「SAIKOULUSH」で最悪な展開 2度目の延期でボクシング人気に水を差す
キルギス大会「航空券未払い」情報で選手渡航に支障か
井上尚弥と中谷潤人の世紀の対決で盛り上がった日本のボクシング界。
そんなボクシング界の熱気に水を差すような、トラブルが燻り始めている。
中央アジア・キルギスで5月23日、24日に開催予定とされていたボクシングイベントをめぐり、関係者の間で「渡航費が支払われていない」「航空券が手配されていない」といった情報が飛び交っているのだ。
この大会には、日本から亀田京之介選手をはじめ、複数の日本人選手が参加する予定だった。さらに海外からも、アメリカ、中南米、アジアを拠点にする選手や関係者がキルギス入りする段取りだったという。
だが、開催を目前にした5月中旬、複数の海外ボクシング関係者から「まだ航空券を受け取っていない」との声が漏れ始めた。
ある関係者はこう語る。
「土曜にはキルギスへ向かう予定だった。しかし、周囲の誰も航空券を受け取っていない。このままでは渡航できない可能性がある」
大会は、すでに一度延期されている。
もともとは4月17日から19日にかけて、キルギスで開催される予定だった。現地では記者会見も行われ、日本の期待の若手選手である佐野遥渉選手の出場も予定されていた。
さらに注目を集めていたのが、井上尚弥選手からダウンを奪ったことで知られる“悪童”ルイス・ネリ選手、そして井上選手をたびたび挑発してきたフィリピンのジョンリエル・カシメロ選手の参戦である。ボクシングファンにとっては、十分に話題性のあるカードだった。

ところが、この4月大会は「国際情勢」を理由に延期された。

主催者側は当時、次のような趣旨の発表をしている。
「2026年4月17日から3日間で開催を予定していた『SAIKOU LUSH Vol.5、6、7』について、昨今の国際情勢の急激な変化およびそれに伴う諸影響を総合的に勘案した結果、開催を延期することを決定した」
さらに、延期後の日程や対戦カードについては、国際情勢の推移を慎重に見極め、関係各所との調整が整い次第、公式サイトやプレスリリースで発表するとしていた。
一見すれば、もっともらしい説明である。

しかし、外務省の渡航情報を見る限り、キルギス全土が極度に危険な地域とされているわけではない。危険度は一部地域を除きレベル1程度であり、イラクのように退避勧告が出されるレベル4の地域とは状況が異なる。
そのため、ボクシング関係者の間では、4月の延期時点から「本当の理由は国際情勢ではなく、資金面ではないか」との見方がささやかれていた。
実際、選手や関係者の間では、約束された報酬や渡航費をめぐる不満が出ていたという。
この興行をめぐって、もう一つ不可解なのが運営体制である。
表向き、この大会には元世界王者の亀田興毅氏が関わっている。イベントの発信にも、亀田氏の名前は大きく使われてきた。
しかし、キルギスで興行ライセンスを持ち、現地で大会を動かしているとされるのは、亀田氏本人ではない。
その人物は、静岡を拠点に活動する2人組アーティスト「もにゅそで」のメンバーで、「もにゅこ」こと原田萌子氏だという。
原田氏のSNSを見る限り、ボクシング興行に関する発信はほとんど見当たらない。目につくのは、ダンス活動やキルギスタン旅行に関する投稿である。中には、プライベートジェットで移動しているかのように見える投稿もあり、かなり華やかな海外滞在を楽しんでいる様子がうかがえる。
もちろん、見た目やSNS投稿だけで人物の実態を判断することはできない。だが、国際ボクシング興行を動かすプロモーターとしては、異色の存在であることは間違いない。
果たして原田氏は、本当にキルギスで大規模なボクシング興行を安定的に開催できる人物なのか。
疑問は残る。
4月大会の延期になってすぐにイベントは5月23日、24日に再設定された。
イラクで起きている戦争はまだ収束していなかったのに、だ。
国際情勢が延期の理由なら、この再設定はないと思っていので意外だった。
その後しばらくすると、筆者のもとに興行主の「SAIKOU LUSH」が資金繰りに苦しんでいたとの情報が入ってくる。
筆者は確認のために海外のあるプロモーターに電話で取材した。
すると匿名を条件にこう話をした。
「私の周りでは、誰も航空券を受け取っていない。土曜にはキルギスに行く予定だったが、無理かもしれない。4月の延期の時もそうだったが、彼らの説明は信用できない」
さらに別の関係者は、X上で「大会は中止になった」と断言している。
一方で、5月16日正午の時点で、主催者側から正式な中止発表は確認されていない。海外のあるジム関係者は「中止についての正式な連絡すら受けていない」と話している。
仮にこれが事実であれば、極めて深刻な問題である。
ボクサーは試合に向けて、何週間も前から過酷なトレーニングと減量に入る。海外興行であれば、移動、時差、現地調整も含め、選手にかかる負担はさらに大きい。しかもこれが中止となれば・・・。
今回の興行に関わっているのは、「SAIKOU LUSH」のファウンダーとされる亀田興毅氏、亀田氏のマネージャーのS氏、そして興行主とされる原田萌子氏である。
亀田氏は、かつて日本ボクシング界の中心で大きな注目を浴びてきた人物だ。その名前が前面に出ている以上、選手や関係者、ファンに対して、どのような説明をするのかが問われることになる。
さらに取材を進めると、原田氏の背後には「ボス」と呼ばれる謎の存在がいるとの証言も浮上している。
この人物はいったい何者なのか。
選手たちに約束された報酬や渡航費は、実際に支払われるのか。
2度連続で興行が直前に中止となれば、単なる興行トラブルでは済まない。選手生命、ジムとの信用にも関わる問題である。タイトルマッチを認定するWBA(世界ボクシング協会)は、当然日本側に照会をかけて問題視するだろう。繰り返し強調するが、日本の有望選手を含む多くのボクサーたちの未来。日本のボクシング界の信頼問題などにも発展する大問題なのである。
そんな中、亀田氏は6月6日にも愛知県で興行を予定している。
キルギスを舞台に行われた国際ボクシングイベントの裏側で、いま何が起きているのか。
筆者の取材は続く。
