「酒場放浪記」の吉田類さんと巡る絶景の滋賀・蓬莱山: 謎の巨大カルデラの痕跡を追って (元教授、定年退職263日目)
吉田類さんをご存知でしょうか。詩人、俳人、イラストレーターなど、多彩な肩書きを持つ才人です。というより、「吉田類の酒場放浪記」(下写真)や同名の著書・映画でも広く知られており、最近ではそれに加えて「にっぽん百低山」も手がけておられます。2003 年にスタートした「酒場放浪記」は、20 年以上にわたって愛され続ける長寿番組です。関西では月曜夜の9時から BS-TBS で、15 分番組を4本続けて放映しており、私の現役時代は大学から帰宅後、夕食のお供としてよく楽しんでいました。

吉田さんは、街の片隅にある気取らない居酒屋を好み、控えめながら独特の語り口で店主や常連客とすぐに打ち解けます。地酒を中心に次々と杯を重ね、酒の肴も次々と注文する姿は、視聴者を一緒に飲み歩いているような気分にさせてくれます(下写真)。ほろ酔いの吉田さんが、ふらりと店を出ていく後ろ姿にご自身の句が重なるのがお決まりのラストシーンです。近年では、スピンオフ番組として「おんな酒場放浪記」という新たな姉妹番組も始まりました。

吉田類さん、「酒場放浪記」から「百低山」へ
そんな吉田類さんが約5年前から始めたのが NHK 番組「にっぽん百低山」です。何回か視聴しましたが、「酒場放浪記」とは一転、元気に山を登る彼の姿が印象的です(まあ、低山ですが)。今回は、滋賀県の蓬莱(ほうらい)山(標高 1,174 メートル)を訪れる回を視聴しました。蓬莱山は大津市に位置する比良山系の一峰で、「日本三百名山」にも選ばれ、琵琶湖を一望できる絶景スポットとして知られています。(タイトル写真は、吉田さんの句も添えて:注2)

<追記> 「蓬莱」とは古代中国で仙人が住むとされる霊山のことです。比良山系は比叡山延暦寺の修行の場でもあり、いつしかこの名前がついたと言われます。江戸時代には歌川広重がその美しさを錦絵に描きました(下写真)。

吉田さんは地元出身の俳優である石川萌香さんとともに登山を開始します。杉林を進むと、清らかな音を響かせる「薬師の滝」に出会います。かつては修験者たちの滝行の場だったそうです。さらに登り進むと、道を塞ぐように奇妙な縞模様を持つ「守山石」が現れます。京都の寺社仏閣や庭園でもよく見かけるこの石は、後に重要な意味を持つことになります。(下写真もどうぞ)



カルデラ「コールドロン」が語る太古のロマン
稜線に到達すると、眼前に琵琶湖の大パノラマが広がり、咲き誇るリンドウの花々が絶景を彩ります。そこで龍谷大学の多賀教授が登場し、カルデラ「コールドロン」について解説を始めました。(下写真もどうぞ)


中生代 後期白亜紀(約 7,400 万年前)、この地には火山活動によって形成された巨大カルデラが存在していました。その規模は長径 60 キロメートルにも及び、世界最大級として知られる阿蘇カルデラ(長径 25 キロメートル)をはるかに上回るものでした。現在はその巨大カルデラは影も形もなく、その痕跡が「コールドロン」と呼ばれるのだそうです。(下写真もどうぞ)

このコールドロンの存在を裏付けるのが「花崗斑岩(かこうはんがん)」の存在です(下写真)。地下深くのマグマが急速に冷却して固まったこの岩石が、7,400 万年前の地層から大量に発見されています。先ほどの縞模様の守山石も、この太古のカルデラが残した証なのです。悠久の時を超えて語りかけてくる地球の歴史に、深い感動を覚えました。

下山後は、鮒寿司と地酒で乾杯!
下山後、吉田さんと石川さんは滋賀の酒場を訪れます。名物の鮒寿司を肴に地酒を楽しむ様子が映し出されました(下写真)。私の奥様はこの鮒寿司が大好物ですが、私は独特の香りが苦手で、冷蔵庫に入れる際は厳重にラップで包んでもらっています(笑)。

山の絶景と太古のロマン、そして最後の酒場まで、とても楽しい充実した内容の番組でした。蓬莱山は標高こそ高くないものの、登山としてはなかなかの難所とされているようです。私もまずは体力作りから始めたいと思いました。
−−−−
注1:BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」ホームページよりhttps://bs.tbs.co.jp/sakaba/
注3:NHK「にっぽん百低山」番組とホームページよりhttps://www.nhk.jp/p/ts/NLKZP1Q6Y7/
