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光で削り、光で溶かし、光で"割る" ― レーザー加工の仕組みと、それを極める7社



金属の板を、刃物を一切当てずに切る。部品どうしを、こてを使わずに溶かしてつなぐ。半導体のウェハを、表面に傷一つつけずに内部から割る。これらをすべて担っているのが、一筋の「光」です。今回取り上げるのは、レーザー加工です。

火花で金属を削る放電加工と並んで、レーザー加工は「工具が触れない加工」の代表格です。刃物も金型も使わないため摩耗や交換がなく、複雑な形にも柔軟に対応できます。近年は、効率が高くメンテナンスも軽いファイバーレーザーが急速に普及し、板金切断の現場を置き換えつつあります。その一方で、髪の毛よりはるかに細い穴を脆い材料に開けたり、原子レベルの回路を焼き付ける半導体製造を支えたりと、微細化と高出力化という正反対の方向にも進化を続けています。今まさに、もっとも動きの大きい加工分野の一つと言えるでしょう。

この記事では、レーザーがなぜ光で金属を加工できるのか、その原理から始めます。そして「波長(色)によって得意な材料が変わる」というレーザーの本質、「熱を出さずに削る」超短パルスという発想、さらに「切らずに割る」「溶かさず抜く」という常識を裏返す加工までをていねいに解きほぐします。最後に、それぞれに際立った強みを持つ国内外7社を紹介します。

1. レーザー加工とは ― 光を集めて削る・溶かす

レーザー加工の原理は、意外なほど身近なものにたとえられます。虫眼鏡で太陽の光を一点に集めると、紙が焦げて煙が上がります。あれと同じで、レーザー加工はレンズで光のエネルギーを微小な一点に集め、その熱で材料を溶かし、蒸発させて加工します。集光されたスポットはおよそ直径0.1mmほどにまで絞られ、そこに非常に高いエネルギーが集中します。

ただし、レーザー光はただの光ではありません。「LASER」は Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)の頭文字をつないだ言葉です。波長(色)がそろい、進む方向もそろい、波の山と谷のタイミングまでそろった、きわめて統制のとれた光です。だからこそ一点に鋭く集光でき、加工に使えるほどのエネルギー密度を生み出せます。太陽光や電球の光をいくら集めても金属が切れないのは、光がてんでばらばらだからです。

この「光で加工する」方式には、ものづくり上の大きな利点があります。第一に、工具が物体に触れません。ドリルやフライス、金型のように摩耗したり欠けたりする刃物がないため、交換の手間もコストもかかりません。第二に、非接触だからこそ、加工で生じる力(切削抵抗)が原理的にほぼゼロです。力を加えると壊れてしまうような繊細な部品や薄い材料も扱えます。第三に、光は瞬時に向きを変えられるため、複雑な輪郭でも高速になぞれます。

もちろん万能ではありません。レーザー加工は基本的に「熱で溶かす」加工なので、熱の影響を受けた層(熱影響部)が縁に残ったり、光をよく反射する銅やアルミのような材料が苦手だったりします。これらの弱点を、レーザーの種類や使い方の工夫でどう乗り越えていくか。そこにこそ、技術の進歩と各社の知恵が表れます。次の章から、その核心に入っていきます。

2. 「色」で得意な材料が変わる ― レーザーの種類

レーザー加工を理解する上で、最初の関門であり、最大の面白さでもあるのが「波長」です。結論から言えば、レーザーは波長(色)によって得意な材料がまるで変わります。同じ「光で加工する」でも、何色の光かによって、よく効く相手とまったく歯が立たない相手が分かれるのです。

なぜそうなるのか。物質には、それぞれ「吸収しやすい光の波長」と「吸収せず透過したり反射したりする波長」があります。加工とは光のエネルギーを材料に吸わせることですから、材料がよく吸収する波長の光を当てなければ、効率よく加工できません。レーザー加工機の主な種類を、波長とともに見ていきましょう。

CO₂レーザーは、二酸化炭素ガスを使うガスレーザーで、波長は約10,600nm(10.6μm)の赤外光です。この波長は木材・アクリル・紙・革・ガラスといった非金属によく吸収されるため、これらの切断や彫刻を得意とします。古くから普及した方式で、高出力タイプなら金属の切断にも使われます。

YAGレーザーは、イットリウム・アルミニウム・ガーネットという結晶を使う固体レーザーで、波長は約1,064nmの近赤外光です。CO₂より波長が約10分の1短く、金属への吸収率が高いのが特徴です。光ファイバーで伝送できるため取り回しがよく、溶接やマーキングに使われ、薄い材料でも歪みの少ない仕上がりが得られます。

ファイバーレーザーは、光ファイバー自体を増幅の場とする方式で、波長は1,090nm前後です。エネルギー変換効率が非常に高く、ガスが不要で、メンテナンスの手間も少ないという強みがあります。消費電力はYAGの10分の1以下ともされ、大量生産に向きます。さらに、従来は苦手とされた銅や真鍮といった高反射材も切断できるようになり、今や板金切断の主役としてCO₂レーザーを置き換えつつあります。レーザー加工の世界でここ十数年に起きた最も大きな変化が、このファイバーレーザーへの移行です。

UVレーザーは、近赤外の基本波長(1,064nm)を3分の1の355nmまで短くした紫外光です。波長が短いほど光は小さく絞れ、また多くの材料に吸収されやすくなります。UVレーザーは各種素材への吸収率が非常に高く、熱の影響をほとんど与えずに加工できるため、その加工は「コールドマーキング」とも呼ばれます。製品にダメージを与えたくない精密な印字や微細加工で活躍します。

ここで一つ、発見を加えておきます。EV化で需要が高まる電池では、銅の端子を溶接する場面が増えています。ところが銅は赤外のレーザー光をよく反射してしまい、従来のレーザーでは安定して溶接するのが難しい材料でした。

そこで登場したのが、波長515nm前後のグリーン(緑色)レーザーです。銅は緑色の光をよく吸収するため、グリーンレーザーを使うと、飛び散り(スパッター)を抑えて銅を高品位に溶接できます。「赤い光は弾くが、緑の光は吸う」という銅の性質を逆手に取った技術で、まさに波長を選ぶことの威力を示す好例です。

そして波長の極致が、半導体製造で使われるEUV(極端紫外線)です。その波長はわずか13.5nm。ここまで短い光を使えば、原子の世界に近づくほど微細な回路をシリコンの上に焼き付けられます。これがどう生み出されているかは、後ほど企業の章で詳しく触れますが、レーザー加工の世界が「波長をどこまで短くできるか」という競争でもあることが見えてきます。

3. 何ができるのか ― 切る・溶かす・あける・印す

レーザーは、光の当て方を変えることで実にさまざまな加工に姿を変えます。代表的なものを整理しておきましょう。

最も身近なのが切断です。集光したレーザーで材料を溶かし、同時に吹きつけるガス(アシストガス)で溶けた金属を吹き飛ばして切り進みます。板金加工の主役であり、複雑な輪郭でも金型なしで高速に切り出せるのが強みです。

溶接も大きな用途です。接合したい部分にレーザーを当てて溶かし、冷えて固まることでつなぎます。エネルギーを一点に集中できるため、深く細い溶け込みが得られ、薄い材料でも歪みや焼けが少なく、高速に接合できます。先ほど触れた銅のグリーンレーザー溶接も、この応用です。

穴あけでは、微細な穴を高速に大量に開けられます。後で述べるプリント基板の極小の穴(ビア)は、その代表例です。マーキングは、製品の表面に文字や記号、二次元コードなどを刻む加工で、非接触ゆえに摩耗せず、消えにくい印字ができるため、製品のトレーサビリティ(追跡管理)を支えています。

さらに、レーザーは表面の加工にも使われます。錆や塗装を剥がす「レーザークリーニング」は、薬品やブラストを使わずに表面をきれいにする方法として注目されています。表面に微細な凹凸の模様をつけて機能を持たせる加工(テクスチャリング)もあります。

加えて、近年存在感を増しているのが金属3Dプリンティング(積層造形)です。金属の粉末にレーザーを当てて少しずつ溶かし固め、層を積み重ねて立体を作る技術で、削り出しでは不可能な中空構造や複雑形状を一体で作れます。「削る」「つなぐ」だけでなく「盛る」加工までレーザーが担うようになってきたわけです。

4. "熱を出さない"レーザー ― 超短パルスとアブレーション

第1章で、レーザー加工は基本的に「熱で溶かす」加工であり、熱の影響が縁に残ると述べました。ところが、その常識を覆す加工があります。超短パルスレーザーです。ここがこの記事のいちばんの"そうだったのか"ポイントかもしれません。

レーザーには、光を出しっぱなしにする連続発振(CW)と、ごく短い時間だけ光を「パッ、パッ」と区切って出すパルス発振があります。このパルスの一発の長さ(パルス幅)を極限まで短くしたものが超短パルスレーザーです。パルス幅によって、ナノ秒レーザー(10億分の1秒)、ピコ秒レーザー(1兆分の1秒)、フェムト秒レーザー(1000兆分の1秒)などと呼ばれます。フェムト秒がどれほど短いか、ぴんとこないかもしれません。1フェムト秒は、光が髪の毛の太さほどしか進めない、それほど短い時間です。

なぜ、こんなに短くするのでしょうか。鍵は「熱が伝わる速さ」との競争にあります。通常のレーザー加工では、当たった部分が熱せられ、その熱が周囲に伝わっていくため、狙った場所の周りまで溶けたり変質したりします。ところが超短パルスレーザーでは、熱が周囲に伝わるよりも速く加工が終わってしまいます。一瞬で高いエネルギーを叩き込むと、材料は溶ける間もなく、原子レベルで結合を断ち切られて飛び散ります。この現象を「アブレーション」と呼びます。溶かすのではなく、いわば直接はぎ取るのです。

熱が広がらないため、加工した縁にバリ(ささくれ)や焼け、微小なひび割れがほとんど残りません。「冷たいまま削る」ことから、コールドアブレーション(非熱加工)とも呼ばれます。この高品位さが効いてくるのが、熱に弱く割れやすい材料です。セラミックス、ガラス、シリコン、薄いフィルムといった脆くて繊細な材料も、超短パルスレーザーなら欠けやひびを抑えて高精度に加工できます。

電子機器や半導体の小型化が進み、ミクロン単位の加工で熱の影響を避けたいという要求が高まる中で、超短パルスレーザーの存在感は飛躍的に増しています。穴あけ、切断、トリミング、表面の微細加工まで、「熱を出さない」という武器が、これまで難しかった加工を次々と可能にしているのです。

5. 「切らずに割る」「溶かさず抜く」 ― レーザーが広げる加工の新常識

波長によって材料の吸収・透過が変わる、という第2章の話を覚えているでしょうか。これを巧みに利用すると、直感に反する加工が可能になります。レーザーが切り開いた、二つの新常識を紹介します。

一つ目は、「切らずに割る」という発想です。半導体のウェハ(シリコンなどの薄い円板)から、無数の小さなチップを切り出す工程をダイシングと呼びます。従来は回転する砥石の刃で切っていましたが、ここに革新的な手法が登場しました。ステルスダイシングと呼ばれる技術です。

その仕組みはこうです。シリコンを透過する波長のレーザーを選び、ウェハの表面ではなく内部に焦点を合わせて集光します。すると、表面は素通りしながら内部の一点だけにエネルギーが集まり、そこに「改質層」という、結晶の並びが乱れたもろい層が形成されます。表面には傷一つつきません。こうして分割したい線に沿って内部に改質層を作っておき、最後にウェハを貼ったテープを四方に引っ張ると、内部のもろい層を起点にひびが上下に伸び、チップがきれいに割れて分かれます。表面を一切削らずに、内部だけを加工して割る。削りかすが出ず、水も使わないドライな工程なので、力や汚れに弱いMEMS(微小な電子機械素子)のようなデリケートな部品の切り出しに向いています。切りしろのロスもほとんどなく、一枚のウェハから取れるチップの数を増やせます。

二つ目は、「溶かさず抜く」という発想です。スマートフォンやパソコンの基板には、層と層を電気的につなぐために、おびただしい数の微細な穴(ビア)が開けられています。プリント基板は主に、銅の配線層と、エポキシ樹脂やガラスでできた絶縁層が積み重なってできています。ここで、特定の層だけを狙って穴を開けたい、という難題が生じます。

ここでも波長の使い分けが効きます。波長9,400nm前後のCO₂レーザーは、エポキシ樹脂やガラスにはよく吸収されますが、銅には吸収されず反射されます。つまりCO₂レーザーを当てると、樹脂は除去できても銅のところで穴が止まります。銅を溶かさずに、樹脂だけをきれいに抜けるわけです。一方、波長355nmのUVレーザーは銅にも樹脂にも吸収されるため、銅箔そのものに開口を作れます。この二つを組み合わせ、UVレーザーで銅箔に窓を開け、CO₂レーザーで下の樹脂を抜く、といった具合に、材料ごとの吸収特性を逆手に取って、狙った形の穴を作り分けているのです。

「切る」とは刃を入れることだ、「穴を開ける」とは貫くことだ。そんな常識を、レーザーは波長という武器で軽やかに飛び越えています。

6. どこで使われているか ― 主な用途

ここまで見てきた多彩な加工は、私たちの暮らしのあらゆる場面を支えています。

最も身近なのは自動車と板金加工でしょう。車体やさまざまな金属部品の切断・溶接にレーザーが使われ、町工場の板金加工でも、人手不足を背景にレーザー加工機の導入が進んでいます。EVでは、電池の銅端子の接合にグリーンレーザーが活躍します。

半導体・電子部品は、レーザー加工がとりわけ深く関わる分野です。ウェハのダイシング、プリント基板の微細な穴あけ、製品へのマーキング、そして最先端チップを生むEUVリソグラフィまで、いくつもの工程がレーザーに支えられています。

このほか、医療分野では血管を広げるステントや超精密な器具の加工に、航空・宇宙分野では難削材の精密加工に、そして時計やアクセサリーといった装飾・日用品の加工やマーキングにも、レーザーは幅広く使われています。光を当てる、ただそれだけのことが、これほど多様なものづくりを陰で動かしているのです。

7. 注目企業7社

ここからは、レーザー加工の世界で際立った強みを持つ企業を紹介します。板金切断の国内最大手と世界の巨人、発振器からFAまでを束ねる企業、半導体の各工程を支える企業、超短パルスの専門企業、そして光源そのものを生み出す企業。「光をどうつくり、どう当てるか」をめぐって、各社がまったく異なる持ち場で技術を磨いているのが見えてきます。

株式会社アマダ(神奈川・伊勢原) ― 板金レーザー切断の国内最大手

アマダは、レーザー加工機をはじめとする板金加工機械のメーカーとして、国内で高い知名度を持つ存在です。レーザー切断機だけでなく、曲げ加工機、自動化装置までをそろえ、板金加工の全工程をトータルで提案できる点が大きな強みです。

同社は最新のファイバーレーザー加工機や、切断と他工程を組み合わせた複合加工機を展開し、導入支援からアフターサービスまで含めた包括的な体制で、ものづくりの現場を長期にわたって支えています。開発するすべての製品に対し、省エネルギー・省資源・再資源化などの観点から独自の環境アセスメントを実施しているのも特徴で、加工そのものの性能だけでなく、持続可能な生産という視点を製品づくりに織り込んでいます。一台の加工機を売って終わりではなく、現場全体の生産性をどう上げるかという発想で板金加工に向き合う、国内を代表する一社です。

トルンプ(ドイツ/日本法人) ― 産業用レーザー世界最大手の総合力

トルンプ(TRUMPF)は、ドイツに本社を置き、産業用レーザー技術で世界市場をリードする企業です。日本にも法人を構えています。レーザー装置から、光を導き形を整えるビーム伝送・成形の光学系まで、調和のとれたトータルシステムを提供し、切断・溶接・マーキング・表面加工のいずれにおいても高い精度と安定性を実現しています。重工業の堅牢な加工から、医療や時計産業の超精密加工まで、対応する幅の広さが際立ちます。

技術面で同社を象徴するのが、独自のディスクレーザーです。連続発振から超短パルスまでをカバーし、高いパルスエネルギーと高い平均出力を両立します。前章で触れた銅の溶接についても、グリーン波長を持つディスクレーザー「TruDisk」によって、材料表面の状態に左右されず、飛び散りなく高品質に銅を溶接できるとしています。

そして特筆すべきが、半導体製造の最先端を支えるEUVリソグラフィの光源です。半導体の回路はナノメートル単位まで微細化が進み、より短い波長の光でなければ焼き付けられない領域に入っています。トルンプは、露光装置で世界最大手のASML、光学のツァイスと長年にわたり協力し、波長13.5nmのEUV光を産業利用できる形で生み出す技術を確立しました。その方法は驚くべきものです。真空のチャンバー内で、錫の微小な液滴を毎秒5万個も射出し、その一つひとつにトルンプ製の高出力CO₂レーザーのパルスを当ててプラズマに変え、そこから出るEUV光を集めてウェハに導く、というものです。同社は2005年からこの開発に取り組んできたと説明しており、20年におよぶ長期投資を続けられるのは家族経営ならではだとしています。スマートフォンやパソコンの頭脳となる最先端チップは、その製造の根っこでこの技術に支えられているのです。

ファナック株式会社(山梨・忍野) ― 「光をつくって動かす」発振器とFAの統合

ファナックは、工作機械を制御するCNC(数値制御装置)や産業用ロボット、サーボモータで世界的に知られる、ファクトリーオートメーション(FA)の総合企業です。そのファナックが、レーザー加工の心臓部であるファイバーレーザーの発振器を自社開発している点に、同社ならではの強みがあります。

レーザー加工機は、光を生み出す発振器と、その光を当てる対象を正確に動かす機械・制御の両輪で成り立ちます。ファナックは、レーザー光をつくる発振器と、それを動かすCNCやロボット、サーボ技術を一つの企業の中に併せ持っています。「光をつくる」技術と「動かす」技術を自社で統合できるからこそ、レーザー加工をFAや自動化のシステムへとなめらかに組み込めます。発振器単体の供給から、ロボットと組み合わせた加工システムまで、ものづくりの自動化という文脈の中でレーザーを位置づけている一社です。

株式会社ディスコ(東京・大田) ― 半導体を「切らずに割る」ダイシングの雄

ディスコは、半導体や電子部品の製造に欠かせない、切る(ダイシング)・削る(グラインディング)・磨く(ポリッシング)の装置で世界をリードする企業です。もともとは1937年に「第一製砥所」として創業した、砥石づくりの会社でした。砥石で精密に切り削る技術を磨き込んできた同社が、レーザーによる加工へと領域を広げてきました。

その代表が、前章で詳しく述べたステルスダイシングです。ウェハ内部に改質層を作り、テープを引っ張って割るこの手法は、表裏面に傷をつけず、加工くずも出さず、水も使わないドライな工程です。負荷に弱いMEMSのような繊細なチップの切り出しに適し、切りしろを細くできるため一枚のウェハから取れるチップ数も増やせます。なお、ステルスダイシング技術の特許を体系的に保有するのは後述の浜松ホトニクスで、ディスコはそのアライアンスパートナーとしてこの技術を装置に実装しています。高輝度LED用のサファイアや、高周波デバイスに使われる化合物半導体など、従来の刃では難しかった材料の加工でも、レーザーの強みを発揮しています。砥石屋として培った「切る」の哲学を、光の時代へと受け継ぐ一社です。

ビアメカニクス株式会社(神奈川・海老名) ― 基板に「溶かさず抜く」微細ビア加工

ビアメカニクスは、プリント基板に微細な穴(ビア)を開ける加工機で世界の最先端を支える企業です。社名の「ビア」が、まさにその主戦場を物語っています。

前章で述べたとおり、同社のレーザー加工機は、CO₂レーザーとUVレーザーという波長の異なる光を巧みに使い分けます。エポキシ樹脂やガラスには吸収されるが銅には吸収されないCO₂レーザーで樹脂を抜き、銅にも吸収されるUVレーザーで銅箔に開口を作る。材料ごとの吸収特性を逆手に取って、信頼性が求められる車載基板や、通信インフラ・サーバ向け基板のビルドアップ層に、高い位置精度で穴を開けています。

同社はレーザーだけでなく、機械式のドリルで穴を開ける加工機も手がけます。基板の高密度化で穴はますます小さくなっており、同社はイギリスの子会社で開発した技術により、最大で毎分35万回転という業界最速とする回転数で、直径0.05mmという極小の穴あけを実現しているとしています。微細なドリルを折らずに高速で回す技術が、ここでものを言います。レーザーとドリルの両面から、電子機器の高密度化という時代の要請に応え続けている一社です。

東レ・プレシジョン株式会社(滋賀・大津) ― 微細孔を極めた超短パルス加工

東レ・プレシジョンは、東レの全額出資による精密加工の企業で、超短パルスレーザーを用いた精密な微細孔加工に強みを持ちます。同社の出自がユニークです。1955年の創業以来、合成繊維を作るための紡糸口金、つまり溶けた樹脂を細い穴から押し出して糸にする、その口金の微細な穴を作り続けてきました。化学繊維づくりの根幹にある「微細な穴をいかに精密に開けるか」という技術を、長年にわたり追求してきた会社なのです。

その蓄積の上に、同社はピコ秒・フェムト秒といった超短パルスレーザーを取り入れています。第4章で述べた非熱のアブレーション加工により、バリやマイクロクラックを抑えた高品位な微細孔を、難削材の金属やセラミックス、ガラス、シリコンといった加工の難しい材料にも実現できるとしています。さらに、独自のテーパー角制御によって、まっすぐな穴だけでなく、逆に広がる形の穴や、円ではない形状の穴まで、要望に応じて作り分けられる点も特徴です。近年は金属3Dプリンタやマイクロプレスなど他の微細加工技術も併せ持ち、半導体・医療・航空宇宙といった高精度が求められる分野に、最適な加工法を提案しています。繊維の口金から始まった微細孔の探求が、最先端のレーザー加工へとつながっている一社です。

浜松ホトニクス株式会社(静岡・浜松) ― 光そのものをつくる、加工の心臓

最後に紹介する浜松ホトニクスは、ここまでの各社とは少し立ち位置が異なります。レーザー加工機を作る会社というより、光そのものを生み出し、とらえる技術、すなわちフォトニクス(光産業技術)の世界的な企業です。光を電気信号に変える光電子増倍管に始まり、各種のレーザーや光源、光を検出するデバイスまで、「光をつくり、測る」技術を広く深く手がけています。

レーザー加工との関わりで象徴的なのが、前章・前項で触れたステルスダイシング技術の特許を体系的に保有していることです。ウェハを透過する波長のレーザーを内部に集光し、改質層を作って割るというこの発想の核心を、同社が技術として確立しました。ディスコをはじめとするパートナー企業が、その技術を装置に実装して半導体製造の現場に届けています。

加工機という目に見える形ではなくとも、その奥で「どんな光を、どうつくるか」を担う存在がいなければ、レーザー加工は成り立ちません。浜松ホトニクスは、レーザー加工の土台にある光技術そのものを支え、新しい加工の発想を生み出す源泉となっている一社です。光を当てる側ではなく、光をつくる側からものづくりを動かしている点で、この顔ぶれに欠かせない存在と言えるでしょう。

まとめ ― 「光をどう当てるか」という技術

レーザー加工は、統制のとれた光を一点に集め、その力で材料を削り、溶かし、ときに内部だけを変質させる技術です。そして何より、波長(色)を選ぶことで得意な材料を変え、パルスを極限まで短くすることで熱を出さずに加工し、吸収と透過の関係を逆手に取って「切らずに割る」「溶かさず抜く」を実現してきました。「光をどう当てるか」という一点に、これほど多彩な工夫が詰まっているのです。

赤い光は弾く銅も緑の光なら吸う。表面を素通りさせて内部だけを割る。樹脂は抜いても銅は残す。一つひとつの加工の裏側にある理屈を知ると、レーザー加工は「とにかく強い光で焼き切るもの」ではなく、材料と光の対話を緻密に設計する技術だと見えてきます。

板金切断の現場をファイバーレーザーが塗り替え、半導体の微細化をEUVが推し進め、脆い材料の加工を超短パルスが切り開く。レーザー加工が活躍する場面は、これからのものづくりでいよいよ広がっていくはずです。そして今回紹介した7社のように、板金を極める企業、世界の総合力で挑む企業、発振器とFAを束ねる企業、半導体の各工程を支える企業、微細孔を追い込む企業、そして光そのものをつくる企業が、それぞれの持ち場でこの技術を前へ進めています。次にスマートフォンやパソコンを手に取ったとき、その中の無数の部品が、目に見えない光の一閃によって形づくられてきたことに、少しだけ思いを巡らせていただければ幸いです。

みんなの技術広報では、紹介したい技術・企業を募集しています。自社の技術を取り上げてほしい方は、お声がけください。

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