「トトロの元祖はパパンダである」と麻布台ヒルズで体感した話
麻布台ヒルズ ギャラリーで開催中の「高畑勲展」と、アニメ「パンダコパンダ」の感想。

🔸毎朝「日本のアニメーションを作った男。」を眺めている

「高畑勲展 ー日本のアニメーションを作った男。」
毎朝、通勤でこの風景を眺めている。麻布台ヒルズ ギャラリーで開催中のイベント告知だ。会期は2025年6/27(金)~9/15(月・祝)。

スタジオジブリ作品は人並みに好きだが、正直なところ高畑勲は宮崎駿ほどピンとこない。
高畑作品の筆頭に上がる「火垂るの墓」は1度だけ見たけれど、やるせなさで苦しくなるから、再び見ようと思う気持ちが萎えてしまう。

「火垂るの墓」は、7月からネットフリックスで配信スタートした。ジブリ作品が日本で配信されるのは初だと、話題になっている。
🔸「パンダコパンダ」を初めてネトフリで見た

お盆休み、「火垂るの墓」を見る覚悟はないままネトフリを立ち上げたら「パンダコパンダ」が目に止まった。
存在を知ってはいたが、これまで触れる機会がなかった。演出が高畑勲で、脚本が宮崎駿。2人がジブリを立ち上げる前、Aプロダクション時代の作品である。ネトフリにあるのも知らなかった。
通勤で「パンダコパンダ」のパネルをしょっちゅう目にするという刷り込みのせいか、無意識に再生ボタンを押していた。

無料フォトスポット(パンダコパンダ)
以下、ネタバレを含む感想。
「パンダコパンダ」1972年 34分
女児が祖母を駅で見送るシーンから始まる。「アルプスの少女ハイジ」とまではいかないが、のどかな田園風景に「舞台はヨーロッパかしら?」と想像したが、女児が「長崎までの切符よ」と祖母に確認したので、「日本かーい!」と突っ込んでしまった。
小学生のミミ子(女児)は祖母と2人暮らしだが、どうやら両親がいないようだ。祖母が法事で家を空ける間、ミミ子は1人暮らしをすることになる。
街の人に「お留守番中に泥棒が入るかもよ?」と心配されても、「あら素敵だわ、私まだ泥棒は見たことがないもん」と軽やかに笑う。
ミミ子の家は、絵本「ちいさいおうち」のような洋風一軒家で、家具もIKEAみたいにカラフルでシャレオツだが、その外観とはミスマッチなことに竹藪に囲まれている。
1人暮らし中、動物園から逃亡して迷い込んだパンダの親子を喜んで受け入れるミミ子。竹藪の伏線回収である。そして親子として3人で暮らし始める。(は?)
ミミ子は祖母に「小さな子供を持つと世話が大変ですね」と手紙を書く。(祖母、混乱すること確実)
昭和の日本で考えたら狂気の沙汰だ、ヤングケアラーか?などと凝り固まった頭で視聴していたが、後で調べたら「長くつ下のピッピ」(スウェーデン)インスパイアとのこと。言われてみれば耳にしたことのある情報だ。腑に落ちた。
ミミ子の髪型が日本人らしくないのは、ピッピがモデルだからか。ジブリ作品で言うなら「天空の城ラピュタ」のドーラ(空中海賊のおばさん)っぽい。

もともとパンダ好きだった高畑勲が温めていた企画で、上野動物園のパンダブームに合わせて制作が動き、ピッピのキャラを作り変えて公開されたそう。
そして、でっかいパンダ(パパンダ)の佇まいや表情を見て「トトロやん!」と思う。
静止画ではそこまで思わなかった、でも動画を見たら一目瞭然だ。コパンダとミミ子がパパンダに抱きつく様子は、サツキとメイがトトロに飛びつくシーンそのものだ。
後から調べたら、まさにその通りのことが「ジブリ美術館」の公式サイトに書いてあった。
また、「ハフポスト」の高畑勲インタビューで、「パンダコパンダ」と「トトロ」についての興味深い関係性が語られている。
子どもの心をパァーっと解放する映画をつくりたい。『長靴下のピッピ』を原作にすればそれが可能ではないか、ということでした。
子どもの日常生活の中に突然「お客さま」がやってくる。「お客さま」は世界一力持ちの女の子でも、泥棒さんでも動物でも、あるいはお化けでもいい。それで生活が一変し、毎日がわくわくする日々になる。
あのパパンダは、見ただけですぐにトトロを思い出します。じつにすばらしい「お客さま」です。彼(宮崎駿)がずっとあたためていた「所沢のお化け」がパパンダになり、またトトロになった。
ミミ子の家にパパンダ親子が「お客さま」としてやってくることは、当時の子供達を夢中にさせたに違いない。トトロに比べたら展開が強引だけど。(トトロがよくできている、とも言える。)
私も子どもの頃に出会っていたら、「ヤングケアラー?」などとアニメの本質からずれた思考は出てこなかったに違いない。
2作品の関係性についてマニアには常識なのだろうが、今さらこんな楽しいエピソードが知れて面白かった。
「パンダコパンダ」を知る人は、トトロ公開時に「トトロはパパンダがモデルなのね」とほくそ笑んだのだろう。
どうでもいいけど、おまわりさんの声が「ルパン三世(山田康雄)だ」と思って気になる。
YouTubeで本編をちょっとだけ見れる。
「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」1973年 38分
1年後に別のエピソードが公開された。近所にやってきたサーカスの動物達と、ミミ子、パパンダ親子の交流を描いている。こっちのエピソードの方がエンタメらしくて好きだ。
特に、嵐の翌日に街が水没するシーンは「崖の上のポニョ」を連想するファンタジックな演出である。ずいぶん前の作品なのに、水中の表現が独創的で引き込まれる。
宮崎駿は、水没の街をじっくり描きたくて後に「崖の上のポニョ」を作ったのだろうか、と思うほど。
水森亜土が歌う主題歌「ミミちゃんとパンダ・コパンダ」は、サビの「パンダ パパンダ コパンダ」のリピートに中毒性がある。
「パンダ パパンダ コパンダ」が、絶賛脳内ノンストップである。
🔸勢いで「高畑勲展」へ

「パンダコパンダ」の影響で「高畑勲展」へ行く気になった。
お盆明け、平日の夜なら空いていると思った。案の定、快適に見学できた。
撮影禁止で、大人達が熱心に見入っていた。平日のせいか私のようなソロ客が多かった。
代表作が年代順に展示されており、手書きのメモやノート、絵コンテ、関連資料、インタビュー映像などで構成されている。
「かぐや姫の物語」「平成狸合戦ぽんぽこ」「おもひでぽろぽろ」「火垂るの墓」など近年は長編映画のイメージが濃いが、始まりは「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「赤毛のアン」「じゃりン子チエ」など、長編アニメを演出・監督した人なのだ。
まさに「日本のアニメーションを作った男。」だなぁと改めて知る。

無料フォトスポット(平成狸合戦ぽんぽこ)
「赤毛のアン」では、原作を元に年表を作り出来事を把握したと言う。手書きの年表があった。
推しの年表を作る推し活がある、と聞いたことがあるが、まさにオタク魂である。
「ルパン三世」は、低視聴率でテコ入れのために宮崎駿と高畑勲に引き継がれたこと、知らなかった。
「セロ弾きのゴーシュ」も脚本・演出だったのか。
数年前、岩手県花巻市の「宮沢賢治記念館」を旅行で訪問する際に、改めて見直したアニメだった。ゴーシュと猫の共演は名シーンである。
「かぐや姫の物語」のインタビューで、「アニメの絵が嫌いなんだよ」と高畑勲が話していたのが心に残った。
だから、「ホーホケキョ となりの山田くん」と共に水彩画風の独特で繊細なタッチのアニメが出来上がったのか。
「かぐや姫の物語」では、完成した映像と、制作過程の映像が流れており、見比べるのも面白かった。
月に帰っていくシーンが美しくて賑やかで好きだ。そのシーンはピックアップされていなかったが、舞い散る桜と共に喜びを爆発させるかぐや姫の映像が流れていた。桜の躍動感と感情の見事なシンクロに、改めて素晴らしい技術だなぁと顔がほころんだ、
「パンダコパンダ」展示の近くには、お蔵入りとなった「長くつ下のピッピ」の企画書があった。ピッピを見て、ミミ子はピッピがモデルだと視覚的にも理解する。

「火垂るの墓」は、最も大きな展示スペースが設けられ、海外のお客さんも熱心に見入っていた。
私はちゃんと向き合えなかった。近いうちに再視聴しようと思う。
どうでもいいけど私の誕生日は8月15日だ。
「終戦記念日ですね」と言う人がほとんどだが、「平和な日に生まれたんですね」と言った人がいた。良い言葉だなぁと思って心にしまっている。
誰だか忘れちゃったけど。

🔸パパンダはトトロだった
展示とは別エリアに、誰でも入れるグッズショップがある。実物大のパパンダと写真も撮れる。無料だ。
最初、外から見てギョッとした。

天井に設置したカメラで撮影することで、パパンダのお腹に飛びついているような映え写真が出来上がるらしい。データはQRコードで共有してくれる、今時のサービスだ。
誰も並んでいなかったし喜んで利用した。もちろん大人もOKだよ。
その昔、「三鷹の森ジブリ美術館」で「ネコバスの利用は小学生以下のみ」と聞いてガッカリしたことがある。
愛知の「ジブリパーク」には大人も乗れるネコバスがあるそうだ。羨ましい。大人(私50歳)だってネコバスに乗ったり、パパンダに抱きつきたいんだ。
パパンダの腹にダイブした瞬間、「トトロだ♡」と妙に安心してリラックスした。トトロに乗ったことないけど。
パパンダはおひさまのにおいがした。ウソ、ほのかに柔軟剤の香りがした。スタッフさんがファブリーズとかして手入れしてくれているからだろう。
でも、ほっとしたのは本当だ。トトロは私にとって大人になった今もすばらしい「お客さま」だし、パパンダも同じくすばらしい「お客さま」となった。


「トトロの元祖はパパンダである」
そのことを麻布台ヒルズで体感した。
たまたま通勤地で「高畑勲展」をやっていて、たまたまネトフリで「パンダコパンダ」を視聴という偶然が重なったお陰だ。
来月は「ジブリの立体造型物展」へ行く予定がある。さらに楽しみになった。
🔸おまけ:キャラカフェ

ええっ、ないの?どうして、おしえておじいさん
麻布台ヒルズ常設の「麻布台ヒルズカフェ」とハイジがコラボしている。平日の夜はリーマンも通常運転でビジネス利用しているので、ちょっとシュールな図に見える。
「ハイジとクララの仲良しサンド」「ユキちゃんのパンナコッタ」的なコラボメニューがあるようだ。
向かいにスターバックス(プリンチ併設)があるので、麻布台ヒルズカフェは利用したことがないが、ちゃんとしたお店が経営しているので食事は美味しいようだ。

無料フォトスポット(アルプスの少女ハイジ)
ハイジカフェとは別に、ギャラリーカフェもある。



パパンダカレー1,780円、ヒルズ価格。
ちょうどカレーが食べたかったけど、あまりピンと来なかったので、すき家のバターチキンカレーを食べに行った。
毎日通勤で通るので、会期中にどうしても気になったら食べるね、パパンダカレー。

麻布台ヒルズ、虎ノ門ヒルズのおすすめ。
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