260417 聖人たち
今日のプレイ・リストから 544
"Saints"
ジェニファー・ウォルトン
ポップ/R&B/ジャズ
曲は少しふざけたような感じの、ぼやけた電子音から始まります。医療機器のデジタル音をサンプリングしたものだそうです。異常を知らせるアラームのように切迫した音ではないから、心音や呼吸音などの生体情報をモニターするためのものでしょうか。
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レイブ・バンド、オーパスⅢのメンバーだったナイジェル・ウォルトンは2018年に末期ガンと診断されました。その時、ジェニファー・ウォルトンは、インディー・ポップ・バンド、ケロ・ケロ・ボニートのライヴ・ドラマーとしてアメリカをツアーしていました。
JFK空港に隣接するホテルに滞在している時、娘は国際電話で父の病気を知りました。身動きの取れないツアー先で、最愛の父が死と向き合う病に侵されたという知らせが届いたのです。どれほど絶望したか、想像するに余りあります。その時の気持ちを"Miss American"という歌にしています。
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闘病は5年続き、2022年に最期を迎えました。父を何度も治験の病院へ連れて行き、家族は何時間も病院の廊下で待たされます。娘は輸血もしたようですが、今となっては両掌を固く組んで聖人たちに祈るしかありません。もっと時間を与えてくださいと。
Machines play their unwavering tune of impeding doom
機器は、目の前に迫った死の旋律をためらうことなく演奏する
その時、響いていた生命維持装置などの音が「死の旋律」に聴こえました。何かに強く心を奪われた時、直接関係のない些細なことも含めて、記憶の底にありありとこびりつくことがあります。そんな「閃光記憶」は一瞬で起こるものだと思っていましたが、何時間も続く残酷な例もあると本曲で知りました。
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あれから数年経ちました。娘はようやく父の死を振り返ります。今やっと、「娘はいつまでも父の娘だ」と話せるようになりました。しかし、そう語れるということは、すでに「娘」ではなくなっているのではないでしょうか。地図が二つに引き裂かれ、はだしの足はどんなに血を流したとしても歩いていくしかない。
"Daughters"という曲の悲しみを、ボクはそんなふうに受け止めました。2024年、娘はこの3曲を含む9曲を"Daughters"と名付けたアルバムにしました。ジャケット写真は、父が大切にしていたクッションの上に、衝動的に切った娘の三つ編みのおさげが置かれています。
