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【吹奏楽曲解説】ストレンジ・ユーモア(J.マッキー)

前回に引き続き今回もジョン・マッキー作品の楽曲解説で、本日は『ストレンジ・ユーモア』を紹介をします。

マッキー作品を私のnoteで取り上げるのは『ワインダーク・シー』『アンダートウ』『付喪神』『レッドライン・タンゴ』『サスパリラ』『タービン』に続いて7作品目です。

マッキー作品の楽曲解説がだいぶ増えてきたので、以下にリンクをまとめています。

■参考音源

福本信太郎指揮/昭和ウインド・シンフォニーによる演奏(2016年5月28日 昭和音楽大学吹奏楽団 昭和ウインド・シンフォニー 第17回定期演奏会より)

■作品について

作品解説・作品の基本情報

アメリカ吹奏楽指導者協会からの委嘱によって吹奏楽用に編曲されました。世界初演は2006年3月1日にテキサス州リチャードソンで行われた同協会の会合で、R.フロイド氏指揮によるべイラー大学ウインドアンサンブルによって行われました。
「ストレンジ・ユーモア」は「レッドライン・タンゴ」に続いて、弦楽4重奏とジャンベ(西アフリカの太鼓)のために作曲されました。この吹奏楽版はその原曲を書き直したものです。原曲は作曲者がジュリアード音楽院の大学院に在籍中に作曲し、後にR.バトル氏が振り付けを担当したパーソンズ・ダンスカンパニーの公演用にも改作されています。

作品は、中東地域独特の音階による旋律とシンコペーションを用いたリズム、アフリカの太鼓の打撃音を生かした伴奏が登場し、2つの音楽文化が見事に融合されています。
原曲から残されているジャンベの打撃音がこの作品の根幹をなしています。ジャンベは砂時計のような形をした太鼓で素手で演奏されます。ジャンベによるアンサンブルは、マリやギニアといった西アフリカの国々で、多くの式典音楽の伴奏を受けもっています。

ブレーン・オンライン・ショップ
『ストレンジ・ユーモア』の作品紹介より引用 

原題:Strange Humors
邦題:ストレンジ・ユーモア
作曲:ジョン・マッキー(John Mackey)
時間:約5分
難易度:中級(Difficulty - Medium)
出版:Osti Music
作曲年:2006年
委嘱:アメリカ吹奏楽指導者協会(The American Bandmasters Association)による委嘱
初演:リチャード・フロイド指揮/べイラー大学ウインドアンサンブル(Baylor University Wind Ensemble,Richard Floyd)により2006 年3月1日初演

楽器編成

楽器編成は以下のキャプチャの通りです。

マッキー作品としては控えめな編成で打楽器は5名、バンド全体で35名程度居れば演奏可能です。
E♭クラリネット、ソプラノ・サクソフォンは作曲者自身が強く推奨しているものの代用可能です。その代わり、コントラファゴット、コントラバスクラリネットはいずれもオプション扱いではありません。

使用している打楽器の中でも目を惹くのはジャンベ(Djembe)ですね。この楽曲で中心的な役割を担っており、スコア冒頭でも「(ソリストの位置だと"やり過ぎ"であるものの、)ジャンベ奏者は視覚的に目立つ位置に配置することも可」という注意書きもあります。

『ストレンジ・ユーモア』の複数のバージョン

以前『レッドライン・タンゴ』の楽曲解説noteで「レッドライン・タンゴは吹奏楽編成向けに作曲された作品では無かった」と説明しましたが、今回紹介する『ストレンジ・ユーモア』も同じく吹奏楽編成向けに作曲された作品ではありません。

『ストレンジ・ユーモア』は、マッキーがまだ大学院時代の1998年に書いた弦楽四重奏とジャンベのための作品がオリジナルで、その後2006年に吹奏楽向けに編曲されました。

オリジナルの弦楽四重奏+ジャンベ版、今回紹介する吹奏楽版の他にもマッキー自身の手によって
・サックス四重奏+ジャンベ版(2008年)
・クラリネット四重奏+ジャンベ版(2012年)
・フレキシブルアンサンブル版(2020年)
・サックスアンサンブル版(2022年)
と複数のバージョンで編曲されています。マッキー氏の作品の中で最も色んなバージョンがある作品かもしれないですね。

noteの前半でも触れている「オリジナルの弦楽四重奏+ジャンベ版にR.バトル氏が振り付けを加えた舞踏作品」については作曲者自身がYouTubeで動画をアップしているので、オリジナルバージョンの雰囲気はこちらで掴むことが出来ます。

楽曲構成

序奏部は1分半ほどありますが、そのほぼ全てをイングリッシュ・ホルンが旋律を奏でます。(2フレーズ目からはアルト・サックスが補助的に入ります)

このエキゾチックで緊張感のある旋律が作品の怪しい雰囲気を醸し出します。

1分半ほどの序奏が終わるとテンポが急に速くなりジャンベがリズムを支配するアレグロ部に入ります。冒頭のイングリッシュ・ホルンによる旋律が様々な楽器で展開されていきます。

時折5/8拍子も混ぜながら終始アフリカンな雰囲気で楽曲は進みそのままのテンションで楽曲は閉じられます。

構成としては以上しか書くことが無いくらいにはシンプルな楽曲です。
冒頭で提示した旋律1本で楽曲全体を乗り切ってしまう点は2000年代前半に大流行したスティーヴン・メリロ作曲『アメリカの騎士より 選ばれし者』を彷彿とさせるような潔さです…!

5分ほどの小品なので演奏会の中でも1曲目や休憩を挟んだ後の後半1曲目などに演奏する軽めの作品としてちょうど良さそうです。アンコールなどで演奏しても面白そうですね。

■収録CD

作曲者自身によって様々なバージョンで編曲されているだけあり、YouTubeやAppleMusicをはじめとして参考音源は豊富です。
吹奏楽版の代表的な録音を数種紹介しますが、オリジナルの弦楽四重奏+ジャンベ版含め色んな演奏を聞いてみてください。

福本信太郎指揮/昭和ウインド・シンフォニー
『Composer's Collection: John Mackey』

冒頭の参考音源としても紹介した福本信太郎指揮、昭和ウインド・シンフォニーによる演奏です。

音源によっては冒頭のイングリッシュ・ホルンの旋律を他の楽器で代用している演奏もありますが、こちらのCDは楽譜通りイングリッシュ・ホルンでの演奏。全体的にやや大人しめ感はありますが落ち着いて聴いていられます。

なお、演奏自体は上記のCDも以下の『マイケル・ドアティ:リオ・グランデ』のCDも同一です。
カップリング曲の好みで選ぶと良いかと。(後藤洋『シャドー・ソング』は響宴の録音よりこちらの方が良いです)

ウィリアム・バーツ指揮/ラトガーズ・ウインド・アンサンブル
『STRANGE HUMORS』

アメリカの州立大学であるラトガーズ大学の吹奏楽団、ラトガーズ・ウインド・アンサンブル(Rutgers Wind Ensemble)とウィリアム・バーツ指揮の指揮による演奏。

時折トロンボーンやトランペットなどを目立たせるように演奏していますが、いやらしさ・やり過ぎ感を感じない絶妙なバランスで面白い演奏です。

■最後に

今回はジョン・マッキー初期の吹奏楽作品『ストレンジ・ユーモア』を紹介しました。

イングリッシュ・ホルンとジャンベが大活躍の吹奏楽版もオリジナルよりも迫力が増していて面白いのですが、元が弦楽四重奏+ジャンベを想定して書かれた作品なこともあり個人的にはこの作品は小編成での演奏がより映える作品だと思っています。

特にマッキーが吹奏楽版の次に編曲したサックス四重奏+ジャンベ版、クラリネット四重奏+ジャンベ版はオリジナルの雰囲気とほぼ変わらずに演奏出来るかと思います。

フレキシブルアンサンブル版もあるためノーカットで5分ちょうど、ジャンベ+任意の4パートがあれば演奏可能というアンサンブルコンテストにぴったりな作品だと思うのですが…。挑戦者求む!!笑

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