー一人ずつに配った。「割らないでくださいよ。朝はこれしかおかずないんですから」アッコは手のひらの白い卵をじっと見て、隣の由里と顔を見合わせた。由里は平然としている。「いただきます」
ほぼ同じです。原稿をワープロで打つ前に出だしはできているということです。もちろんいきなりこの「最初の三行」ができるわけではなくて、あーでもない、こーでもない、と考えている内に、形になってきます。
PCのワープロ画面に向かってから、あーでもない、こーでもない、と考えるのも同じことかもしれません。これは好き嫌いの問題でしょう。
ただ私のこれまでの経験で言うと、白紙のワープロ画面を前に考え込むと
「なぜ書けないんだろう」とテンションが下がってしまうのです。
あるいは書かずに、メールを見たりSNSをやったりして、とにかく始動に時間がかかります。
逆にワープロ画面に向かった時、まず「最初の三行」があれば、それを手掛かりに先に進むことができる。これは大きいのです。
原稿を書くときは、この「最初の三行」をワードにペーストして、そこから書き始めるのが私のスタイルです。
●『シーン表』の「シーンのポイント」

ここには、シーンの重要なポイントを書いてあります。
・大梅田の不審な視線。それは何を意味するのか、ということも書いておきます。意味する答えは後半で明かされます。
・宿探しでは何もできなかったアッコが食事で挽回する活躍シーン
この2点がうまく書けるように、と考えながら書き進めていきます。それが頭にあると、ほかのことを書いている時にも、少し触れることができます。それは伏線になったりもします。
たとえばアッコの料理のことで言えば、アッコがいつも自炊をして食費を浮かせている、とか定食屋でバイトしていた、とか納豆のかき混ぜる回数にこだわる、とかいうことを、別のシーンで触れようと思いつきます。
(こうしてアッコが料理が得意だということについての描写や小さなエピソードが増えていきます)
●『シーン表』のアッコの考え
「憧れの由里を応援するためだ」とだけしか書いてありません。
このシーンのいくつかの場所に、アッコの性格、由里に対する思い、そしてなぜこのサマスペに参加したのかということを書いています。その大元になります。
これについては、プロットの企画書にある「ストーリー」にしっかり書いていますので、ここは一行だけにしています。

●『シーン表』の「伏線と回収」
私はミステリ作家なので伏線、回収という欄にしていますが、そんなに大層なことではなくて、先に出てくる大事な情報を事前にちらりと言っておく、程度のことです。
よく「(前もって)たたいておく」と言います。
具体的に「アッコの夏」で言うと
「すげえ大声だな、アッコ」・・・アッコが応援団だったことを後で振り返るため
足の先にかすかな痛みを感じ始めていた。靴擦れかもしれない。・・・後半でアッコは足を痛めて大変なことになります
あの人だって幹事長選挙で園部さんと決選投票まで戦ったんだからな。やるときはやるよ。今は遠慮してるのさ・・・中盤で臨時選挙が行われます。早川と園部には因縁があります。
大事な情報であるほど、これをしておかないと、読者に「いきなりだな」と唐突感を与えてしまいます。
逆にちゃんと伏線を張っておくと、突拍子のないことでも
「ああ、このことだったのか」と自然に受け入れてもらえます。
自分が読者の立場で考えても、前に書いてあったことに気づくと、それだけで、自分が本の内容を理解していることに安心し、ちょっとした記述を覚えている自分に満足するのです。
これってとても大事な読者サービスでもあります。
※この内容に後で触れないといわゆる「回収忘れ」になります。
『アッコの夏』の伏線の場合は後のストーリーに結びついているので忘れようがないのですが、ミステリでは多くの伏線を、しかもさり気なくつくるので、うっかりすると作者も回収を忘れてしまい、伏線が浮いてしまうことがあります。
『サマスペ!九州縦断徒歩合宿』は巨大な伏線
余談です。『アッコの夏』を読んでいただいた方は気づいていると思いますが、この『アッコの夏』は前作の『サマスペ!九州縦断徒歩合宿』の内容を受けて書いているシーンがたくさんあります。
一例ですが昨日、掲載した『アッコの夏』(12)はアッコの初めての食事当番です。宿探しをする先輩をおろおろと見ているのですが、『サマスペ!九州縦断徒歩合宿』でのアッコの宿探しを思い出した方もいるのではないでしょうか?
『アッコの夏』から一年経ち、二年生になったアッコの成長ぶり(?)がうかがえるかと思います。
よかったらこちらも読んで見てください。
説明、描写を不足なく書くために
次に『シーン表』の右側の部分です。

この表の役割についての説明は以前の記事でしましたので、ここでは省きますが、小説の原稿を読んだ後で、見ていただくと、原稿のあちこちにこの内容がちりばめられていることに気づくと思います。
これらの項目には、原稿に書くべきこと、書きたいことを忘れないように
①事前にメモをしておく
②シーンを書き終わった後で、書き忘れがないかチェックする
という二つの意味があります。
具体的に言うと
①・・・「見た目、服装」 主人公のアッコ自身の見た目を、小説の中で書くのが難しいので、ここで「必勝」のはちまき、先輩のセリフで「眉毛が太い」ということを書こうとメモしておきました。
②・・・「五感」 原稿を書き終えたときに、この欄に何もなかったので、後から「フライパンで焼かれる(ような暑さ)」「北極のような(スーパー)の冷気」という描写を付け足しました。
この『シーン表』について
原稿の本編を書くときに、思いついたことをどんどん書いていく、という人もいるでしょう。それで十分な内容が書ければ、こういう表はいらないと思います。
なかなか書くことが浮かばない、あるいは読み直してみるとスカスカでただのあらすじ状態、という経験がある人には、参考になるかなと思います。
最後になりますが
プロットの『企画書』、『ストーリー』には小説の内容を最後まで書いています。先に小説を読みたい方は、連載終了までお待ちください。
長文になってしまいました。
それでは『アッコの夏』の次のシーンが終わったら、またその部分の
『シーン表』をご紹介しようと思います。
