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小咄 オールドメディア
「折るど!メディア」
「正義のペンも、レンコンの油には勝てん」
それが、我が家の生ける伝説、祖父・茂三の口癖だ。彼にとって、毎朝ポストに届く束は、社会の窓ではなく「最高級の油取り紙」に過ぎない。
世間がテレビや新聞を「オールドメディア」と揶揄し始めた頃、祖父は独自の進化を遂げていた。彼は新聞を「折るど!メディア」と呼ぶ。ニュースを読み解くためではなく、揚げたての天ぷらを迎え入れるために、いかに美しく、機能的に箱型に「折る」かに全霊を注いでいるからだ。
「いいか、この記事を見てみろ」
祖父が指さしたのは、野党の寝言を大々的に喧伝する見出しだった。
「このインクの乗り、紙の繊維の密度……。これが、レンコンの穴から溢れ出す油を一番吸うんだ。政治家の話は水に流せても、油は紙に吸わせるしかないからな」
その日の夕方。台所からは「シュパパパッ!」と、およそ80歳とは思えない高速の紙擦れ音が響く。祖父の指先が舞うたび、一面を飾る野党党首の顔が、見るも無残に箱型へと折り畳まれていく。
食卓に並んだのは、黄金色に輝く天ぷらたち。 「今日の社説は吸い込みが甘いな。昨日の夕刊の方がカリッと仕上がった」 祖父はそう言って、増税記事にたっぷり油を吸わせたレンコンを頬張った。
我が家でのオールドメディアの役割は公平中立な情報の伝達ではない。 「読売は舞茸に、朝日はナスに、日経はかき揚げに最適」という、農林水産大臣も知らないであろう、あまりに香ばしいメディア論なのである。
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