ネーミングバイアスの実験室①:“本格”の盾が壁に変わる瞬間
三軒茶屋を“クラフト焼酎を語る街”にしたい。
そんな無茶な仕掛けを本気で楽しんでる中の人です!
この記事で理解してもらいたい結論
「本格焼酎」という言葉は、もはや“誤解を生むブランド”になっているんじゃないかなぁ?
かつては誇りを取り戻すために生まれたこの言葉が、いまでは消費者の直感とズレを起こし、若い世代の共感を遠ざけているのかも?
時代が変われば、言葉もアップデートが必要だ。
「クラフト焼酎」という呼称こそ、次の時代を動かす言語になるのではないのか?
今回の記事では、「本格焼酎」という言葉の誕生背景と、現代の心理バイアスを行動経済学的に読み解いてみました。

言葉がブランドをつくり、ブランドが心理を動かす
行動経済学でいう“フレーミング効果”とは、同じ事実でも「どう言うか」で印象が変わる現象だ。
「乙類焼酎」より「本格焼酎」。
この呼称変更は、戦後の酒業界が行った壮大なリフレーミングだった。
戦後、酒税法で「甲類」「乙類」という分類が定められた。
名前の響きだけ見れば、「甲>乙」
この“ランク付け感”が蔵元たちのプライドを傷つけた。
そこで霧島酒造などの蔵が打ち出したのが「本格焼酎」という名称。
つまり、“本格”という言葉はもともと「誇りを取り戻すための盾」だったのだ。
言葉ひとつで印象は歪む
ここで、まったく別の例を出そう。
たとえば「無痛分娩」という言葉。
実際には“痛みを和らげる麻酔を使った出産”であり、決して“痛みゼロ”“無痛”ではない。
女性は皆、物凄いリスクを背負って出産してる訳です。
それでも「無痛」と名づけられた瞬間に、「楽をしている」と誤解する人が少なからず生まれてしまう。
言葉が変わるだけで、感情の評価が、かなり変わってしまう。
これが“ネーミングバイアス”だ。
「本格焼酎」という言葉も、まさに同じ様な構造を持っていると思う。
本来は“伝統製法”を意味するだけなのに、聞く人によっては「硬派すぎる」「昭和っぽい」と感じてしまう。
つまり、ネーミングのフレームが時代に合わなくなってきているのかも知れない。
「クラフト」という言葉が開く、新しい扉
一方で“クラフト”という言葉は、圧倒的にポジティブだ。
「造り手の個性」「小規模生産」「情熱や手仕事」など、温度のあるニュアンスを自然に想起させる。
そして驚くことに、焼酎はその定義にピッタリ当てはまるのだ!
芋・麦・米・黒糖・そば、原料も製法も多様で、蒸留や麹の組み合わせで無限の個性が生まれる。
これほど“クラフト的”な酒は他にないんじゃない?
にもかかわらず、“本格”という硬い日本語ラベルが、かえってその魅力を覆い隠してしまっている。
もし“クラフト焼酎”と名乗ったなら──その瞬間に消費者の認知は変わるんじゃないのか?
「飲み比べてみたい」「造り手を知りたい」「自分の好みを見つけたい」──行動を促すナッジになる。

本格焼酎という言葉のまとめ
「本格焼酎」という言葉は、戦後の劣勢から立ち上がるための誇りの象徴だった。
だがその“盾”は、今の時代には“壁”になりつつある。
いま必要なのは、“クラフト焼酎”という新しい言葉で再び物語を開くこと。
それは、ただのネーミング変更ではない。
造り手の努力と飲み手の共感をつなぐ、カルチャーの翻訳作業なのだ。
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