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掃除時間にふらっと現れた先生と、コーヒーをいれてくれた先輩……二人の“静かな師”から教わったこと【源流をたどる #2】

こんにちは、yasuです。

前回は、私とテクノロジーの出会いを、小学生のころにまで遡ってお話ししました。
後輩の家で見た「でっかい箱」 父と一緒に触れたBASICのパソコン 沖縄の教授から渡されたカセットテープ。

人を通して、新しい世界に出会っていく。
振り返ってみると、私の歩みは、いつもそんな出会いに支えられてきました。

今日は、その続きとして、「人」そのものから受け取ったものについて、お話ししたいと思います。

私の中には、二人の“静かな師”がいます。
一人は、小学6年生のときの担任、A先生。
もう一人は、教員になってから出会った、ICTに詳しい先輩の先生。

時代も場面もまったく違うのに、不思議と二人には、共通する何かがありました。


掃除時間に、ふらっと現れる先生

小学6年生のとき、私のクラスに赴任してきたのは、女性のA先生でした。

若い先生ではありません。
何年もの経験を積まれた、淡々として落ち着いた佇まいの方でした。

クラスで何かトラブルが起きたとき、A先生はみんなの前で問いただすようなことを、まったくされませんでした。

代わりに、掃除時間にふらっと現れる。
廊下や教室の隅で、一人でいる子のところに、すうっと近づいていく。
こそこそっと話を聞いて、「ふーん」と、それだけ言って帰っていく。

派手に叱るわけでも、大声で諭すわけでもない。
それなのに、クラスは不思議と落ち着いていました。

今でも忘れられないエピソードがあります。

ある日の研究授業。
学校の先生たちが見に来る、緊張感のある場でした。

子どもたちからなかなか意見が出ず、教室の空気が少し静まり返ったとき。
A先生は、手元のカードを、見えるような見えないような感じでひらひらと振りながら 「ここらへん、言ってくれないかな」 と、こちらに伝えてきたのです。

完璧に演じようとせず、ちょっとお茶目な仕掛けをしてくる。
そのときに「面白い人だなあ」と思ったのを、よく覚えています。

もうひとつ、忘れられない場面があります。

これも、私が一人でいるときでした。
A先生はサンダルのような履物を履いていらしたのですが、ふと私に、こう聞いてきたのです。

「この音、気になる?」

「気にならないですけど、どうしてですか?」と尋ねると 「上の先生から、それは良くないよって言われたんだよね。気になるものなのかなあと思ってさあ」

大人が大人に決められたことを、子どもの私に「どう思う?」と聞いてくる先生。
あのときは深く考えませんでしたが、今思い返すと、これはとてもすごいことです。

子どもを、一人の人間として対等に扱っている。
意見を聞くに値する相手として、向き合ってくれている。

A先生のクラスで過ごした1年は、不思議と「安心」が漂う1年でした。


10年越しに届いた、一本の電話

A先生のことは、小学校を卒業してから、長いあいだ思い出すこともありませんでした。

中学、高校、大学。
進む先々で、私はA先生に連絡を取ることもありませんでした。
おそらく先生も、私がどこの学校に進んだかを知る機会はなかったと思います。

私は教員を目指していたので、教育学部に進み、4年間の学びを経て、教員採用試験に合格しました。
赴任先が決まったとき、地元の新聞に名前が掲載されました。

そして、ある日。
家に、A先生から電話がかかってきたそうです。

私はそのとき不在で、電話を受けたのは母でした。
後で母から、「あの先生から電話があったよ」と聞かされました。

新聞でyasuさんの名前を見つけて、自分のことのように嬉しい。
そんな言葉を、母経由で受け取りました。

10年。
それだけの月日が経っていたのに、A先生は私のことを覚えていてくれた。
新聞のひと欄に小さく載った名前を、見逃さずに見つけてくれた。
そして、わざわざ電話をかけてくれた。

直接お話しすることはできませんでした。
でも、その「直接話せなかった」という距離感が、A先生らしいなあと、今は思います。
派手に祝うわけでもなく、再会の場を求めるわけでもなく、ただ「嬉しい」とだけ伝えてくれた。
あの掃除時間の、ふらっと現れる先生のままでした。


先輩の家で過ごした、夜のレクチャー

時は流れて、私は小学校の教員になりました。

教員生活の中で、ICTに深く関わるようになっていく大きなきっかけが、ある先輩の先生との出会いでした。

50近いベテランの男性の先生。
パソコンやネットワークの知識がとても豊富で、当時から「あの先生に聞けばわかる」と頼られる存在でした。

その先輩の家に、3、4人の同僚と一緒に、夜、定期的に通うようになりました。
週に1回だったか、月に1回だったか、もう正確には覚えていません。

先輩の自宅の一室で、ICTに関する細かい話をじっくり教えていただく。
パソコンの仕組み、ネットワークの考え方、こんなときはこう使うといい。
実践的で、それでいて根っこから理解できる、丁寧なレクチャーでした。


コーヒーを飲みながらの、他愛もない雑談

ただ、振り返ってみて、本当に大切だったのは、レクチャーそのものよりも、その「あと」だったような気がするのです。

学んだあと、先輩はいつもコーヒーをいれてくださいました。
湯気の立つマグカップを片手に、私たちは他愛もない話を始めるのです。

学校での出来事。
担任している子どものこと。
日々感じている小さな疑問。
うまくいかなかった授業。
新しく試してみたいアイデア。

ICTの話から脱線して、教育の話、人生の話へと自然に流れていく。
先輩は、特別な答えをくれるわけではありません。
ただ、柔らかい口調で「うん、うん」と聞いてくださる。
ときどき、ぽつりと一言だけ、心に残る言葉を返してくださる。

その時間が、なんとも心地よかったのです。

技術は、本を読めば独学でも身につけられます。
でも、その技術を「現場でどう活かすか」「何のために使うか」。
その視点は、こうした雑談の中でこそ、染み込んでいくものだったのだと思います。

先輩の家の、夜のリビング。
コーヒーの香り。
仲間の笑い声。
あの時間が、私の「学び方」の原点になっています。


二人に共通していた、“静かな温かさ”

A先生と、先輩の先生。
時代も場面も、性別も世代もまったく違う二人なのに、振り返ると、不思議と共通する何かがありました。

派手ではない。
熱く語るわけでもない。
威圧的に何かを押しつけることもない。

ただ、淡々と、温かい。

担任の仕事は、実は威圧的に進める人のほうが多いものです。
学級をまとめるために、声を張る、ルールで縛る、規律で動かす。
そういうやり方は、たしかに即効性があります。

でも、A先生も、先輩の先生も、そうではありませんでした。
柔らかい口調のままで、子どもたちが、あるいは後輩たちが、自然とその人のところに集まってくる。
笑顔が交わされる。
信頼が積み重なっていく。

子どものころは、そこまで深く考えていませんでした。
でも今、自分が33年の教員生活を終えて振り返ってみると、はっきりとわかります。

あの「静かな温かさ」の裏には、ぶれない軸があったのだと。

優しいだけでは、人はついてきません。
温かいだけでは、子どもは育ちません。

柔らかい口調の奥に、何があるのか。
何を大切にしているのか、何を譲らないのか。
自分の中にちゃんと持っていなければ、あの佇まいは生まれない。

私は教員時代、自分もそうでありたいと思いながら歩んできました。
新米のころは、何もわからず突き進んだ時期もあります。
でも、最終的に大切にしたかった姿は、間違いなくあの二人から受け取ったものでした。

そして今、夫婦でWAYを営みながら、「じっくり聴きます、伝えます」というスローガンを掲げているのも。
振り返ってみれば、あの掃除時間にふらっと現れる先生 そしてコーヒーをいれてくれた先輩の姿が、私の中に流れているからなのだと思います。


次回予告……推進役となった日々

二人の師から受け取ったものを胸に、私は教員として歩み続けました。

そしてある日、新しく赴任してこられた校長先生からの声がけがきっかけで ICTの推進役という大きな役割を任されることになります。

市の指定が、なぜか県の指定に飛び越えた。
そんな少し不思議な出来事から始まる、推進役としての日々。

次回は、その「走り続けた時間」を振り返ります。


結び

掃除時間に、ふらっと現れる先生。
コーヒーをいれてくれた、夜の先輩。

どちらも、私の中に静かに流れている人たちです。

人は、誰かから受け取ったものを、また別の誰かに渡していく生き物なのかもしれません。
私が今、AIを「相棒」と呼びながら、子どもたちに関わる大人の方々に、何かを届けようとしているのも。
きっと、こうして渡していくバトンの、ささやかな一区間なのだと思います。

あなたにも、振り返ってみると「あの人の影響を、今も受けているなあ」と感じる方はいませんか。
よかったら、コメントで教えてください。
私たちの“源流”を、ゆるやかに交換できたら嬉しいです。

それでは、また次回。
火曜日にお会いしましょう。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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なぜ私は、AIをこんなにも自然に「相棒」として迎え入れられているのだろう。
なぜ「テクノロジーと人間らしさの両立」を、これほど大切にしたいと思うのだろう。

4回にわたって、私の道のりを少しずつ言葉にしています。
テクノロジーとの出会い、二人の師との出会い、推進役として走った日々 そして、現在のWAYに至るまでを語ります。


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