ひとり多い
大学時代の友人5人で、久しぶりに旅行へ行った
男3人、女2人
昔から変わらない、いつもの顔ぶれだ
海沿いの小さな町で、
特に何をするでもなく
ただのんびり過ごした
気ままな時間は瞬く間に過ぎていく
そんな帰り際、
記念に写真を撮ることになった
通りすがりの人に声をかけて、
シャッターを頼む
「すみません、お願いします」
5人並んで、軽く肩を寄せる
「はーい、撮りますよー」
カシャ。
それだけの、なんてことない一枚だった
そう、ただそれだけのはずだった...
その夜、宿で写真を確認した
「いい感じじゃん」
誰かが言う
スマホを覗き込む
……あれ?
違和感
人数が合わない
「なあ..これ..」
画面を指差す
「一人多くない?」
全員で見直す
沈黙が落ちた....
写っているのは——
6人。
確かに、6人
真ん中でも、端でもない
自然に並んでいる
でも、"それ"は誰も知らない顔だった
「……誰?」
誰も答えられない
「いや....てかこれ誰が撮ったの.....?」
「通りすがりの人に頼んだよな?」
「そうだっけ?」
「いや、待って……俺が撮った気がする」
「は?いや俺だろ」
「いやいや、俺が頼まれて——」
言葉が重なる
全員が同じことを言い始めた
「自分が撮った」
空気が変わる
おかしい
撮影していたなら、
この写真の中にはいないはず
なのに...
全員が写っている
6人、全員が
「……もう一回見せて」
声がかすかに震えている
スマホを受け取り、
もう一度、写真を見る
6人いる
いや——
違う
7人いる。
増えている......?!
さっきまで、6人だったはずだ
隣から声がした
「どうした?」
顔を上げる
友人たちが、こちらを見ている
一人。
二人。
三人。
四人。
……五人。
数える。
合っている。
5人だ。
なのに、写真には——
7人。
そのうちの一人が、
ゆっくりとこちらを見ていた
知らない顔のはずなのに
なぜか、わかった....
あれは——
私だ。
.............
翌朝
写真は削除した
誰も、その話をしなかった
いや、しないことにした...
ただ一人を除いて
「なあ」
帰りの車の中で、誰かが言った
「昨日の写真、さ」
「やっぱり変だったよな」
誰も答えない
しばらくして、別の誰かが口を開いた
「……いや、普通だっただろ」
その言葉に、全員がうなずく
「だよな」
「5人だったし」
「最初から」
笑い声が上がる
会話が戻る
何もなかったみたいに
私は窓の外を見ながら、スマホを開く
削除したはずの写真が、残っていた
写っているのは——
8人。
ねえ、今度はみんなでどこに行こうか?
ひとり多い
- だれ? -
2026/3/17 【怪談】®︎ |世にも
2026/3/19 更新
