今の大学生にAIが与える影響は?
2026年3月で電通大大学院は卒業し、博士号を取得できたが、先生のご厚意で今年もひきつづき研究室のゼミにゲスト参加させていただいている。
ゼミでの個人的興味の1つは、現在の高性能AI(LLM)が学生の行動にどのように影響を与えているかを観察することである。
このゼミでは、毎年この時期(年度前半)実施する、輪講というのがある。この輪講は、研究のオンボーディングとして画像処理や機械学習の理論テキストをメンバーで分担して互いにレクチャーするスタイル。1人あたり30~50枚程度のスライドを作ってレクチャーを担当する。
かつて私もやったことあるが、このスライドを作るのは、特にB4などの初学者にとっては、相当大変な作業である。テキストの内容をまず自分なりに理解しなければ、他者に説明できる資料を作れないからだ。計算式の展開など、内容のどこかが理解できなければ、参考文献を探し回ったりして調査することになる。AI登場以前はネット検索を駆使して探したり、図書館で探したりしていた。文献が見つかっても、こんどはその文献を読解して自分の探している答えにつなげないといけなかった。とにかく時間がかかるので、徹夜も当たり前という感じで対応していた。
今なら、この「テキストの内容を理解する」という部分にAIを活用すれば、飛躍的に生産性があがる。疑問をそのまま口語でAIにぶつければよいからだ。派生的な疑問などもAIと議論して深堀りできる。したがって、おなじ時間をかけてスライドを作るなら、より間違いが少なく、内容を深堀りした資料が作れる「はず」である。
・・・はずなのであるが、実際の学生さんが作ったスライドを
見ると、例年に比べてクオリティが特に上がった感じはないw.
ちょこちょこ誤りがあるし、「それは言い過ぎでっせ」「それはケースによるので断定できないよ」「前提条件を絞れはそうだけど、全称するのはおかしいよね」「前のほうのページで言っていたことと矛盾しているよ」みたいな不備・・・つまり例年のB4がやってしまうミスを同じようになぞっているのだ。
その理由の1つは「気づかない」こと。ベテランが見れば、
内容のおかしさに気づけるが、初学者は気づかない。気づかなければ、それをAIに質問することもないからだ。もちろん、これこそが輪講の教育的効果なのであるが、ゼミで発表するときに指摘されてはじめて気づくという、毎年見慣れた光景が今年も展開されている。
そして、これは私の邪推であるが、学生さんも当然AIを使っている(先生からも推奨されているし)が、
その効果を主に作業時間の短縮に振り向けていて、内容の向上には使ってないのではないだろうか。
つまり、AIを使って自分なりの理解に達する時間を短縮したり、スライド作成自体の時間は短縮するが、期限ギリギリまでクオリティを上げるためにAIを使って深堀りする、みたいな使い方はしていないように思える。むしろ、AIによってサクサクスライドが作れてしまうので、深く考えるチャンスを失っているようにも見えるのだ。・・・繰り返すがこれは邪推なので、真実かどうかは分からない。
この観察はまだサンプル数も少ないので、もう少し観察を続けてみようと思う。
