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#103 坂上香著『ライファーズ 罪に向き合う』 暴力からの解放と再出発

 「人は変わることができるのか」という重い問いに、「イエス」という答えを静かに差し出す希望の書だ。

 米国で凶悪犯罪者の更正を支援するNPO「アミティ」の活動を追う女性映像作家の20年にわたる記録である。

 アミティの更正プログラムは、自分の体験を徹底的に語りあうグループワークのかたちをとる。参加する受刑者は刑務所内の独立スペースで寝食を共にし、スタッフのほとんどが元受刑者だ。

 プログラム経験者のライファーズ(終身刑受刑者)が語り出す。幼い頃から自分の身に何が起こったか。そのとき何を感じたか。参加者それぞれが蓋をしていた記憶が怒りや悲しみとともに湧き上がる。彼らが重い口を開き始めるとき、変化は始まる。

 受刑者の多くは虐待、特に性的暴力の被害者だ。ここで初めてそれに気づく者もいる。被害の深さに気づくことで知る加害の重さ。

 壮絶な暴力を体験し、「極悪人」「再起不能」のレッテルを貼られた人間が劇的に変わるプロセスに驚き、圧倒される。

 プログラムを経た受刑者の再犯率は通常の3分の1。出所後はアミティのスタッフや刑務所職員になる者、自分が育った犯罪の街を変えようと、あえてそこで暮らす者もいる。

 著者は彼らの変化と再出発を映像に収める一方で、アミティの活動を日本に紹介してきた。近年、日本の刑務所でも同様の試みが始まっている。

 犯罪だけではない。いじめ、DV、差別。

 暴力を見つめることに暴力の連鎖を絶つ手がかりがある。

(みすず書房 2600+税)


メモ

 著者を初めて知ったのは『癒しと和解への旅』だった(1999年、『ジャーニー・オブ・ホープ』と改題して岩波現代文庫から発刊)。

 殺人事件の被害者遺族と死刑囚家族が一緒に旅をしながら語り合い、死刑廃止を訴える運動「ジャーニー・オブ・ホープ」を追った出色のルポルタージュである。

 著者が「暴力」という問題に強い関心を持つようになったきっかけは、中学校で受けた凄まじい集団暴行だった。

 それを傍観していた級友や教師、鬱屈を強いた家庭環境。心身に深い傷を負った彼女が以後たどった人生の軌跡は、以下のサイトで読むことができる。

 https://www.tokyo-jinken.or.jp/site/tokyojinken/tj-92-interview.html



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片岡義博 出版業界受難の時代ではありますが、今後も良書を見つけて紹介していきたいと思います。よろしくお願いいたします。