TIFゴーオンを振り返る 2022年編
「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず。」
孔子の論語らしいです。
スマホで朝刊を読んでいた時に目にして、自然とスクロールを止めて読み返しました。ちょうど2021年編のnoteを書き終えて、「さて、2022年編はどんな構成にしようか」と考えていたタイミングで出会った言葉です。
知るより好き、好きより楽しい。
僕のnote連載に合いそうな言葉だなと思って、ChatGPTに相談してみました。すると、「それは段階論を説いた言葉ですね。確かにアイドルフェスにとって重要かもしれません」と、どこかズレた返事をされました。
この論語の捉え方には諸説あるらしく、確かに段階論的な側面もあります。それに、アイドルフェスとの相性も良いでしょう。まずアイドルを知り、好きになり、楽しくなる――教科書のようなステップアップです。
しかし、僕の考えは違います。
僕の理想のアイドルフェスは、楽しかったから好きになり、好きになったから知りたくなる、です。
むしろ、楽しいだけで完結するのが理想です。
メンバーの誰かを好きになったわけじゃない、そのグループの背景を知ったわけじゃない。ただ目の前のライブが楽しかった――それこそ至高です。
少し冒頭から熱くなりすぎました。
こちらの考えをぶつけると、「それ最高ですね!」と全肯定してもらえるので、つい調子に乗ってしまいます。
さて、2022年編です。
3年ぶりの夏開催。コロナ禍の規制も徐々に緩くなってきました。
孔子の知好楽がどう重なるのか、一緒に振り返っていきましょう。
1.解散
ワールズエンド。は2022年4月9日に解散しました。
いい天気 pic.twitter.com/4TdPHiZLhw
— ゴーオントミー (@LetsGoOnTomy) April 9, 2022
残念ながら、ワルエンと一緒にTIFへ行くという目標は叶いませんでした。
推しメンはアイドル活動を続ける意向を示していたので、解散ライブの翌日に下北沢で開催された特典会でも、僕はいつものように気丈に振る舞っていました。
再会の約束として、リュックサックにミサンガを結んでもらい、チェキに「また夏」と書いてもらっても、どこかで最終回を俯瞰している自分がいました。
言うなれば、コロナが残した“心の後遺症”のようなものでした。
それでも、知り合いのオタクが推しメンと最後に話す様子を見たり、会話後に泣き出すのを見ていると、こちらももらい泣きしそうになったのを覚えています。
帰り道、まだ桜が咲いていた下北沢駅、西日のあたるホームで、オタクたちと握手をした時には、「ああ、これで終わるんだな」と、ちょっとだけ最終回の登場人物になれた気がしました。
別れ際にオーバーサーティーバッドトリッパーズと握手してウルッときてしまった。
— ゴーオントミー (@LetsGoOnTomy) April 10, 2022
これにて、ワルエン編はおしまいです。
その後の推しメンは、自称ネットアイドルに“転生”し、インスタ投稿や生配信、踊ってみた動画の投稿などをしながら、次のデビューに向けて準備を始めました。
僕はというと、知り合いに教えてもらったオススメのライブに足を運んだり、主現場でしかチェキを撮らないという独自ルールを解放して、いろんなアイドルとチェキを撮りながら知見を広めていきました。
そして2か月後、推しメンの新しいグループが発表されました。
その名も、Merry BAD TUNE.――略してバチュンです。
夏フェスで忙しい時期にデビューしないでよ、というのが率直な感想でしたが、7月10日に渋谷WOMBで開催されたデビューライブにも、しっかり足を運びました。
バチュンゴーオン
— ゴーオントミー (@LetsGoOnTomy) July 10, 2022
4月に解散した時点で、2022年のTIFに出演するのは絶望的だと分かっていました。7月デビューのグループが、8月開催のメジャーアイドルフェスに出演できるわけがありません。
バチュンとTIFの物語は、この先の2023年編に託すことにします。
3回目のおあずけ、そして思い出してしまう2021年の最悪のTIF。
それでも僕はTIFを好きでいられるのか――。
そんな問いを抱えたまま、2022年のTIFが会社のトイレで幕をあけました。
2.にしたんクリニック
「TOKYO IDOL FESTIVAL !!! 2022 supported by にしたんクリニック First Program Radio Gymnastics!!!」
いつもの軽快な曲に、Appare!の七瀬れあちゃんの声が重なったジングルが、僕のワイヤレスイヤホンから響き渡りました。
この数行の中に、2022年のTIFを読み解くヒントがたくさん含まれているので、順に紹介します。
まず、なぜ僕が会社のトイレで初日を迎えたかというと、僕の勤める会社は8月が期の始まりであるため、方針発表や決起会といった社内イベントが開催されるからです。これまで奇跡的にTIFと日程が重ならなかったのですが、最悪なことに、3年ぶりの夏TIFと部の方針発表会が被ってしまいました。
最初は欠席の意思を伝えたのですが、午前中だけでも参加してほしいと上司に念押しされ、あまり断りすぎると「なんの用事があるんだ?」と問い詰められそうだったので、渋々出社したのでした。
会社のトイレでTIF2022の開幕に立ち会えたのも、コロナ禍で配信体制を整えてくれたTIFのおかげです。本当に感謝しています。
次に、七瀬れあちゃんの話をします。
2022年から、「TIFPR大使」という役職が誕生しました。
事前にミクチャで賞レースが開催され、優勝したアイドルは、テレビCMに出演したり、ポスターに掲載されたりと、豪華な特典がもらえました。何より大きいのは、TIFのジングルに声を当てられること。ジングルは3日間、全てのステージ開始前に流れます。つまり、お台場中にその声を届けられるのです。その賞レースを勝ち抜き、見事、初代PR大使に就任したのが七瀬れあちゃんでした。すごくマニアックですが、れあちゃんの「supported by」の「by」の言い方が好きでした。
2022年は、PR大使以外にも、歌唱力や演技力など、さまざまなNo.1を決める賞レースがたくさん開催されました。
さらに、いま最もファンから応援されているアイドルグループを決める「TIF総選挙」が初開催されたのも、この年でした。
賞レースに嫌悪感を抱く人からしたら、全身が痒くなりそうなラインナップです。
でも、賞レースには良い側面もあります。世間では「課金目当てじゃないか」と言われることもありますが、公式には、アイドル個人にスポットライトを当てる目的があると説明されています。僕は中立なので、どちらを肯定も否定もしないのですが、PR大使決定戦の配信中、とあるアイドルが「私こんなに応援されたの初めて……」と、ちょっと戸惑いながらも嬉しそうにつぶやいた姿は、今でもなんとなく心に残っています。
そして、にしたんクリニック、様。
コロナ禍では、にしたん=PCR検査のイメージがとても強かったので、まさかTIF参加に陰性証明が必要になるのではないかと、一瞬身構えましたが、杞憂に終わりました。ビジネスの話はよくわかりませんが、「supported by」がつくということは、相当な巨大スポンサー様なのでしょう。雑誌で西村社長のインタビュー記事を拝見する機会が何度かありましたが、静かに熱い方だなという印象を受けました。う〜ん、弱いですね(笑)。社長の著書を読んでから、この連載を書くべきだったかもしれません。
ただ、これだけは先に書かせてください。
2025年のTIFは、フジテレビ問題の煽りを受け、開催が危ぶまれていました。多くのスポンサーがテレビCMを中止する中、にしたんクリニックはTIFのスポンサーを離れませんでした。むしろ、社長が「やりましょう」と言ってくれました。僕は、タクシーでにしたんクリニックのCMが流れても、消しません。
にしたんクリニックといえば、3時のヒロインが軽快にタンバリンを叩くCMでおなじみですが、そちらにちなんで、TIFでもタンバリンダンス選手権が始まりました。選手権といっても、課金賞レースではなく、会場にいるオタクたちの声援で優勝を決めるという、昔の牧歌的だったTIFを思い起こさせる素敵な企画です。
このように、2022年のTIFは、現在に繋がる型が出来始めた年だったと思います。
3.コロナ後の世界
1日目の午後、僕は会社を早退して、スマホでTIFの生配信を見ながらお台場へ向かいました。そして、受付でリストバンドを巻いてもらい、特典のTシャツを受け取ると、それに着替えながら目的のステージへと走っていきました。
原因は自分にあるのですが、朝の音声チェックも開会宣言も、そしてラジオ体操もすっとばして始まるTIFは、どこか味気なく感じました。
2021年に比べれば、多少コロナ規制は緩くなっていましたが、それでも屋内ステージに配置された椅子やソーシャルディスタンス用の目印が視界に入ると、「またか」、いや、「まだか」と嘆息せざるを得ませんでした。
夜までできるだけ多くのステージを回ったのですが、天気が悪かったこともあり、最後まで「夏のお台場にTIFが来たぞ!」とはならなかったような気がします。
2日目以降も、Tシャツ購入者限定ステージやアコースティックステージといった定番企画に足を運びましたが、気分は上がりませんでした。
もちろん、コロナ禍のTIFをちゃんと楽しめた人たちもいると思います。だからこれは、あくまで僕の想いとして続けます。
僕は、「コロナが明ければ、きっと楽しいTIFが戻ってくるはずだ」と想っていました。言い換えると、「TIFがあまり楽しくないのはコロナのせいだ」と、どこかで自分に言い聞かせていました。
でも実際は、コロナ規制が緩くなったにもかかわらず、1年前とあまり変わらない温度感でライブに参加している自分がいました。
つまり、原因はコロナだけじゃなかったんです。
もう少し踏み込んで書くと、楽しめなくなっていた自分を、コロナがただ引き延ばしていただけだったのかもしれない。
そう気づいたのです。
そんなことを考えていた頃、初めてTIFに参加した知り合いから、「あんなに楽しい空間だとは思わなかった」と感想をもらいました。そう言ってもらえて嬉しかったのに、どこかで「いや、TIFってこんなもんじゃないんだけどな」と言いかけて、言葉を飲み込みました。
その小さな違和感が、結局、問いは僕の中にあるのだと教えてくれました。
まえがきで、孔子の知好楽に触れました。
知る・好むを飛ばして、何もなく楽しめるのが最強だと信じていました。それなのに、この頃の僕は、「TIFってこうだったよね」という“知”に自分をがんじがらめにして、期待とのズレを意味づけで補おうと必死になっていたのかもしれません。
では、TIFに意味をつけるとは何か。
2022年のTIFで、僕は何をすくい取ったのか。
それは、決して答えではありませんが、コロナ以降に光を照らす、いくつものヒントのかけらでした。
4.意味づけ
北海道からやってきた4人組アイドル「タイトル未定」が、2022年のTIFメインステージ争奪戦で優勝したことで、地方出身アイドルの快挙という物語が生まれました。彼女たちの歌声を聴くだけで、すっと腫物がとれたような気持ちになるので、僕は「聴く人を幸せにする音楽だ」と例えています。
特に好きな楽曲は「鼓動」です。
タイトルの通り、気持ちの高鳴りを感じさせてくれる曲であり、
メンバーからの「皆さんでこの曲を完成させてください」という煽り、いや、受け入れによって会場に一体感が生まれます。
3日目の夜、スカイステージで彼女たちのライブを観たときは、意味づけなんて忘れて、その歌声にただ浄化されていました。
スカイステージといえば、もうひとつ忘れられない光景があります。とある中堅グループに入ったばかりの新メンバーが、ステージ裏でお台場の海に向かって発声練習をしていました。そのときステージではMAPAが「アイドルを辞める日」を歌っていて、「音楽で会いましょう」という歌詞が何度も響いていました。お腹をおさえながら、不安そうに声を出す後ろ姿が、ただただ尊くて。見ちゃいけない瞬間かもしれないけれど、だからこそ、あの空気を思い出すと、胸が軽くなる気がします。
このような静かな美しさもあれば、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が急上昇したグループもいます。それが、FRUITS ZIPPERです。言うまでもないと思いますが、人気の一因はTikTokなどで大バズりし、これまでアイドルに興味がなかった層を取り込んだことにあります。コロナ禍でおうち時間が増えたことも、彼女たちの動画が広まる追い風になったのかもしれません。まさに、アイドル界に風穴をあけた存在です。2022年時点では、まだメインステージに立っていないのも興味深いです。
少し自分寄りの話をすると、2013年編などにも登場した僕の大学の後輩が、久しぶりにTIFへ来ていました。夜に一緒に食事をしたのですが、彼なりに気になったグループがいたらしく、その魅力を詳しく教えてくれました。こんな会話ができたことが、まず嬉しかったですし、昔を知る人が今もちゃんと楽しんでいることが、何より救いになった気がします。
昔と今を繋ぐエピソードをもうひとつ。
とあるグループのライブを観ている最中に話しかけられて、
誰かと思ったら、ワルエンでチェキスタッフをしていた人でした。
向こうから声をかけてくれたのが何より嬉しかったですし、「解散しちゃったけど、ワルエンは大好きだよ」と言ってくれた言葉もぐっと胸に残りました。2022年のTIFに推しメンはいなかったけれど、
こうして点と点が繋がる瞬間には、知好楽のどれにも当てはまらない温もりがあった気がします。
TIF全体に話を戻すと、2022年は、解散を発表していた26時のマスカレイド(ニジマス)と、初期メンバー全員の卒業を発表していたまねきケチャが、現体制で最後の出演をした年でもありました。僕の中では、アイドリングやPASSPOがTIF第1世代だとすれば、ニジマスやまねきは第2世代だと思っています。若い世代にライブアイドル文化を浸透させた世代です。
この2組は、まねき→ニジマスの順に、最終日のスマイルガーデンのトリを飾りました。
まねきで印象に残っているのは、セトリの1曲目に「きみわずらい」、最後に「冗談じゃないね」が組まれていたことです。どちらも定番曲なので、何十回も観てきましたが、普段は「冗談じゃないね」でまず盛り上げて、最後に「きみわずらい」で締めるのが定石でした。最後に楽しい曲で終わらせてくれたのが、まねきなりのオタクへのプレゼントであり、TIFへの感謝だったのかなと、密かに思っています。
そしてニジマス。
スマイルガーデンには、前から後ろまでぎっしりと人が集まっていました。サイリウムやキングブレードの青い海が一面に広がっていて、ただただきれいでした。「最後だから羽目をはずそう!」とはしゃぎ始めたオタクが、BONDSに叱られている光景すらも、なんだかいい風に映りました。
ニジマスがきっかけで知り合ったオタクもいます。
3曲目の「心から…」を聴きながら、ああ、この曲が始まると彼も喜んでたな、とか、いろいろ思い出していました。これも、点と点です。そして、僕にとっての意味づけです。TIF最後のライブだから、とりあえず見ておこう、ではなかったということです。
「夏の主役はニジマスだ!」
毎年夏になると聴いていたかけ声のあとに、最後の曲「ハートサングラス」が始まりました。
そういえば、この曲の作詞って誰だっけ?
ニジマスを離れた2人のスタッフは、それぞれ新しいグループをつくりました。ひとつが「タイトル未定」。メインステージ争奪戦で優勝したのは、さっき書いた通りです。そしてもうひとつが「マリオネッ。」であり、後の「ワールズエンド。」です。
この点と点が意味するものは、なんでしょうか?
ニジマスは有終の美を飾りましたが、その点は、別の点へ線を伸ばし始めていたのかもしれません。
――
TIFの帰り道――強面のお兄さんからイベント告知のうちわをもらいました。
「僕がそんなイベントに行ったら浮くでしょ」とツイートしようとスマホを取り出すと、1件の通知が。推しメンからでした。
「今年の夏は間に合わなかったけど、来年はばちゅんが連れていくからね」
『連れていくからね』を、お台場で受け取る僕。
2023年は、どんなTIFになるんだろう。
推しメンは4年ぶりにお台場へ帰ってこられるのかな?
スマイルガーデンで、ライブできるのかな?
そんなことを考えながら、東京テレポートへと歩いていきました。うちわから生まれた風は、少し強かった気がします。
【出典リンク】
・TOKYO IDOL FESTIVAL 2022
https://official.idolfes.com/s/tif2022/
・新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
・折々のことば:3441 鷲田清一
https://www.asahi.com/articles/DA3S16254748.html
・個人資産300億円!にしたんクリニック社長がフジ関連『TOKYO IDOL FESTIVAL』開催を勧めた理由「アイドルの存在意義は」(ENCOUNT)
https://encount.press/archives/779637/
・Appare!七瀬れあ「夏といえばTIF」PR大使として真夏のフェスを全力でアピール(BUBKA WEB)
https://www.idol-culture.jp/geinou/37840/
【動画リンク】
・鼓動
https://www.youtube.com/watch?v=otZ6231W3ZQ
・MAPA「アイドルを辞める日」Music Video
https://www.youtube.com/watch?v=a9KUXY3ubz4
【参考リンク】
・ミクチャ
https://mixch.tv/
