横浜ZINEフェスのために60枚ポスターを作って気づいたこと
横浜ZINEフェスのために、ここ最近、ずっとポスターを作っている。好評だったポスターもあれば、作ってみて、これは違うなと思うものも、たくさんあった。

ネイビー(濃紺)
読みやすさ:★★★★★
一番好評だったポスター。背景が暗い分、白い文字がすーっと浮かび上がる。目に入ってくる情報が整理されていて、文字の輪郭がはっきりしているから、長い文章でも呼吸を乱されずに読める感じがする。
色としても、誠実で静か。読書という、内側に向かう行為と相性がいい。落ち着いているイメージ。

ピンク(くすみカラー)
読みやすさ:★★★☆☆
個人的には、この組み合わせも好きなのだけれども、やっぱり白文字が際立ちにくい。薄めの色だから、全体的にふわっとしていて、遠目から見た時に、最初の一瞬のインパクトが弱い。
優しさとか、儚い雰囲気は出る。ただ、その分、デザイン全体が少しぼんやりしてしまう感じもある気がする。エッセイっぽい雰囲気。

黄色
読みやすさ:★☆☆☆☆
黄色と茶色の組み合わせも好きなのだけれども、背景が明るすぎるのか、文字が滑る。特に細い文字だからこそ、目を凝らさないと追えない。
色自体は、希望とか幸福とかを表しているようで、軽やかで好きだけれども、無名のおじさんという少し影のあるテーマとは、温度が合っていない気がした。

シアン(明るい青・水色)
読みやすさ:★★☆☆☆
ネイビーと比べると、どうしても境界が曖昧で、文字が背景に馴染みすぎて、輪郭がぼやける。それに、下の黄色い帯とぶつかって、色同士が少し喧嘩している感じがある。清潔感や今っぽさはあるけれど、軽い印象が出てしまって、言葉の重みとズレる。
色の明るさ=言葉の重みなのか……?とか、ぐるぐると考え始める。

赤(えんじ・ボルドー)
読みやすさ:★★★☆☆
うーん……。視線は強く引きつけられる。ただ、その分ずっと見ていると少し目が疲れる。白文字とのコントラストが強くて、じっくり読むというより、訴えかけられる印象が強い。ものすごく主張が強い。
情熱とか、泥臭さとか、ドラマ性はすごくある。おじさんたちの自伝記の熱量には合っている気がするけれど、腰を据えて読む文章には、すこし色が前に出すぎるかもしれない。
こうして並べてみると分かりやすいのだけれども、やっぱりネイビーが一番読みやすいのだ。どうして、ネイビーが最強なのかを考えてみる。配色辞典とか、色々な本はあるけれど、結局一番腑に落ちたのは、実際に使ってみてどう見えるかだった。自分でやってみるの本当に大切。
ネイビーは、白をいちばん白く見せる。青系の色は後ろに下がって見えるから、文字が自然と前に出てくる。だとしたら、深い緑色やチャコールグレーもいけるのでは……?と、試す。ひたすら、やってみる。

……?うーん……?色は良い。良いのに、何かが違う気がする。そもそも色の問題なのか?と、良く見てみると、文字の問題な気がしてきた。
緑の方をよく見ると。
頭(上端)は揃っているけれど、一行の長さがバラバラ。右側: 1行目〜4行目くらいまでは、短かったり長かったりする。
左側: 最後の方の行(「なんのはなしですか」以降)が、ぐーっと下に長く伸びている。
だから、全体の形が、カチッとした四角形にならず、下側がデコボコしていて、不規則なリズムのようにも見える。揺らぎがあって、パッと目に留まるのかと言われたら、微妙。エッセイのような情緒的な印象感が強め。
やっぱり一枚目が最強。あの文章のまま、色を変えてみたら良いのかもしれない。そして、次もお気に入りのポスターが出来上がった。


かわいい。かわいい……。とてもかわいい。
くすんだピンクの背景に、鮮やかなエメラルドグリーンと、深い珈琲色。落ち着いているのに、ちゃんと目に留まる。色のコントラストがはっきりしているから、地味すぎず、派手すぎない。ちょうどいいところにいる気がする。単純に、この色の組み合わせが好きなだけなのだけれども、ね。
ピンク色の持つあたたかさと、緑色のすこしひんやりした感じ。珈琲という温度のある飲み物と、物語という、爽やかな知的好奇心。その二つが、同じ画面の中で、無理なく並んでいるような雰囲気を出したくて。
左上には、力のある筆文字を。その横に、整った欧文のロゴを。和と洋が、きれいに混ざり合うというより、すこしズレたまま共存している感じが、とても好き。
下半分の写真は、とても動きがある。コーヒーが飛び散る瞬間、注がれる瞬間。エネルギーがある。でも、文字の周りは静か。余白があって、縦書きの文章がすーっと立ち上がる。
動きと静けさが、ちゃんと分かれているから、目が疲れない。視線も、自然に流れる。左上から、真ん中を通って、右下へ。情報が増えても、ごちゃっとしない。
かわいい、好き、楽しい。それだけで終わらせずに、ちゃんと読ませる形になった、私の中での最高の一枚。
ZINEの商品ラインナップも、全部ポスターにして(近日公開)背景色や、差し色も決めて貰った。この時点で60枚近くポスターを作っている。


この2枚もお気に入りなのに、誰も使ってくれない……。すこし、いじける。すると、私の中で遊びたい欲がむくむく湧いてくる。ということで、すのう編集長、召喚。意味とか、役割とか、いったん忘れて、ただひたすらにかわいいだけの画像を作る。

下に陰を入れると立体感が出る。


はぁーっ……かわいい。愛おしい。癒されたところで、作ったポスターをもう一度見直してみる。


儚い色もやっぱり好き。
うん。完璧に整いすぎているよりも、すこしのズレや、余白がある方が、読み手は自分の感情を投影しやすくなるんじゃないかな。
それって小説と似ているなあと思うなど。
完璧に整いすぎているものには、入り込む隙がないのだ、きっと。ほんの少しのズレや、余白があるからこそ、人はそこに自分の感情を置くことができる。すべてを説明しないから、読まれる。前に出すぎない言葉や色が、あとから静かに残る。
ネイビーが強かった理由も、かわいいだけの画像に癒された理由も、考え尽くした先で行き着いたのは、これが、今の私にはちょうどいいという感覚だった。正解じゃなくていい。ただ、誰かが立ち止まれる余白があればいい。
横浜ZINEフェスで並ぶポスターたちが、そんな風に、誰かの中にそっと入り込めたらいいなと思っている。
わたしは、ずっとずーっと作品を作り続ける人を。文章を書き続ける人を応援できる人でありたいです。ということで、出来ることは最大限やりたいから。動画作りました。一言で言うなら、この方々に恩返しがしたいんですよねぇ。#なんのはなしですか#ZINEフェス横浜 pic.twitter.com/YQCmhzWEPD
— 紫吹はる|新アカウントです。 (@shibuki_86) January 22, 2026
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップは、作りたいと思っているZINE制作費に充てさせていただきます🐕