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『クリスマスの約束』が戻ってくる。約束は続いていた、と思った。

 テレビ番組が、終わりを告げずに、そのままなくなってしまうことは少なくない。それは、人を集める種類の番組であれば、2020年のコロナ禍以来、「密」を避けるために延期になったりしているうちに消滅しても不自然ではない。

 電車に乗るために駅に行き、乗り換えて、ホームから線路をはさんで、向こう側にある大きい広告、確かビルボード、という名前もついていたのだけど、普段はビールのことなどを告げているから、見えたとしても、ぼんやりと眺めるくらいだったのだけど、その時は、ある番組のことが告げられていたから気持ちが留まった。

 それは、コロナ禍以来、人が集まるのが難しくなり、そのまま消えてしまったと思っていた番組だったのだけど、小田和正の歌う顔が大きく映っていて、そこに『クリスマスの約束』とあった。

 あ、戻ってくるんだ。約束が続いているんだ、と思った。


オフコースと小田和正

 小田和正、という名前はもちろん知っていて、自分にとっては最初は、オフコースだった。それほど音楽に詳しくない自分でも、「さよなら」のヒットで知った。

 その楽曲の質が高いのも嫌でもわかったし、何より小田和正の声がすごかった。ただ、当時の自分にとっては、少し敷居が高いというか、男女交際も充実しているような人間が聴くような音楽だとも思っていた。

 そののち、オフコースは本当に大ヒットを連発し、だけど、テレビなどに出ることはほとんどなかったが、気がついたら、メンバーが減り、そして解散した。それは、ノンフィクションの作品となるような注目されるようなことでもあった。

 その作品を書いたのが、「ナンバー」で注目されていたスポーツのノンフィクションを変えたと思っていた山際淳司だったから、「ナンバー」を欠かさず読むようになり、自分も書いてみたいと思うようになっていたから、より関心が持てた。

 その頃、私よりも音楽に詳しく、また音楽業界への知識がある同世代の人間もたくさんいて、そして、そうした業界の噂話のようなものにも詳しいし、今から考えたら、それほど確かな根拠があるわけでもないのだろうけれど、オフコースの解散については、そうした人間が、いろいろなことを教えてくれた。

 オフコースの解散は、何しろ最初のメンバーの小田和正と、鈴木康博の不仲が原因だったと聞かされたが、ただ事実としてオフコースが解散する前に、鈴木が脱退していたから、それは当然のことだった。

 ただ、そうした話を教えてくれた友人は、初期のオフコースだと「鈴木派」で、そちらの楽曲を支持していた人間だったから、小田和正に対して、批判的だった。

 確かに、その後、雑誌などで、たとえば北野武が語る小田和正は、あの北野武を初対面で「たけし!」と呼び捨てにするような、今で言えばマウンティングをするような人物で、その風貌や、歌詞から推測すると、かなり強気な、もっと邪推すれば意地悪といえる人ではないかと思っていた。

 ソロになってからも、確実に音楽的な質は高いままで、何よりいくつになっても、声が衰えないイメージがあった。

 よく知らないし、ファンの人から見たら、申し訳ないのだけど、すごいのはわかっていても、そんなふうなぼんやりした印象しかなかった。ただ、そうした人間にも小田和正の音楽は届いていた。

『クリスマスの約束』 最初の放送と、過去の記憶

 この「クリスマスの約束」が始まったのは2001年だった。

 そんなに年数まではっきりと覚えているわけではないが、(記録などを検索して、改めて知った)その最初の放送のことは、かなり鮮明に覚えている。ただ、もしかしたら、思い出す回数が少なくないことで、自分の記憶の中で実際とはかたちを変えてしまっている可能性もあるけれど、初回の放送を見たときは、ほとんど見ることができない貴重なものを、見せてくれたと思っていた。

 まず、小田和正が中心になった音楽番組、というのが珍しかった、というよりも、初めて見た気がした。

 さらには、これまでとは違う音楽番組にしたい、という小田和正の意図は、あまりうまく伝わっていないように思えた。何しろ、それまでテレビにほとんど出ていないのが小田和正だったはずだ。

 小田が出て欲しい7人のミュージシャンに向けて、それぞれの一曲を選んで、一緒に歌うことを依頼していく過程もスムーズに行かないように見えた。それは小田だけの責任ではなく、ミュージシャン側の、テレビメディアへの不信感のようなものもあるように思えていた。

 そして結局は、最初の放送には、小田和正以外には、ミュージシャンは誰も出演しない番組になった。

 ただ、最初の放送で、小田の出演依頼の手紙に対して、山下達郎からの返信が小田自身によって読み上げられる場面があった。読む前に小田自身から、犬猿の仲だったと思う、といったことなどが語られた後、手紙が読まれた。

 これまでの小田に対しての思い。オフコースの頃もライバル視していたこと。「クリスマスイブ」も、オフコースへの意識が強かったこと。ミュージシャンとしての敬意もあるし、年齢を重ねるにつれて、小田への思いが変わってきたこと。そして、今回の出演依頼を断ったことも、山下達郎が、これまでテレビ出演をしてこなかったから、無理だと明確に伝えたこと。

 もしかしたら、詳細は違っているのかもしれないけれど、テレビを見ているただの視聴者にとっても、とても心がこもった丁寧な手紙に思えた。

 もちろん、小田も事前に読んでいるのだろうけれど、改めてテレビという場所で読み上げている姿は、心が柔らかくなっていくというか、人が少し変わっていく瞬間を見せてくれたような気がした。それに、小田自身が、やや冗談混じりながら、憎しみ合ってたような時もあった、と語れたことで、何か呪いのようなものが解けていくように見えた。そして、小田は山下達郎の「クリスマスイブ」を歌った。

 この放送を実現した小田和正や、スタッフはすごいと思った。

 そして、その最初の放送は、小田和正の今の心境が、この手紙朗読の場面も含めて、率直に表現されていることが伝わったのか、翌年の次の放送からは多くのミュージシャンが参加するようになり、いつの間にか、クリスマスの恒例の音楽番組になっていった。

 小田和正はすでに50代になっていた頃に、ライブを続けることによって、声が出るようになったというようなことを、この番組で語るようになり、それは奇跡的なことのようにも思えた。

 公開収録だから、一度は行きたいと思っていたのだけど、その頃は自分自身も介護生活が続いていたし、その応募の告知も不定期でわずかの期間しかされないせいもあって、申し込むこと自体もできないままだった。一度申し込めるチャンスがあった時は、自分たちにとって、少し遠方で、難しいと思ってしまった。

 それでも、いつかは、と思ってはいたものの気がついたら、その放送がない年があった。

 番組の公式ホームページによると、今回放送されない理由については《小田さんと番組スタッフでミーティングを重ねてきました結果》と抽象的な説明に終始している。
「2020年も放送がなかったのですが、新型コロナウイルスの影響を鑑みてのものでした。ただ、2021年は放送しているので、今回はコロナの影響とは考えづらいですね」(同・テレビ誌ライター)

(『週刊女性PRIME』より)

 そして、2023年も放送がなくて、もしかしたら、このままなくなってしまうのかもしれないと思っていた。それも、ここまでこれだけの番組を続けてくれたのだから、仕方がないとも感じていた。

クリスマスの約束 2024

 とても勝手なことだし、小田和正や相手の気持ちもあるから、視聴者としての勝手な思いに違いないのだけど、もし最終回が来るのであれば、初期のオフコースが見られるのかもしれないとも思っていたが、考えたら、小田和正は、もう70歳を超えていて、それで、あの歌声なのだから、それだけで、それこそ奇跡的なことだし、この番組が始まってから、20年以上が経つのだから、その間に色々な変化もあった。

 時代をつくったようなミュージシャンも、何人も世を去ったけれど、それは20年という時間の長さを考えたら当たり前で、今も小田和正が、昔と変わらないように歌っていることだけで実は信じられないような出来事なので、いつまでも続けられるわけもないのに、いつの間にか、放送して当たり前のような気持ちになっていた。

 それは視聴者のごう慢というか、怠慢だったとも思う。

 だから、また「クリスマスの約束」を放送するのを駅で知った時は、なんだかすごいと思ったし、その後にどうやら、これで最後らしいけれど、なんとなく終わることをしないだけでも、きちんと約束を果たしてくれているように思えた。

 そういえば、「クリスマスの約束」の「約束」ってなんだったのか、確か、最初の放送で語られていた記憶もあったのだけど、こうした記事↑で、書いてくれていて、改めて思い出した。

 それは、出演依頼したミュージシャンに断られたとしても、自分一人でもその歌を歌う、というのが「クリスマスの約束」だった。

 だからすでに約束は果たされているはずだし、この番組が進むたびに、小田自身が、“本当は一回限りで終わるはずだった”というのも本当だったんだと確認できた。

 ただ、長く続いていると、小田和正が思うような音楽番組を1年に一回届ける、ということが、「クリスマスの約束」であると勝手に思ってしまっていたことに気がついた。

 だから、2年続けて放送しなくなって、このまま終わってしまうときに、そのこちらでつくりあげた勝手な約束のことも思ったが、でも、今回で最後にしても、なし崩しではなく、もうこれで終わることを、約束するのだと思った。 

 実はとてもすごいことを、20年にわたって、目撃できたのだと思っている。


 最後も見ます。


(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。

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