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【第1回】「安全だが遅い」受注生産の限界と、海を越えるコンテナ戦略

出荷ドックは騒々しい。
フォークリフトの駆動音、木材が軋む音、木箱が移動させられる際の鈍い衝撃音。
搬入口の近くに、密閉されラベルが貼られた木箱が一つ置かれている。
私はそれを見て尋ねた。
「これはどこへ行くんだ?」

早川がノートを手に私の傍らに立っている。
「フィンランドです」と早川が答える。
「フィンランド? 初めてじゃないか?」
「ええ。スカンジナビア半島で稼働する最初の1台になります」

私たちは中庭を横切り、食堂へ向かった。
私は彼に茶を注ぎ、自分にも注いだ。
「あのな、早川。俺にはずっと前から夢があったんだ。戦後、この国は輸出で外貨を稼ぎ、それで復興してきた。世界が求めているものを作り、通貨を得る。それが日本の生きていく道だった」

早川は聞いている。ペンを手にしたままで。
「俺は何年も前にこの会社を立ち上げ、ずっと円建てで機械を売ってきた。ヨーロッパの顧客が、ウェブサイトで見つけた日本の地方にあるメーカーに対し、海を越えて送金してくるのを見てきた。だが、俺たちのビジネスモデルには限界が来ている」

俺は急須を持ち上げ、テーブルの中央に置いた。
「我々のキャッシュをこのお茶だと考えてみてくれ。これまで、我々は顧客からお金を受け取った時にだけ、カップにお茶を注いできた。まだ売れていないお茶を注ぐことは一滴たりともなかった。
それが『受注生産(Build-to-Order)』だ。安全だが、遅い」

俺は彼を見た。
「今度は、一度に10杯のお茶を注ぎ、コンテナに詰めて60日かけて運ぶことを想像してくれ。向こう側に着いた時、誰もそのお茶を欲しがらなかったら、お茶は冷め、キャッシュは海の底だ。
それが『予測生産(Forecast)』のリスクだ。
資金を我々が先出しする。しかし、もし無事に渡りきることができれば、顧客は8週間待つことなく、2日で機械を手に入れられる」

俺は続けた。
「ヨーロッパに子会社を作り、在庫を持つ。我々の製品の変動費は約40%だ。例えば、2万5千ユーロのモデルA、3万5千ユーロのモデルB、5万ユーロのモデルC。これらをセールスパイプラインの予測に基づき、コンテナ1本にモデルAを5台、Bを3台、Cを2台積むとする。
総売上見込みは33万ユーロだが、製造変動費だけで約13万ユーロのキャッシュが先行して出ていくことになる」

「はい」と早川は頷いた。
「しかし、我々には5年分のデータがあります。どのモデルが、どのくらい必要か、少なくとも3ヶ月先まで精度の高い見積もりができる自信があります」

俺たちは、ヨーロッパの玄関口に子会社を設立する決断を下した。
それは、長年私たちを守ってきた「受注生産」という盾を捨て、自らリスクを取りにいく大航海の始まりだった。

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