オーシャン・ドッグスⅢ🐕 第23話:神戸ワンワン隊、集合完了!
木々の間から、細長い影が走り出てきた。
イタリアングレーハウンドの女の子、ギブリ。
胸には、フルオブビガーのロゴF.O.V。
その後ろに、色とりどりの犬たちが続く。
ダックスフント。
トイプードル。
ビーグル。
ラブラドール。
「神戸ワンワン隊、集合完了!」
ギブリが、ぴたりとアンの前で止まった。
その肩の上には、小さな黄色い影。
オカメインコのきいろが、ちょこんと乗っている。
きいろが、小さなタンクのバンドをくいっと直した。
「神戸インコ隊も、準備オッケー」

アンは、思わず笑った。
「呼ぶ前に来よったな、あんたら」
ギブリがウィンクする。
「Maiがね、“あの子たちの服を作ったなら、最後まで見届けたい”って。そしたら消防さんが、“声の壁がほしい”って言ってくれてね」
消防隊長がうなずく。
「獣を追い込むんは、犬の方がうまい。うちは、燃えるもんを全部消す。ワンコ隊は“近づかずに動かす係”や」
きいろが、タンクを軽くたたく。
「こっちは、“嫌な匂い係”。肉食の子たちが近づきたくない匂いの水を、上から撒くよ。体には害はないけど、鼻は“うわっ”てなるやつ」
あんこが、すぐに理解した。
「つまり、“行きたくないゾーン”を匂いで作るわけだね。ワンワン隊の声と合わせて、クマとオオカミの進路を、細い1本に絞る」
りうが、口元を引き締める。
「その“1本道”に、うちら3匹が立つ。そこを通る瞬間が、残り2発のチャンスや」
猟友会リーダーが、腕を回して肩をほぐした。
「さっきまで、獣と真正面から向き合ってたせいで、頭が“殺すための照準”モードになっとった。せやけど、あんたらのおかげで、狙うべきラインがはっきり見えたわ」
アンは、ギブリときいろを見た。
「ワンワン隊は、絶対炎圏内に入ったらあかん。声だけで押して。インコ隊は、上から匂いで“行きたくない壁”作って」
ギブリが笑う。
「アンちゃんたちが前で立つなら、うちらは“後ろを増やさない係”やね」
きいろが、翼を広げた。
「じゃ、空から最後の一本線、描いてくる」
作戦は、すぐ始まった。
外側リング。
パトカーと自衛隊車両が並び、その後ろで人間たちが腰を落として構える。
その外側を、神戸ワンワン隊が半円状に走り回る。
「ワン!」「ワフ!」「ワン!」
吠え声は、クマとオオカミの耳に届く。
「そっちはうるさい」
「そっちもいやだ」
そんな感じで、少しずつ進路が変わっていく。
中間リング。
山の斜面に沿って、神戸市消防局の消防車が並ぶ。
ホースからは、細かい霧状の水が噴き出し、木々と地面を濡らしていく。
その上を、きいろ率いるインコ隊が飛ぶ。
小さなタンクから、シュッ、シュッと匂いのついた水を撒いていく。
クマが、その匂いのゾーンに足を踏み入れかけると、顔をしかめて引き返した。
オオカミも、鼻をひくひくさせて、別の方向へ体を向ける。
「嫌な匂いゾーン、成功」
きいろが、小さくつぶやいた。
そして、最後の一本だけ、匂いも音も少ない細い道が前に伸びる。
そこが、内側リング。
アン、りう、リッチーの3匹が、三角形になるように立っていた。
「左はりう。右はリッチー。真ん中はうち」
アンが確認する。
りうが、火のついたクマをじっと見つめて言う。
「でかいな…。けど、四国の山も守った男や。あのときの火より、怖さは同じくらいや」
リッチーが、浅く息を吐いた。
「ボク、ちょっとだけ怖いけど…怖いって言えたから、たぶん大丈夫」
アンが、2−1−2で息を吸って吐いた。
「“こわい”って言ってええねんで。吠える前に、ちゃんと震えてええねんで」
自分にも、クマとオオカミにも向けて言う。
あんこが、ドローンの映像を見ながら叫ぶ。
「クマ、さっきの薬で背中と腰の炎が半分以下!でも、肩と首元にまた火が集まってる!オオカミは、肩の炎は落ちたけど、尾の付け根に寄生虫が集中してる!」
猟友会リーダーが、最後の2発を装填する。
「残り2発。1発ずつで、両方を“落としきる”」
アンが、前足を地面に叩きつけた。
「行くで!」
つづく
