【蒼き航跡】橿原の杜に眠る「瑞鶴」の記憶5
第5回:時を超える絆 ゲーマーと艦娘、それぞれの祈り
【登場人物】
はっつあん:鼻をすすりながら、スマホの画面を見つめる若者。
クマさん:優しく微笑みながら、ゆっくりと酒を味わう。
ナオちゃん:何も言わず、温かいお茶をはっつあんの前に置く。
はっつあん「……ズズッ。……クマさん、あの、さ。僕、橿原で石碑の写真撮ったとき、他にも何人か若い奴らがいたんすよ。僕と同世代か、もっと下くらいの」
クマさん「ほう。あんな静かな森の奥にな。どんな連中だった?」
はっつあん「なんか、スマホ片手に熱心に石碑を見てて。一人は、アニメキャラみたいな女の子のキーホルダーをカバンに付けてたんす。正直、『あ、オタク系の人かな』って、ちょっと引いた目で見てたんすけど……」
ナオちゃん「……あ、それって『艦これ』とかのファンじゃない? 擬人化された船の女の子が戦うゲームの」
はっつあん「そう、それ! でもね、彼ら、めちゃくちゃ真剣に手を合わせてたんすよ。深々と頭を下げて、ずっと。……さっきのクマさんの話を聞いた今なら分かる。彼ら、知ってたんすね。瑞鶴がどんな思いで沈んでいったか」
クマさん「……ははは。いいじゃねえか、はっつあん。きっかけは何だっていいんだ。ゲームだろうが、キャラが好きだろうがな。あいつらが石碑の前に立って、瑞鶴って名前を呼んでくれる。それがどれだけ『彼女』を救ってるか」
はっつあん「救ってる……?」
クマさん「忘れ去られるのが、一番の孤独だからな。かつて、誰もいなくなった海で、たった一隻で敵を引き受けた瑞鶴だ。今の時代に、若い奴らが自分の名前を呼んで、会いに来てくれる。これ以上の幸せがあるかい?」
ナオちゃん「……なんか、そのキーホルダーの女の子も、本当の瑞鶴の魂が形を変えて、今の若者たちに『私を忘れないで』って会いに来てるみたいだね」
はっつあん「……。僕、自分が恥ずかしいっす。ただのパワースポットだとか、オタクの聖地だとか思ってた。でも、あの森にいた彼らは、時を超えて瑞鶴と繋がってたんだ……」
クマさん「そうさ。……さて、はっつあん。おめえさん、まだ一番大事なことに気づいてねえな。なぜ、あの瑞鶴が『北西』……つまり、他のどこでもなく『橿原』を向いて万歳をしたのか」
はっつあん「……あっ。そういえば、まだ聞いてない! クマさん、教えてください。なんで橿原だったんすか!?」
クマさん「……ふっ。それはな、おめえさんの故郷、そしてこの国が始まった場所に関わってるんだ。……さあ、いよいよ最後の酒といこうか」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、物語の中で「はっつあん」が感じた戸惑いと、瑞鶴を巡る現代の光景を重ねてみました。
石碑の前で静かに手を合わせる若者たち。彼らのきっかけがゲームであっても、キャラクターへの愛着であっても、瑞鶴という名を呼び、その軌跡に触れようとする姿は、決して否定されるべきものではないと私は思います。
「忘れ去られるのが、一番の孤独」
クマさんの言葉通り、時代を超えて誰かが彼女たちを思い出すこと。それこそが、何よりの鎮魂になるのかもしれません。
さて、物語はいよいよクライマックス、最終回へと向かいます。 なぜ瑞鶴は、最後に「北西」を、そして「橿原」を見つめたのか。 その理由が、大和三山の風景とともに明かされます。
次回の更新も、ぜひお付き合いいただければ幸いです。
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