推しと付き合ったけど、最後は“出禁”で終わった話。#1
推しを見るために生きていた
当時のわたしは、たぶん、
どこにでもいるメンズ地下アイドルのオタクだった。
平日の夜はライブハウスにいて、休日は昼夜で別の会場を回って、終電の時間だけを気にしながら生きていた。社会人なのに、生活の中心は完全に“推し”だったと思う。
推していたのは5人組のグループで、ファンは30人くらい。多くも少なくもない、メン地下としては普通くらいの規模だった。
その中で、わたしの推しは1番人気だった。
ここでは、Sと呼ぶことにする。
ライブハウスに入ると、いつもの匂いがした。
入口付近にはいつものオタクたちがいて、最前管理がいて、フロアではもうキンブレが光っている。
それを見ると安心した。
「ああ、今日もここに来れた」
って思っていた。
今考えるとかなり変だけど、当時のわたしにとって、ライブハウスは家より“帰ってきた感”がある場所だった。
もちろん特典会にも毎回参加していた。
ツーショットチェキは1枚1000円。
冷静に考えれば全然安くない。
でもライブ終わりって、感情がバグっている。
好きな曲を聴いて、好きな顔を見て、アドレナリンが出たまま列に並ぶから、お金の感覚がおかしくなる。
1〜4枚だとループできなかった。
だからわたしは毎回5枚ずつ買っていた。
1日40枚とか45枚とか。
文字にすると普通に怖い。
でも当時は本当に、「今日はあんまり使ってないな」くらいの感覚だった。
Sは人気メンバーだったから、特典会の列もいつも長かった。
それでもわたしは、その時間が嫌いじゃなかった。
順番が近づくたびに少し緊張して、チェキを撮って、2分だけ話して、また最後尾へ並び直す。
あの頃のわたしは、恋をしていたわけじゃない。
ただ、アイドルとしてのSを見るのが好きだった。
顔が好きだったし、ステージで笑うタイミングも、レスの仕方も、マイクの持ち方も好きだった。
歌って踊っているSを見るために、わたしはライブへ通っていた。
だからその頃はまだ、思ってもいなかった。
まさか自分が、“推しに告白される側”になるなんて。
