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大津市・幼稚園教諭の賃下げはなぜ?|数字と構造で見る制度設計の選択肢


2024年4月1日時点:184人
2025年4月1日時点:132人。

待機児童の数は減少しているが、
2年連続で全国最多となっている大津市。

この状況下で提案されたのが、
幼稚園教諭と保育士を統合する「教育保育職制度」。


目的は明確。

・人材を横断的に活用
・待機児童を減らす
・制度を一本化する


制度の方向性そのものは、合理的。


問題になったのは「給料」

「幼稚園教諭の給与水準を保育士側に合わせる」という案が出た。
実質的な「賃下げ」になる可能性がある。


給料が下がれば退職者も出てくる。

事実、アンケートでは108人中37人が
退職・退職検討・勤務継続検討と回答。


もしこの一部でも離職が起きれば、
待機児童解消どころか、
逆に人材不足が深刻化する可能性もある。

制度の目的と結果が逆転するリスクがある。


ニュースでは

・待機児童全国最多
・年間約40万円の減額
・幼稚園教諭:約400人
・約2割が退職検討

インパクトを強くするためだろう。
センセーショナルな数字とともに報じられた。


だが、数字や構造を整理すると印象は少し変わる。

ニュースの見出しの印象だけでは
分からない事情がある。

既存の幼稚園教諭の給料を下げるのは、確かに間違ってる。


ただ、「賃金が下がる」→「許せない💢」
という論点の単純化だと、この問題は解決できないように思えた。


結局、大津市はどうすれば良かったのか。
問題の構造から、最適な対案を合理的に考えてみた。

1. 大津市が公開してる数字を整理


まずは、大津市のHPより
公開されてる数字をもとに、問題の構造を見ていきたい。

🐣 公開されてる幼稚園のデータ

公立幼稚園教員数


公立幼稚園数:28園
幼稚園教員数:284名
(令和6年5月1日現在)

28園あるため、
1園あたり約10人。


別の市ではあるが、妻は公立幼稚園教諭
職員は9名だが、
正規:4名
会計年度任用職員:5名

なので、大津市が公開してるこの数字も
正規+会計年度任用職員の合算と考えられる。


正規教諭のみであれば、
150人前後の可能性もある。


この時点で、ニュースに記載されてた
「幼稚園教諭約400人」は、どの数字なのか疑問が残る。

🐣 公開されてる保育園のデータ

大津市の保育士数


公立保育園数:14園(うち2園は休園中)
保育士数:257名(一般行政職:1480名)
(2018年8月27日現在)

大津市の保育士は、一般行政職。
最新だと「こども未来部」

ただ、こども未来部だと職員数が掲載されてなかったので
一般行政職を参考に数字をみていく。

大津市 機構図


今回の「教育保育職制度」条例案が可決されると
幼稚園と統合される予定。

ちなみに10年ほど前から
保育士も幼稚園免許を必須として採用してる。


なので今回の統合は、
資格統合ではなく給与表統合
が主眼と考えられる。

💴 給与差の実態

大津市 給与状況


小・中学校(幼稚園)教育職 ※令和6年4月1日時点
・平均年齢:38.8歳
・平均給料月額:307,808円(手当込み362,968円)
・初任給:大学卒 210,400円 短大卒 193,400円
・勤続給料:勤続10年 310,682円 20年 372,996円 30年 400,296円  40年 423,800円


保育士(一般行政職)※令和6年4月1日時点
・平均年齢:41.5歳
・平均給料月額:312,951円(手当込み392,793円)
・初任給:大学卒 202,400円
・勤続給料:勤続10年 264,724円 20年 356,078円 30年 387,757円  40年 415,955円


勤続年数によって差は変動するが、
報道される「年40万円減」は特定層の最大値であり、全員一律ではない。

2. 給与統合の選択肢


今回、問題になったのは
幼稚園教諭の給料を保育士側に合わせる

──つまり賃下げ。


統合には2方向ある。

🫠 低い方に合わせる(幼稚園教諭の賃金を下げる)


勤続10年だと
• 幼稚園:310,682円
• 保育士:264,724円

差額:45,958円/月
年間:約551,000円

......うん。かなりの額。
だけど公開されてる金額を見ると、だいぶ開きがある。


初任給:月額8,000円/年間 96,000円
勤続10年:月額45,958円/年間 約551,000円
勤続20年:月額16,918円/年間 約203,000円
勤続30年:月額12,539円/年間 約150,000円
勤続40年:月額7,845円/年間 約94,000円


中間値で仮定すると
• 平均減額:36万円
• 対象:150人

=5,400万円

少し保守的に下げ、
平均減額30万円だと4,500万円

現実的なレンジ幅を考えると
年間4,500万〜5,400万円規模の削減。


学校関連人件費:約46億円。

5,000万円 ÷ 46億円 ≒ 約1.1%
教育費全体の約1%。

財政的影響は限定的。
政治的にも調整できる金額。

🤩 高い方に合わせる(保育士の賃金を上げる)


保育士257名を、
幼稚園教諭に合わせて、賃上げするとどうなるか。


中間値で仮定すると
• 平均増額:推計レンジ30万〜36万円
• 対象:257人

= 約7,710万円〜9,300万円

社会保険・賞与影響込みで約8,000万〜1億円規模。


ただ、保育士は一般行政職。

給料を上げるとなると、
他の一般行政職員、約1,200名からの反発がある。

単純な賃上げは、制度上容易ではない。

👛 既存の幼稚園職員の給料が守られればよかったのでは?


改革には痛みが伴う。

給与形態など構造を見てみると、
一般行政職員約1,200名の反発よりも、
幼稚園教諭約150名の反発を選んだのだろう。


ただ、問題は──
既存職員の将来設計に手を入れたこと。

大津市職員の昇給カーブ


公務員は副業原則不可。
• 昇給カーブ
• 退職金算定
• 生涯賃金見通し

を前提に生活設計を行っている。


統合は未来の話だが、
給与は今日の生活の話。

住宅ローンや家賃、
子どもの教育費、
日々の物価上昇。

制度の合理性より先に、
家計は動いている。


今回の報道では
「当面補填するが、昇給は新表基準」
と書かれている。


即時減額ではないものの、
「将来カーブが低くなる可能性」
が不安の源
となっている。

だからこそ、
既存幼稚園職員の給料形態にまで手を出したのは愚策

「後から下げられた」ことが重い。


新規採用からのみにしておけば、
ここまで反発は出なかっただろう。


3. 幼保統合によるメリットをもっと強調すべき

大津市 幼稚園・保育園 定員充足率


公立幼稚園・公立保育園、
それぞれの入園率をみると、どこも定員割れを起こしてる。

園数は十分足りている。
定員割れも起きている。

それなのに、
待機児童数が全国最多なのはなぜだろう?

1番の問題は、
「賃金が下がる・上げろ」よりも
こっちな気がしてきた。

🐣 前提:大津市の待機児童はなぜ最多なのか


待機児童数
• 2024年4月:184人
• 2025年4月:132人

2年連続で全国最多。

全国全体では待機児童は減少傾向であり、
100人を超える自治体は大津市のみ。

待機児童が多い自治体ランキング


ただ、全国の待機児童ワーストランキングをみると
住みたい街ランキング上位が並ぶ

全国的には少子化&人口減少が起きてるため、
待機児童数は目立たない。

大津市の就学前児童 人口推移


大津市は──
• 京都・大阪圏のベッドタウン
• 人口は急減していない
• 住みやすさランキング上位常連


再開発による人口流入などで、
「特定エリアへの子育て世帯集中」
が起きている可能性が高い。

待機児童と地域の割合


市全体では定員割れがあっても、
局所的に不足が発生していると考えられる。

🤝 幼保統合改革の方向性は合理的

大津市 就学前児童 施設利用推移


待機児童が出る理由は
• 0〜2歳不足
• 共働き家庭増加
• 長時間保育ニーズ増大
• 地域偏在

総量不足ではなく、需要構造のミスマッチ。


だからこそ、「幼保統合」は合理的。

  • 人材を横断して配置
  • 局所的不足への対応
  • 将来の人口減少への適応

再設計は避けられない。

問題は、
改革のスピードと既存保護の設計
にあった。

4. 市として最も穏当だった再設計案


財政・人材・制度のバランスを考えた場合、

• 既存職員の完全保護
• 新規採用から統一
• 時間をかけて自然一本化

とすれば、
制度改革は進みつつ摩擦は最小だった可能性が高い。

①  既存職員の完全保護を明文化する


• 不利益変更は行わないと明言
• 昇給カーブ・退職金算定維持
• 差額支給ではなく恒久保障

曖昧な「当分の間支給」ではなく、
昇給や退職金を含めた長期的な保障を明確にする。

不安が消えれば、動揺は減る。
人材流出リスクをゼロに近づける。

② 新規採用から統一


新規採用職員から
新たな給与形態にする。

新卒の子たちは、新たな給与形態をもとに
公務員を選ぶか、民間を選ぶか選択できる。


給与が低かったら、
また今回の報道で「大津市=ブラック」のイメージがついたら、
「敬遠すべき進路」と思われてしまうかもしれない。

公立保育士 採用状況



ただ、公務員の安定を望む層は
現実、そこまで減らない気もする。

③ 業務の重さも同時に見直す


• 書類負担
• ICT導入
• 補助人員配置
• 休憩確保

妻の話だと、無駄な書類作成が多いと聞く。
そのため、休憩なしで1日をぶっ通しで働かないといけない。


給与表だけを変えても、
仕事の実態が変わらなければ人は定着しない。

負担軽減も同時に行う改革案が必要だろう。

④ 数値目標の明示


• 待機児童132人 → 3年で50人未満
• 離職率10%以下維持
• 稼働定員数の公開

など、制度変更の効果を検証可能にする。


数字を示せば、
議論は冷静になる。


⑤ 時間をかけて自然一本化


もう統合されて何年もたつ銀行も
「旧○○銀行出身」など派閥争いが起きている。

改革は長い年月をかけて行うもの。


既存の幼稚園教諭が
全員、定年退職するまでは終わらない。


組織改革は「決定」で終わらない。
人が入れ替わるまでが改革期間。

⑥ 特別職報酬の改定は「順番」を考える


同時に提出された市長・議員報酬の引き上げ案。

制度上の改定であっても、
現場が不安な局面では象徴性が強い。


金額の問題というより、
メッセージの問題。

「まず現場を安定させる」

そう言えたなら、
受け止め方は違ったかもしれない。

まとめ:賃下げ反対!という単純な問題ではなかった


市単独では限界があるのも事実。

保育士・幼稚園教員の処遇改善は、
市だけで完結できる問題ではない。

国の交付税、制度枠組み、財源制約。
単純に「市長が我慢すれば解決」という話ではない。


報道は
• 「賃下げ」
• 「全国最多」
• 「退職検討2割」

を強調する。

それにより、
事情を詳しく知ることなく
無責任にSNSで憶測や誤った情報が拡散される。


しかし実態は──

• 局所集中構造
• 給与表統合問題
• 均衡原則
• 経過措置付き移行

という制度設計論。


大津市の改革は方向性としては妥当である。

ただし、
既存幼稚園教諭の将来カーブ」にまで手を入れたことが、
問題を複雑化させた。


制度が変わるとき、
まず守られるべきは人。


財政規模から見れば、
調整可能な範囲だった可能性がある。


「賃下げ」という単純な構図ではなく、
改革の痛みを誰が、いつ、どの程度負うのか
という設計の問題である。

一方で、待機児童対策として
制度再編が必要だったことも事実。

現場が安心して働ける状態を作ることが、
待機児童解消への最短距離でもある。


危機を強調する数字は目を引く。

しかし数字を並べ直せば、
これは「どうにもならない問題」ではなかった可能性が見えてくる。


制度は机の上で作られるが、
子どもを育てるのは現場。

信頼は現場で積み上がる。


改革は必要だが、
人の時間軸は制度より長い。


合理性と生活の間にある溝を、
どう埋めるか。

そこにこそ、
行政の設計力が問われているのだと思う。



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