「パンは、はやい」。
少し久しぶりに、妻が好きだと言っていたファミリーマートのクリームパンを買ってきた。
ただ、その前に、他のお菓子もあったので、その方が先に食べるのかな、と思いながら、おやつスケジュールの話をしていたら、妻がそこそこ力をこめて、言った。
「パンは、はやいから」。
パンの賞味期限
それで、他のお菓子よりも先に、クリームパンを食べることになって、それは、やっぱりおいしくて、妻も喜んでくれてよかったのだけど、パンの早さについては、それほど意識してなかったので、そのことを確かめた。
妻は、どうしてそういうことを聞くのだろうか?といった感じで、ごく普通に答えてくれた。
「え、食パンを買うとき、その賞味期限を見て、パンは早いんだな、と思ってて。
だから、うちでは、すぐに使わないときは、食パンを買ってきて、すぐに冷凍する。
鮮度が命。
袋入りの菓子パンは、やっぱり保存料が入っていると思うけれど、本格的なパン屋さんだったら、そういうパンでも、早いでしょ?」。
パン屋での会話
それで、思い出したのが、近所に一軒だけある「天然酵母」のパン屋さんでの会話だった。
やっぱり値段が高めだから、いつも購入することはできないけれど、出かけた時の帰りに寄って、いくつか選んで買っていくことがある。
そのとき、もしかしたら、今日は食べないかも、などと思って、聞いたことがあった。
「このパンは、明日でも大丈夫でしょうか?」
そこは夫婦二人でパン作りからおこなっていると言われているのだけど、女性のスタッフが、少し言いにくそうに、教えてくれた。
「…明日でも、大丈夫ですが、それで傷むようなことはないのですが、…やはり、味の方がちょっと…」。
それは、こちらが、どちらかといえば野蛮で、考えたら、自分が作った食べ物だったら、できるだけ美味しい状態で食べてほしい、という当たり前の気持ちがあって、それが戸惑いのような気配になっているのかもしれない、と思った。
確かにそうだった。
そんなパン屋での会話も思いだし、パンも、当然だけど食べ物で、新鮮さが大事なのはわかっていて、それはこれまでも、私でも何百回も聞いてきたことだったのに、どうして「パンは、はやい」と聞いて、意外に思ってしまったのだろう。
「煮物は、足がはやい」というのは、よく知っているはずなのに。
(今は、こうしたこと↑は常識になっているようだ)。
昔の食パン
今は、すっかり見なくなってしまったのだけど、昭和の時代には、食パンに青いカビが生えているのを見た記憶がある。
それは、例えば、棚や、冷蔵庫のすみで、その存在を忘れられていて、随分と時間が経ってしまった証拠で、そのカビが生えていても、「青かびなら、大丈夫」などと言って、そのカビの部分を削り取って、あとは、「焼けば消毒」などと言って、食べていた人も、確かに存在した。
さらに言えば、食パンを食べるときに、しっとり、という食感ではなく、パサパサ、というような感触を感じることも少なくなく、だからなのか、とにかくトーストをして、マーガリンや、ジャムの必要性が高かったのかもしれない。
それは、自分の勝手なイメージに過ぎないのだけど、常温保存ができて、スーパーなどで購入すると、一応は、密閉された袋に入っているから、何か少しお腹が空いた時には、手軽に食べられるものとして、わりと、食卓付近に存在していた。
その印象があるから、もしかしたら、パンは、もちがいい、といった間違った記憶につながっている可能性がある。
賞味期限
今は、当たり前になった食品の「賞味期限」も、それほど昔のことではないのを確認した。
期限表示が始まったのは、今から26年前の平成7年(1995年)でした。
それまで表示されていた製造年月日に替えて、期限表示(賞味期限又は消費期限)が採用されました。
今でも製造年月日は任意で併記することができます。
こうした記事によると、「賞味期限表示」は、1995年に始まったのだから、その頃、すでに大人だった自分にとっては、「あとからやってきた習慣」ということになる。
その後、それほど体に自信がないせいもあって、「賞味期限」や「消費期限」には、かなり敏感になっていたはずなのに、パンについては、「賞味期限」を守ればいい、くらいのゆるい見方になっているのは、やはり、「賞味期限」以前の習慣が、どこかで残っているせいかもしれない。
「パンは、はやい」。
そんな妻の言葉で、自分の変わっていない意識のようなものに気がつかされた、と思う。
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