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甘い物はなぜ別腹?──脳がコントロールする食の不思議 (元教授、定年退職435日目)

飲んだ後はラーメンか、それともお茶漬けか──“シメ文化” の地域差と嗜好の変化

お酒を飲んだ後、皆さんはシメに何を食べたくなりますか? 若い頃の私にとって、定番はラーメンでした。脂っこいスープが、酔いを和らげてくれる気がしたものです。しかし年齢を重ねるにつれ、最近は専らお茶漬け派に。あっさりとした味が胃に優しく、「締めくくる」感覚に合っているように感じます。ところが沖縄では、なんと「ステーキ」が定番だと聞いて驚きました(注1)。飲み会の後にシメとして、赤身肉のステーキをガッツリと食べる文化が根付いているのだそうです。調査によれば、沖縄県は日本で最もステーキを消費する地域でもあります(人口当たりのステーキハウスの店舗数がダントツ:下写真)。ちなみに、私はたまにフランス料理などをお呼ばれした時も、自宅に帰ってから、ちょっとだけお茶漬けが欲しくなります(好みが似てきたのか、奥様も付き合ってくれます)。

沖縄は人口当たりのステーキハウスの店舗数がダントツ(注1)


なぜ “甘いものは別腹” なのか──「チコちゃん」が教えてくれた脳内の秘密


先日、NHK の『チコちゃんに叱られる』で「なぜ甘いものは別腹で食べられるのか?」という特集を見ました。私は食後に甘いものを食べたくなる感じがよくわかりません(コーヒーならわかります)。ただ確かに、現役時代に研究室で飲み会を開いた後には、女子学生たちが「パフェが食べたい」と言い出す場面が度々ありました。中には、まだ飲み足りないと豪語する九州出身の女子たちもいましたが、多くは甘い物でシメたい派でした。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注2)

『チコちゃんに叱られる』で特集(注2)


番組では、甘党で知られるプロレスラー・真壁刀義さんを被験者にした実験も行われました。豚丼をたらふく食べて「もう入らない」と言った直後、MRI で胃を撮影したところ、胃には隙間がほとんどありませんでした。しかし満腹状態でも、モンブランを見て匂いを嗅いだだけで、胃に “空きスペース” が生まれる様子が MRI 画像で確認されたのです。その後モンブランを食べ始めると、さらに胃の隙間が大きくなりました。(下写真もどうぞ)

プロレスラー・真壁刀義さんを被験者にした実験(注2)
胃に“空きスペース”が生まれる様子が、MRI画像で確認された(注2)


別腹を生むホルモン「オレキシン」の働き──“好物”が胃を動かす?


専門家によると、この「別腹」にはオレキシンというホルモンが深く関わっているとのことです。オレキシンは、好物や甘いものを目にしたときに脳から分泌され、胃の働きを活発にし、既に満たされていたはずの胃の内容物を小腸へと移動させるのだそうです。つまり、胃に「新たな空間」を作ってくれるわけです。面白いのは、甘いものに限らず、自分の好きな食べ物全般にこの反応が起こること。理屈抜きに「これならまだ食べられる」という感覚が、実は脳とホルモンの連携によって生み出されているのです。(下写真もどうぞ)

「別腹」にはオレキシンというホルモンが深く関わっている(注2)

<追記:空腹時と満腹時の脳のメカニズム> 人が空腹を感じる時、体内のエネルギー消費により血糖値が低下し、脳の摂食中枢に情報が送られ「食べろ」と指令が出されます。満腹時は血液中の糖分が十分に満たされ、その情報が脳の満腹中枢に送られ、食欲にストップがかかるのだそうです。(下写真もどうぞ)

空腹時と満腹時の脳のメカニズム(注2)


進化が残した “別腹” の意義──栄養バランスと生存戦略

この「別腹」は、ただのわがままな食欲ではありません。進化の過程で「食べられるときに食べておく」ために備わった、合理的な機能だという説も紹介されていました。現代では想像しにくいかもしれませんが、狩猟採集時代の人間にとって、次にいつ食料にありつけるかわからない状況では、満腹でも栄養を摂り込んでおく必要があったのです。

また、栄養バランスの観点でも、タンパク質中心の食事のあとに糖質や炭水化物を摂取することは理にかなっています。たとえば、焼肉の後に食べるデザートのアイスクリームは単なる嗜好の問題ではなく、身体が必要とする栄養素を補う行動でもあるそうです。


屋外で食べると美味しく感じるのはなぜ?──“脳のブレーキ” とドーパミンの関係


別腹の話を聞いていて、以前同じ番組で紹介されていた「バーベキューはなぜ美味しく感じるのか」という特集を思い出しました。野外でのバーベキューは、なぜか普段の料理より美味しく感じますよね。番組では、その理由の一つとして “ドーパミン” の分泌が挙げられていました。

ドーパミンは、快楽や幸福感をもたらす脳内物質で、楽しい環境やリラックスした状況で多く分泌されます。開放的な空の下、親しい人たちと過ごすバーベキューは、まさにドーパミンがあふれ出す状況です。逆に、仕事の会食など緊張感のある場では、前頭前野がブレーキをかけ、ドーパミンの放出を抑制するため、同じ料理でも美味しさを感じにくくなるのだそうです。(下写真もどうぞ)

バーベキューでは、快楽や幸福感をもたらす脳内物質ドーパミンが出る(注2)

子どももピーマンを克服?──脳がもたらす “食の変化”

このドーパミン効果は、子どもにも強く現れるそうです。番組では、ピーマン嫌いの子どもが、自分で焼いたピーマンをバーベキューで食べるという実験が紹介されていました。ドーパミンの影響かどうかは不明ですが、結果は一応成功だったようです。脳が「楽しい」と判断すると、普段は敬遠していた食材でも、味覚が変化するというのは興味深い現象です。


私も現役時代には、時々、学生たちとバーベキューを行う機会がありました。確かに室内の飲み会よりも盛り上がっていた覚えがありますが、それがドーパミンの作用だったとは思いもよりませんでした。甘いものも、屋外のバーベキューも、実は “脳の指令” だったと思うと、人間の仕組みに感心するとともに、少しだけ怖くもなりました。


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注1:読売テレビ系「秘密のケンミン SHOW 極:『沖縄のステーキ』特集」より
注2:NHK「チコちゃんに叱られる:『甘い物は別腹』と『バーベキュー』特集」より


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