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全方位うつくしいパフェ

   川越にある、だいすきな喫茶店がある。わざわざ東京から高速を使って行きたくなってしまうくらい、魔性の魅力を秘めている。古民家みたいなこじんまりとしたお店。店内に流れるジブリのオルゴール。人気で駐車場が埋まっている日も多いので、一種の賭けである。

   いつもはメニューの表面にずらりと並んでいるケーキセットに目が行く。けれどその日、初めてずっしりとしたメニューを手に取った。パラパラとめくる。なんと……パフェがあるではないか……!しかもセットにできる。珈琲もおかわりできる。その日初めて、パフェを頼んだ。

   パフェ、パフェ……。

   私は、パフェのいちばん下に入っているコンフレークがあまり好きではない。あれはきっと、かさ増しのために入っているのだと思っている。夢のような食べ物なのに、たっぷりの生クリームとアイスクリームを食べていたはずなのに、急に乾いた現実に引き戻されるような気がするのだ。

   なので、パフェを頼むのも一種の賭けなのである。そうして、ドキドキとしながら運ばれてきたパフェは、とてもうつくしかった。

ででんっ!

   うわあ……うつくしい。キラキラと輝いて見える。上から見ても、横から見ても、どこから見ても整っている。グラスの中には、きれいな層が静かに重なっていた。いちごの赤と、バナナのやわらかい黄色。アイスクリームの白。どこを見ても、ちゃんと美しい。

   じーっと眺めてみても、それらしきものは見つからなかった。けれど、油断は禁物だ。あやつは手強い。そして、恐る恐るスプーンを入れて気づく。コンフレークが、ない。大切なことだから、もう一度書こう。コンフレークが、ないのだ……!この時点で、私は勝った。心の中で歓喜した。

   一口食べたら、もうニヤニヤが止まらない。グラスの底まで、ぜんぶぜんぶアイスクリームだった。スプーンを押し返してくるような、密度の高いアイスクリーム。舌の上に乗せると、体温でじわじわと溶け出し、練乳のようなこっくりとした甘みが喉の奥までゆっくりと流れていく。掘っても掘ってもアイスクリーム。しかもものすごく濃厚で、スプーンですくうと、ひんやりと重たい。

   途中でいちごの甘酸っぱさが顔を出す。完熟したいちごの、キュッとした鮮烈な酸味。それがアイスのミルク感と混ざり合うと、口の中で即席の高級な「いちごミルク」が出来上がる。いちごミルクもだいすきなのだ。……はあーっ。しみじみと美味しい。

   感傷に浸っていると、やわらかいバナナも現れる。バナナは、じんわりとねっとりと甘い。そのねっとりとした食感が、冷えた舌を優しく包み込んでくれる。そこに、アイスコーヒーを流し込む。このコーヒーが、またすこし、不思議なのだ。濃厚なパフェに比べると、どこかあっさりしている。すこし薄め……と言ったら怒られるだろうか。でも、それがちょうどいい。強烈な甘さの余韻を、澄んだ苦みがさらりと撫でて、リセットしてくれる。口の中をすっと洗い流してくれて、また次の一口を食べたくなる。

   そうしてまた、すぐにアイスクリーム。
   まだアイスクリーム。
   どこまで掘ってもアイスクリーム。

   見えるところだけじゃなくて、見えないところまで、ちゃんと美しい。全方位、どこから見てもうつくしいパフェだった。そして、どこから食べても、ちゃんとおいしかった。

   今度はランチを食べに行きたい。

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