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何者でもないからガムシャラ/他人の不幸は蜜の味 #15

マルチ商法は聞いたことがあったが、ネットワークビジネスという単語は知らなかった。

セミナーを受けた後のボクは、何とも表現のしにくい感情だったが、不安より期待の方が増していたのは事実だ。

今回の話を聞く前のボクだったら、少なくとも怪しいとしか思わなかっただろうし、この類の話を友達が話してきたらヤメロと間違いなく言う。

ただ、ヤメロと言う割には、特に根拠はなく、何となく怪しいから、違法のような気がするといった漠然としたものになっていただろう。

日本では、マルチ商法とネットワークビジネスとフラインチャイズの違いもハッキリ言語化して説明できる人は少ない。

ただし、多くの何となくで否定する人の気持ちは理解できるし、今のボクなら見向きもしない。

世界的にはマルチレベルマーケティングとも言われているらしいが、正直そんなことはどうでもよかった。

とにかく商品を買ってくれる人とビジネスに参加する人を探すために声をかけなければならないことは理解が出来た。

とはいえ、今までの自分を知っている人達からしたら、あいつ急に変わっただのと驚かれるだけで、信じてもらえないだろう。

ボクの場合は今まで社会人すら未経験で、友人・知人から信用を勝ち取るのも難しい。

そこで、仕事をやるからには、今までのボクを知らない人に声をかけることにした。

ボクに仕事を教えてくれた男が派遣に来ていたのも、その時にやっと少し分かった気がした。

それから思いつく限りの方法で、ボクを知らない人、大してボクの事を分かっていない人に声をかけまくった。

ただし、自分の理解力も乏しく、ボクが相手に説明する能力が当初はなかった。

そのため、「お願いしない、喋り過ぎない、勿体ぶる」という3つの教えを愚直に駆使しセミナーに誘導した。

参加した会社では、仕事に参加する人向けのモノだけでなく、数多くのセミナーが開催されていた。

商品の説明方法、ビジネスの勧め方なんかも充実していた。

時には1泊2日で開催されるようなものや、1,000人、10,000人以上の規模であっても、セミナーと名のつくところに全部参加した。

ちなみに、本社が見たくてアメリカまで行ったりもした。

具体的な営業テクニックは、他で触れさせていただくが、この頃に得た知識は、今でもボクの財産だ。

それまでの生活とは一変したボクを見て、彼女から心配されることも多々あったが、ただただ余裕がなかった。

いつか分かってくれるという甘い考えでいたが、彼女もボクのもとから離れていってしまった。

この会社は当時も既に知名度はあったが、ビジネスをやっていない人達から見ると怪しまれていると認識して仕事をしている人が多かった。

そのため、どう客観的にビジネス・製品・会社を見てもらえるかを意識しながら展開している人が多かった。

おかげで、それまで勉強していなかったが、余りあるくらいに知識やテクニックを吸収することが出来た。

このビジネスを始める前から成功者だった人も多く、最初は驚きがあったが、このビジネスで始めて成功した人の方が多かった。

どちらもボクにとってはありがたい存在だったが、「自分の周辺にいる人を変えると収入が変わる」ということを経験できた。

当時乗っていたワンボックスカーの後部座席を全て倒して、無印良品で買ってきたセミダブルのベッドを積んだ。

話を聞いてくれる人や、ボクが声をかけてビジネスの参加をしてくれた人が困っていたら、何処へでも向かった。

夜遅くなれば車の中で寝ることも増えたが、他に稼ぐ方法のないボクが文句など言ってられなかった。

その甲斐あってか、気がつけばボクは、そのビジネスにおいて一目をおかれる存在となっていた。

世界最短、最年少でその会社における最高タイトル(役職のようなもの)が手にかかっていた。

元から何の取り柄があった訳でもコネもないボクが、開始半年を超えた頃には、一丁前にセミナーで話す側にもなっていた。

自分から始まる組織で、1,000人規模のセミナーも開催するまでになり、収入も分かりやすくついてきた。

恐らく側から見れば、うまくいっていたように見えていたと思う。

しかし、ボクはある悩みを抱え始めていた。


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ヒトタラヲ

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