お金を使いたくて泣いた話
メンズ地下アイドル(メン地下)の現場には、「特典会」と呼ばれるイベントがあります。ライブの後に、推しメンとチェキを撮影しながら直接話ができるシステムです。
チェキは1枚約1,000〜1,500円。1回に撮影できる上限は10枚までと決まっていて、時間にしてだいたい3分弱。もっと話したい人は、撮影が終わったあとに再び受付(キャッシャー)に並び直す「ループ」をして、また10枚を追加します。その繰り返しができるのは、受付が終了するまでの限られた時間だけです。
通い始めの頃は、「3分も話せれば十分」と思っていました。でも、いつの間にかその数分間の価値が、自分の中で何よりも大きくなっていたんです。
私は推しを見るために名古屋まで遠征していました。
けれど、どうしても外せない予定があり、参加できるのは「1部」のみ。2部の公演を見ずに帰らなければいけないスケジュールでした。
遠征までして名古屋に来たのだから、限られた1部の時間の中で、できる限り推しと一緒に時間を過ごそう。たくさんチェキを撮って、たくさんお話をしようと思っていた。そう意気込んでチェキ列に並んでいた。
ですが、私の推しメンはとても人気のあるメンバーでした。
列は途切れることがなく、限られた時間の中で私が並べたのは、たったの1回。上限の10枚(約3分間)を消化したところで、無情にも1部の時間が終わってしまいました。
「もっと話したかった」という気持ちはもちろんありました。でも、それ以上に私の心を占めたのは、「もっとチェキ券を買いたかったのに、買うことすらできなかった」という強烈な悔しさでした。
1回につき1万5,000円。お金を払って応援したいという気持ちも時間も準備してきたのに、それを受け取ってもらう枠すら残っていなかったんです。
悲しい気持ちのまま会場の外へ出ると、たまたま友達がそこにいました。
気を張っていたタガが外れたように涙が溢れてきて、私は泣きながら友達に自分の気持ちを打ち明けました。「もっとチェキ券を買いたかった」「お金を使いたかったのにできなかった」と。
友達にメンケアされながら、ふと自分を客観視した瞬間がありました。 「あ、私、完全にメン地下のオタクに染まってしまっているな」と。
ただライブを楽しむだけではなく、推しにお金を落とすことで応援したいと思っていること。そして、それが叶わなかっただけで、友達の前で涙を流してしまうほど感情を揺さぶられていること。
