「ベートーヴェンの《春》。(4月25日)」
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今日は、私が伴奏ピアニストとしてのお仕事で、ここ最近、取り組んでいる事をあなたに
お話ししたい。
今は春の4月から5月。今の時期には季節感を捉えて、伴奏のお相手がヴァイオリニストなら、セットリストには、バロック音楽では『ヴィヴァルディの協奏曲《春》』、温暖化の影響で5月には初夏の装いなので同じヴィヴァルディの『同《夏》』もある。
古典派なら、ベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ《春》』がオーソドックスで固い。
ベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ《春》』の構成は、一つ上の世代のモーツァルトから見ると、しっかりとして大きい。

ト長調 Kv.301 第1楽章 Allegro con spirito
以下、楽譜は国際楽譜ライブラリープロジェクト(International Music Score Library Project、IMSLP)様より借用。)
モーツァルトの書いた『ヴァイオリンのソナタ』は、当時の嗜好に合わせた『ヴァイオリン伴奏付きのピアノ・ソナタ』というヴァイオリンがピアノに従属し、ピアノの旋律に沿うような扱いであった。
また、ソナタとしての一曲あたりの構成が2つないし3つの楽章で構成されていた。
対してベートーヴェンのそれは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタに比べ、ヴァイオリンもピアノもそれぞれに独立の扱いを受けて、ソナタも第1楽章の序奏付きのソナタ形式から始まり、ゆっくりと歌う第2楽章。ベートーヴェンらしい第3楽章にはメヌエットに替わり『スケルツォ』、終曲の第4楽章に華やかな速いソナタ形式が配置される。
演奏時間もモーツァルトが長くても20分程度に比べ、ベートーヴェンのは平均25分は下回らない。
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ベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調《春》 作品24』は、彼の、例えばクロイツェルの名称が付いたイ短調のヴァイオリン・ソナタなどのような、協奏曲のソロ楽器が名人芸を披露するカデンツァ(cadenza)が幕開きの第一楽章の冒頭に置かれておらず、いきなりピアノが奏でるヘ長調の八分音符の滑らかなアルペジオの伴奏に乗せられて「春の歌」を歌い出す。

第1楽章 Allegro)
伴奏する立場、ピアニストの都合で言わせてもらうと
『頭合わせ』、ヴァイオリンと息を合わせる必要がいきなりあるので、この曲は、是非ともソリストとの呼吸が安定するセットリストの、2番手以降に《阿吽の呼吸》で奏で始めたい。
このヴァイオリン・ソナタ《春》は、それほどに難易度は高くないものの、やはり難所はいくつかあって、第3楽章『スケルツォ』もそれである。
スケルツォの本体と、それに続く中間部のトリオ(trio)、ダ・カーポ(da capo)して、再び最初に戻る形式。

ページにして見開きで一面にスッポリ収まる。小柄な姿をしているが、ベートーヴェンが入れた『おふざけ』が、なかなかに効いていて、まさに《山椒は小粒で…》の世界だ。
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そのベートーヴェンの『おふざけ』とは、
ヴァイオリンのメロディーとピアノ伴奏が、
八分音符2つ分ずれて奏でられている点にある。
ヴァイオリンとピアノの間合い、ちょうどブレス
(breath)、ひと呼吸を置くような感じ。

10.11小節、14.15.16小節、25小節からFineに
ヴァイオリンとピアノとの間に
八分音符2つ分のズレが見られる。
ここは八分音符が2個で構成されるテーマなので、
三拍子の中で一拍のズレが生じ、
さらに2度音程の絶望的な不協和音となっている。)
私も、最初にスコアリーディング(Score reading、譜読み)した時、その第一印象は、悪筆で知られるベートーヴェンの譜面を出版社が解読(?)ミスして、間違いを放置しているのではと思ったほどである。
そして、演奏に際しても、この曲をご存知の方は、ご理解いただけることと思うが、耳に当たる感じは、やはり演奏ミスをしたのではないかという印象が残る。
ヴァイオリンとピアノの間で、八分音符にして2つ分ずれて、同じメロディーラインの音符が配置されているために、カクカクした感じに聴こえる。
それは不自然な印象ではあるが、ズレは一度で終わらず、何度か繰り返されるので、これが演奏者のミスではなく、作曲家ベートーヴェンの意思だと分かるのである。
ただし、ズレのおかげで、ヴァイオリンとピアノで、和声学で良くない響きとされる《2度の不協和音》が鳴ってしまう。
しかし、ヴァイオリニストを背中越しに臨む伴奏ピアニストにとっては、この『ズレているのが正しい音楽』を、どうヴァイオリンと息を合わせるか。
何か捉えどころが無い、にょろにょろとした禅問答に迷い込んだ気持ちになりつつも、見えない間合いを取りに行くのである。
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それにしても、この一見ズレているような感じを受ける手法は、まさにベートーヴェンの個性で、例えば、古典派の赤いビロードの上着をまとったモーツァルトの端正な音楽には存在しない。
やはりベートーヴェンの英雄的な試みをここに見てとれるのである。

作品55《エロイカ》第1楽章 主題再現部の手前。
394、395小節にホルンの謎の『飛び出し』がある。
score(総譜)の上から4段目がホルン。
第一ヴァイオリンがB♭音、第二ヴァイオリンA♭で2度の不協和音→(主和音)の途中、まだ不協和音が続いているところに、ホルンで主和音を鳴らしに行く。
明らかに『出番を間違えた感』に溢れている💦
初演で聴衆も演奏家も驚いたに違いない。)
英雄といえば、ベートーヴェンは、交響曲第3番《英雄(エロイカ)》でも、第一楽章の後半部、ソナタ形式の主題が再び奏でられる直前に、突如として、ホルンの第2奏者のソロで『英雄の主題』が、《飛び出し事故》を思わせるタイミングで顔を出す。
そういえば、交響曲《運命》でも、オーボエに同じようにカデンツァ(cadenza)らしきことをさせている。
何を考えているかは、そのうちベートーヴェンに詳しく聞く事にして、この場は話を《春》へと戻そう。
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ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ《春》は、全部で4つの楽章からできている。
その締めである第4楽章は、春を迎えた喜びが歌われる。

二分の二拍子で先行したピアノが、ソナタ形式の主題をひとしきり奏でた後に、同じメロディーをヴァイオリンが引き継いで入って来る。
その明るく胸を拡げる旋律は、《春への憧れ。》を喜びを持って表したかのよう。待ちに待ったものである。
時代は異なるが、『天使のパン(Panis angelicus)』などの歌曲で知られる🇫🇷フランスのセザール・フランクのヴァイオリン・ソナタの第4楽章にも、迎えた春への喜びの歌を聴いてとれる。
フランクのヴァイオリン・ソナタも麗しく大好きと言われる音楽ファンは多い。
タイトルこそないが、フランクの曲も春に演じるに相応しいのではないか。

第4楽章 Rondo(Allegretto poco mosso))
日本に比べ、雲が厚くどんよりした天気が続くユーロ圏の冬。
ついこの前の復活祭を終えて、5月になると、ようやく春の到来を感じるのだ。
春を迎えての演奏会、私のプランを最後に載せて終わりとする。
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『春への憧れ』5月向けのセットリスト。
ヴィヴァルディ、
ヴァイオリン協奏曲《春》、《夏》。
ベートーヴェン、
ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 作品24《春》。
アレッサンドロ・スカルラッティ
歌曲『ヴィオレッティ』。
モーツァルト
歌曲『春への憧れ Kv.596』、
歌曲『すみれ Kv.476』。
セザール・フランク
歌曲『天使のパン(Panis angelicus)』。
セザール・フランク
ヴァイオリン・ソナタ イ長調 FWV 8。
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今日も、良い一日になりますように。
(🎹MIYABI)
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