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ゴールでも墓場でもなくて ②

あの頃の話【2】


「一体、どうしてたの?」
受話器の向こうで話す声は、困惑の色を帯びながら、
言い訳とも逃げともつかない言葉を辿々しく並べていた。

地元で交際を深めて3年、二人で支え合っていけるなら…と思っていた所へ、「どうしても夢を諦めきれないんだ」と彼からの決意表明。
飛行機で2時間弱の遠距離恋愛を続けていたものの、音信不通になりかけていた。

普段の行動パターンを見ていれば、
次の連絡まで多少の間が開く事は想像ついていたし、
自分とて安泰とはいえない分野を進もうとしている身だ。

離れてしばらくは寂しかったけれど、晴れて再就職が決まった。
初めて実家を離れ、テレビでしか見たことのないような青々とした景色が
広がる町での一人暮らし、これから立ち上がる事業所、慣れない運転…。

彼のことばかり気にかけていられるわけではなかった。

2回くらい、就職活動と併せて会いに行った時は、些細なことで軽くケンカしつつも時間が経てば仲直りして、食事して…
特に違和感を感じることもなく、遠距離になる前と変わらない温度感で
束の間の楽しい時間を過ごし、互いの日常へ戻っていったのに。

だから今回は、
何週間も連絡がつかず、気がつけば月も変わり…本当に心配した。

今の彼は、夢破れて一度帰ってきたものの息をつく間もなく、
地元から逃げるかのように、再び都会へ出ていってしまったわけだから。


彼が目指していた夢を、彼の両親はあまり応援していない様子だった。
それは、挫折後の再起に影を落としているかもしれないと
薄々思っていた。

客観的に見て、彼がその道に向いていたのかどうか、
疑問を感じなかったわけではないけれど、 
自分の立ち位置は心得ていた。

当面の間は、陰ながら応援し続けよう、
挫折してしまった場合は、元気になるまでそばにいよう…と。

ただ、私も若かったから…
自分が彼を気にかけるのと同様に、気にかけてほしかった。

(お願い、短くてもいいから…)
(普通に生きてるって知らせてさえくれれば、少しの間は待てるのに…!)

我慢のため池はもう、溢れ出していた。

「いや、こんなんじゃ私もう、無理だから…」
「別れ話かよ…!」
締めくくろうとした言葉を強くさえぎられ、沈黙が流れた。

「だからな、伝えたかった事っていうのは…」
振り切りたい気持ちの束を、一筋の良心が絡め取って引き留める。

「結婚しよう」

受話器ごしに張り詰めた空気が、みるみるうちに緩んでいく。

「…うん」

なけなしの覚悟を編み込んで束ね始めていたはずの自立心は、
情けないほど呆気なく、ほどかれてしまった。

ー(よかった、お互いに支え合って人生の見通しを立てていける)ー

     この時まだ、私は何もわかっていなかった。

ー【2】end ー

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