見出し画像

「武士と桜と椿のお花。(3月8日)」

*
三寒四温の時期らしく、寒さと温もりを感じる日々が、細かな周期で巡り来ている。寒桜に始まり、紅白の梅花。
その白く寒枯れする景色に一筆の紅を差す、鮮やかな椿のお花。

*
わが家には、おばあちゃまがお嫁入りの時に、ご実家から嫁入り道具と共にお引越しをした椿がある。

寒桜や梅のお花に比べて、椿の花弁は"ぼってり"と厚く、また先のお花たちがハラハラと、その花びらを一枚ずつ散らすのに対し、椿は枝の上で熟れ、時期が来ると、その姿のまま、散り果てるのではなく、ぼとりと「花の姿のまま」を落とす。

*
その椿を前に、かつて武士たち(*注釈)は、いさぎよく散華する桜に対し、樹木の上で往生際に未練を残す。そして熟れて落ちる椿を、その熟し黒みがかった赤に『落首』を重ね合わせて、不吉をみたという。

けれど、椿の種から抽出された油「椿油」は、天然由来のお化粧品として愛され、武家の台頭した鎌倉時代以前、古くは平安時代から食用や化粧用として珍重されてきた歴史を持ち、現代でも皮脂に近い成分(オレイン酸)を豊富に含む天然オイルとして、ヘアケアやスキンケアに幅広く愛用されている。

枝の上で進む春を過ごして長居をし、最後までシッカリと姿を留めて花の生涯を終えるのは、「長寿」を寿(ことほ)いでいる。どこが良くないのかと思う。

*
「椿」を表す漢字には「春」が含まれる。これを称して"春を表すお花"と言えるのではないのか。
椿は紛れもなく、日本の春になくてはならないのである。

寒さと暖かさが交互に来る時期、その自然のサイクルに春の訪れを知り、木々は自身の時計を進めていると聞く。
移り替わり、咲き継いで行くこの時期のお花に、私たちも季節が早春から春へと熟することを知るのである。

*
ふと、手を止めて、頭上で咲き進む花に季節を感じてほしい。
それこそは、お休みの日の日曜日にこそできる"素朴で贅沢なひと時"なのではあるまいか。

今日も、良い一日になりますように。
(🎹MIYABI)


(*注釈)

武士を表した物語に、こういったものがある。
武士の友人宅の松を見やり、その見事さを褒めつつも、『持っては帰ることは叶わぬ。』と言った友人に、後日、友人の言葉を真に受け、その松の木を根こそぎ切り倒し、薪のようにバラバラにして友人のもとへ送り届けた。という粗野で乱暴、あるいは武骨な誠実さを説いたものがある。気持ちは分からなくもないが、やはり粗野で野蛮と言わざるを得ない。
そのような粗忽な武士(もののふ)に、とやかく言われる筋合いはない。
(🌺🐈MIYABI)


This is the bottom.
--

いいなと思ったら応援しよう!

みやび ご支援くださり、ありがとうございます。くださったチップは、楽譜やご本の購入代金に使わせていただきます。