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FIREしたことを後悔した日

知らない電話番号だ…

普段なら出ないことの方が多い。

ただ、ちょっと気になって電話にでた。

ボク「もしもし…」

営業絡みで電話がかかって来た可能性も高い。

1Rマンションの投資だとか、くだらん電話がよく来る。

だから、ボクは自分の苗字を名乗らなかった。

女性「もしもし…〇〇(ボクの苗字)さんの電話でよろしいですか?」

声から察するに、どうも少し年齢が上の女性を想像した。

特殊詐欺で、男性に警察を名乗られたりしたこともある。

ただ、年配の女性が騙すというのは、耳にしたことがない。

とはいえ、ボクの知り合いなら電話番号を登録しているはずだ。

一瞬で色々と想像したが、思い当たるフシがない。

それでも、ボクの名前を知ってるならと思い対応する。

ボク「そうですけど、失礼ですが、どなた様でしょうか?」

女性「私、村山和夫(仮名)の妻です。」

ボク「すみません。ムラヤマカズオさんというのは、ボクとどういった関係の方ですか?」

女性「〇〇さんが小学生の時に担任を務めさせていただいた、村山の妻です。」

(村山先生の奥様か!!!)

こうした電話が来るってことは、亡くなったか…それとも…

ボク「すぐに分からず申し訳ございませんでした。村山先生の奥様でしたか。」

どれくらい電話をしてたんだろう。

意外と長かったような記憶だが、正確な時間は覚えてない。

ただ、先生の奥様が、ボクに電話をかけて来てくださった要件は、理解が出来た。

おかげで、ボクはFIREしたことを、本当に後悔させられる。

ボクは親の仕事が関係して、転校の繰り返しだった。

中学3年に落ち着いた感じだが、それまでは色んな場所を転々としている。

つまり、先生とボクは物理的にも距離がかなり離れていた。

それでなくても、小学校の先生だ。

よっぽどのことがなければ、付き合いなど途切れている方が多いと思う。

本当に申し訳ないが、先生のことは、大人になるにつれて、すっかり忘れていた。

20代になりボクは独立し、会社や事業を多く手がける。

と同時に、GoogleやYahoo!で検索しても、ボクの名前で、かなりの数がヒットするようになっていた。

おかげで、大したレベルじゃないが、取材を受けたり、色んな媒体にも紹介されたり、出演させていたいた機会も増えていく。

会社の電話へ色々と連絡もあったが、ボクが電話に出ることはなくなっていた。

色んな事業に手を出していたため、自分1人で対応できるレベルには限界がある。

従業員にもお願いして、ボクでないと解決しない電話以外は、なるべく自分たちで対応してくれるよう、普段からお願いしていた。

そうした中、会社の子からボクに連絡が入る。

社員「〇〇さん(ボク)に電話あったんですけど、今いいっすか?」

ボク「はいよー。どこのなんて人?」

社員「いや、仕事じゃなくて、〇〇さんが小学校の時の先生だって言ってましたよ。」

ボクは電話番号を聞き、少し緊張しながら先生に電話をした。

ボク「もしもし、〇〇と申しますが、村山先生のお電話でしょうか?」

先生は、えらく喜んでくれていた様子だった。

インターネットでボクの名前をたまたま見つけ、電話をかけて来てくれたそうだ。

正直なところ、今でもボクの名前を検索すれば、全盛期ほどではないが、それなりにヒットする。

だが、当時はかなりの数がネットでも掲載されていたので、どれを見られたのか分からない。

良いことばかりではなく、あることないことを書かれ、気が狂いそうになった時期もあった。

というか、ほぼ気が狂っていたと思う。

先生は、いつか何らかの形で大成すると思っていたと、おっしゃってくださった。

今度、東京に来る機会があるので、よかったら食事でもどうか?と提案される。

当時は、ものすごく忙しかったけど、せっかくの機会なので快諾した。

どんなお店があるかも分からないから、ボクに予約は任せるが、「もう定年して働いてないから、高いお店はやめてくれよ。」なんて言われて。

久しぶりにお会いした先生は、年こそとっていたが、バッチリ面影は残っており、すぐに分かった。

昔の話なんかをして、すごく楽しかった思い出だ。

先生は、ボクのことをインターネットで見るのが嬉しいとまでおっしゃってくださった。

でも、良いことばかり書かれていた訳じゃない。

あまり先生に知られて欲しくなかったが、社員たちにも弱音を吐けず、実は悩んでいることを伝えた。

すると、そんなボクに先生は、あの手この手で優しく肯定してくれたことを、今でも覚えている。

奥様からの電話は、やはり村山先生が亡くなられたとのことだった。

亡くなる直前も、病院でよくボクとまた会いたいとまでおっしゃってくださっていたとも伝えられる。

ただ、奥様がインターネットで調べて、ボクの名前が出て来た場所に電話が繋がっても、ボクは会社にいないと言われるだけだったとも言われた。

それもそのはずだ。

既に起業した会社や事業は全て売却済みで、ボクは社内に存在していない。

だから、いくらボクをインターネットで見つけて、電話をしてくださったところで、ボクに繋がる訳がない。

また、FIREするにあたって、余計なことを詮索されたくなくて、ボクのことが記事になっている会社などには、できる限りお願いして削除依頼をした。

おかげで、ボクのフルネームを検索したところで、以前に比べたら見つかる件数も少ない。

奥様は色んな方法で、なんとかボクの電話番号を知ったが、もうその前に先生は亡くなってしまったとのことだった。

ボクがFIREするのが、もう少し遅ければ、先生に会えたかもしれないのに…

色んなしがらみから解放されたくてFIREしたはずが、まさかこんなことになるなんてね…

奥様は、先生とボクが以前会ったこと、実は調べたのは偶然でなかったこと、昔からボクを気にかけてくださっていたことを教えてくださった。

先生はボクに来てもらうのは迷惑がかかるから、会うなら元気になって自分が会いに行くと、奥様にボクの電話番号は教えなかったと聞かされ、やるせない気持ちしかない。

色々と迷惑をかけた自覚はあったが、最後の最後までダメな生徒だったと思う。

先生のお墓参りに行きながら、FIREしたことをちょっと後悔した。

実はこれ、割と最近のお話。

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ヒトタラヲ

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