産卵の瞬間、心臓が止まる!?──科学が解明したサケの命懸けのドラマ @ザ・バックヤード(元教授、定年退職650日目)
朝食の塩ジャケがつなぐサケ科学最前線
小〜高校生の頃、家の朝ご飯でよく出されたのは、納豆、卵、そして塩鮭でした。たいてい寝坊して数分でかき込むため、ゆっくり味わって食べる時間はなかったのですが、これらはテンションが上がるおかずでした。特に塩鮭は、当時は皮の部分が大好きで、カリカリに焼いてもらったことを覚えています(いつからか私はそれほどでもなくなり、現在は奥様の好物となっています)。当時は塩鮭のことを「塩ジャケ」や「塩引き」と呼んでいました。ずっと「なぜだろう」と思っていたのですが、最近 NHK『ザ・バックヤード』の「鮭」特集で、その謎が解けました。一般に「鮭」と呼ばれる魚は、標準和名では「サケ(シロザケ)」で、「シャケ」は関東地方の方言なのだそうです。ちなみに「塩引き」は、魚を塩漬けにすること、または塩漬けにした魚そのものを指します。特に、鮭を強めの塩で漬け込み、熟成させたものが「塩引き鮭」でした。さらに驚いたことに、ニジマスやイワナなど「マス」と付く魚も、実はサケの仲間であり、世界には 200 種以上が存在するそうです。確かに料理屋で「サケ」として「鱒」が出てくることがありますね。(奥様追記:関西育ちの私は「塩引き」という言い方を知りませんでした。新婚のころ、「新巻鮭」が丸々一尾、お歳暮に送られてきた時は、どうしたらよいかわからず、途方に暮れていました(笑))(下写真もどうぞ)

東野幸治も注目! 北海道・千歳移住計画?
この番組を見たのは、実は ABC『東野幸治は移住したい』で、北海道・千歳市を訪問した回を視聴したのがきっかけでした。MC の東野さんは、60 歳を超えたら都会を離れて心穏やかに暮らしたいと考えているとのことです。この番組は、理想的な永住の地を見つけるべく、日本全国に足を運び、移住先の町を調査する旅バラエティーです。過去には岡山県津山市、和歌山県田辺市、京都府亀岡市などを訪れており、通常の移住番組とは一味違った視点から永住の地を探しているため、忖度なく本音で語っているところが面白いのです。そして番組の最後に、移住地として決定するかどうかを発表するのですが、知れば知るほど一つの街に絞れないようです。毎回、移住先の決定は「考え中です」という同じセリフで終わるのが、玉にキズです(「決めました」では番組が終わってしまいますので、仕方がないですね(笑))。(下写真もどうぞ)

北海道千歳市で見つけた都市と自然の共生
北海道の空の玄関口、新千歳空港には何度も降り立ったことがありますが、千歳市の街には行ったことがありませんでした。番組によると「北海道で今後の発展が期待される自治体ランキング」では断トツの1位で、人口も右肩上がりだそうです。半導体メーカー「ラピダス」の進出によって大きな経済効果が見込まれ、目に見えてホテルが建ったり、お店が増えたりしていました。しかも、北海道の中では積雪が少ない方で夏の湿度も低め、人口およそ 10 万人弱と、町と田舎のバランスがちょうど良いということでした。東野さんが最初に訪れたのは水のきれいな千歳川で、その横にある「サケのふるさと ちとせ水族館」でした。川の様子を観察できる施設でサケが間近に見られるとのことでしたが、実際、窓の向こうは水槽ではなく本物の川の中でした。つまり、川の横にそのまま窓を付けてあり、餌もやらないし、魚も放さないのだといいます。番組取材の日は、運良く、今シーズン第1号のサケが来ていました。多い日には、1日で1万匹を超えるほどのサケがやってくることもあるのだそうです。
サーモンパーク千歳の豪華「鮭の遡上丼」
東野さんらはサケの姿を見ていたらお腹が空いたとのことで、水族館の隣にある「道の駅 サーモンパーク千歳」に海鮮料理を食べに行きました。お店では名物「鮭の遡上丼」が、パフォーマンスとともに提供されました。メスとオスのバージョンがあり、東野さんはいくらの入ったメスバージョンを頼んでいました。サーモンや大トロなど、6種類の海鮮が乗った超豪華などんぶりでした。まず自分で好きな具材を選んで海鮮丼にし、最後には魚介だしの海鮮茶漬けを楽しんでいました。ただ残念ながら、最後の移住地決定の一言は、今回も「保留」でした。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注2)

「標津サーモン科学館」で知る、鮭の産卵と飼育技術
NHKの『ザ・バックヤード』では、北海道・標津にある「標津サーモン科学館」を訪れ、サケの産卵と飼育技術について紹介していました。具体的には、サケの遡上と産卵を見せる仕組みとして、魚道水槽を川と直結した展示を行っていました。たとえば 9〜10 月は、近くを流れる標津川と水槽を水門でつなぎ、海から遡上してくるサケの様子をガラス越しに直接観察できます。サケが流れに逆らって遡上する姿を目の当たりにできる仕組みになっていました。(下写真もどうぞ)

サケの産卵に特化した環境とは
11月からは川との接続を絶ち、産卵に特化した環境を水槽内に構築していました。まず実験の結果、サケが「湧き水」のある場所に産卵する習性を見い出しました。さらに、サケが産卵床を作るために拳大の丸石を好むことを突き止めたため、水槽の底に丸石と砂利を敷き詰めました。なぜ丸い石が大事なのかという理由を水槽実験で調べてみると、丸石の隙間に産み付けられた卵は、その隙間を通って下まで転がり、水に流されたり、他の魚に食べられたりしにくいことがわかりました。産卵後はメスがその上に砂利をかけて埋めていきました。(下写真もどうぞ)

感動!サケの産卵行動
興味深かったのは、産卵行動に関しても科学的な発見があったという点です。コントロールされた環境である魚道水槽を利用し、大学と共同で産卵時のサケの心拍を計測した結果、オスとメスが放卵・放精する直後から5〜7秒間、完全に心臓が停止していることが判明したのです。この現象はカラフトマスでも確認されたそうです。明確な理由はまだ解明されていないものの、産卵時に血圧を上げないためではないか、という説があるそうです。
また、産卵直前の行動もわかってきました。まずメスが浮き袋に溜まっている空気を出し、オスは求愛行動としてメスの上を8の字を描くように泳いだり、ブルブルっと震えたりするそうです。その後、メスが口を開けると卵を産む合図になり、タイミングを合わせてオスも並んで口を開けます。互いにそれで合図を送り合って、初めて産卵に至ることがわかったとのことでした。番組の映像でも、確かにメスが口を開けた瞬間にオスが近寄って口を開け、産卵が始まっていました。(上写真もどうぞ)
低い卵の生存率を向上する手法とは
近年、標津町ではサケの漁獲量が 85% 減という深刻な状況に直面していました。調査の結果、開発などの影響で直線化された川では水が砂利に浸透しにくく、卵が酸素不足で死んでしまうこと、すなわち「卵の生存率が低い」ことが原因の一つであると判明したそうです。そこでこの問題を解決するため、川の流れを意図的に蛇行させ、水が砂利内部に浸透しやすくする「バーブ」と呼ばれる突堤を設置しました。その結果、設置前は平均 20% だった卵の生存率が 60% まで向上し、大きな成果を上げているとのことでした。(下写真もどうぞ)

以前に note(10/16,17/2024) で、サケは稚魚がオホーツク海からベーリング海に移動し、その後アラスカ湾などへの壮大な回遊を経て、数年後に生まれた川に戻ってくる──という番組を紹介しました。今回はその前段階の話題でしたが、調査が徐々に科学的に進んでいく様子がわかり、少し安心しました。ぜひ将来も食卓でサケを味わえるように、頑張ってほしいものです。それでは、また。
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注1:NHK『ザ・バックヤード』の特集「標津サーモン科学館」より
注2:ABC『東野幸治は移住したい』の特集「北海道・千歳市編」より
