見出し画像

【読書感想文】血族の王 松下幸之助とナショナルの世紀/岩瀬達哉

現在のパナソニックである松下電器を一代で築き上げた、経営の神様・松下幸之助の伝記ノンフィクション。
お恥ずかしい事だが、この本を読むまで松下電器を戦後に勃興した企業だと思っていた。終戦当時の松下電器はすでに財閥解体の対象になるほどの一大コンツェルンで、終戦時の松下幸之助はすでに50歳であった。
戦後さらにその名声を高めて、世界的経営者として名を馳せることになる訳だが、あくまで本書を読んだ上での印象だが、松下幸之助の根本の精神性は、どこまでいっても幼少時代の丁稚奉公で培った「大阪の商人」そのもの
だったんだとと思う。
モノづくりというより、全国各地に張り巡らされた販売店システムに代表される、いかにしてモノを売るかというのがその経営哲学の根本だろう。
たしかに、小さい頃どんな片田舎に行ってもナショナルの販売店があった。
儲かるかどうかというのが絶対的な判断軸であり、コンピュータの価値を理解できずに早々にその事業から撤退したというエピソードにもある通り、未来を見通すような広い視野がある経営者ではなかった気がする。(もちろん長期的な視野で見て儲かりそう、という意味での長期的視野はずば抜けていたんだろうけど。)
人材の抜擢という点でもそれは現れていて、純粋な能力よりいかに自分に従順かを重視して、自分に相談なく独断で経営に関する采配をした部下には、たとえその結果、成果を上げようとも冷遇したという。
1961年に社長の座こそ退いているが、娘婿を社長にして自身は会長として院政を敷ながら、経営の実権を握り続けた。その際も、若くから自身に仕えてきた70代になろうかという側近たちをいつまでも重役として重用し続け、さらに晩年に相談役に退いてからは、孫を次期社長にすることに執着し続けたという。
多分、会社は株主の物なんていう発想は1ミリも無かったと思う、なんなら松下家のものと考えていたかもしれない。
ただ松下幸之助って意外と保守的で器が小さかったんだよねと言うのは簡単だが、9歳で丁稚奉公に行く極貧の無一文から、1代で現代まで生き残る世界的大企業を築き上げたというのはやっぱり凄まじい。よく考えても、良く考えなくても凄まじい。
87歳で相談役にあった折、娘婿に代わった新社長が幸之助子飼いの役員を次々に放逐する若返りを実行していた際に、新年の経営方針発表会のパーティーのスピーチの檀上でその方針を2時間近くにわたって批判し続けたという。とてつもない生への執着とエネルギーとしか言いようが無い。

結局のところ感想は、松下幸之助ってすごい人だなあである。










いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集