Photo by
エドゥアール・マネ / メトロポリタン美術館
味わう季節
この季節の日差しのせいなのか
あの夕方の帰り道に
響くメロディが
いつまでも眩しくて
帰宅を促す
遠くの優しい声
「このまま
聴かなかったことに
しておこうか」
遠くのどこかを
見つめて君は言う
群青に蝕まれる橙は
今まで誰にも触れられていなかった
心の窪みを撫でられたようで
ゾクゾクとドキドキ
だけど途方もなく寂しくて
つなぎ合った私の手は
優しい声のする方へ導いた
私たちを迎える
優しい声
優しい手
優しい笑顔
いつもなら「また明日」
だけど
もう決して来ないことを
なぜか知っていた
あの夕方のメロディが
この季節に響き渡れば
君の横顔と共に
二人で食べたイチイの実の味が蘇る
唇が覚えてる
