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なぜ、私たち大人は「薬味」にハマるのか?──みょうがの衝撃と、どっさり薬味の絶品レシピ(元教授、定年退職838日目)

薬味は脇役じゃない!

私は「薬味」が大好きです。たとえば、豚まんやシューマイには辛子、餃子にはラー油、ラーメンには胡椒、お寿司にはわさび。それらがなければ、おいしさが半減してしまうと感じるほど依存しています。むしろ薬味こそ主役といってもよいかもしれません(さすがに言い過ぎでしょうか)。しかも、食べ物と薬味が一対一で対応しているわけではありません。蕎麦なら、温かいものには七味、冷たいものにはわさび。ただし、温かくても海苔の入った花巻そばにはわさびですから、なかなか複雑です。刺身も、マグロなどにはわさびですが、鰹には生姜。鰹のたたきとなると、生姜、みょうが、ネギ、ニンニク、大葉などがてんこ盛りになります。しかし、これほど薬味を楽しめるようになったのは、大人になってからのような気がします。子どもの頃は、むしろ苦味や刺激の強いものが大嫌いでした。調べてみると、子どもは自己防衛本能から、苦味や強い刺激を「毒」とみなして敬遠するのだそうです。それが大人になるにつれ食経験が蓄積され、料理のアクセントとして受け入れられるようになります。その結果、大人たちは薬味をたっぷりとかけて食事を楽しむのです。(タイトル写真もどうぞ:注1)

<追記1> 日本の食文化における「薬味」は、単なる風味づけにとどまらず、医学や食品科学が融合した高度なシステムだそうです。そのルーツは古代中国の医学用語にあり、日本では 12 世紀頃、生姜を処方に加える「加薬味」という言葉として使われ始めました。その後、江戸時代に蕎麦や握り寿司などの外食文化が広がると、食中毒の予防や消化促進を目的として、庶民の食生活に深く定着していったそうです。


『マツコの知らない世界』で知る、薬味の真実

そんな薬味をテーマにした TBS『マツコの知らない世界』を視聴しました。ゲストは料理研究家の小林まさみさんと、舅でアシスタントの小林まさるさんです。93 歳のまさるさんは、今も毎日の掃除や買い出しを元気にこなし、嫁と舅の枠を超えた二人のバディ関係が番組を盛り上げていました(微笑ましいことに、まさるさんは喧嘩をすると、たまに家出をして渋谷へ飲みに行くのだそうです)。番組では、猛暑で食欲が落ちる時期こそ、薬味をどっさり使った料理が食卓の救世主になるとして、数多くの絶品レシピが紹介されました。なかでも興味深かったのが「みょうが(茗荷)」です。その歴史や栽培方法から絶品料理まで、番組の半分ほどを使って取り上げていました。(下写真もどうぞ)

『マツコの知らない世界』で薬味の特集(注1)


みょうがを食べ始めたのはバブル以降?

まず紹介されたのは、6種類の薬味が日本でいつ頃から食べられ、栽培されてきたのかという話題です。古いものでは縄文時代や奈良時代から利用されていました。わさびのように明治時代の出荷記録が残っているものもあれば、大葉やニンニクのように、戦後になって商業栽培が本格化したものもあります。そのなかで驚いたのがみょうがです。全国的に流通するようになったのは、なんと 1985 年頃からだというのです。これにはスタジオも大騒ぎになりました。みょうがの一大産地は高知県で、1980 年代前半に県の試験場が新たな栽培法を開発したことで生産量が飛躍的に増え、全国のスーパーに並ぶようになりました。出荷量はその後も右肩上がりで、日本人がこれほどみょうがを食べるようになったのは、驚くことにバブル期以降なのだそうです。(下写真もどうぞ)

みょうがは意外と最近だった(注1)

<追記2> みょうがを食べると「物忘れがひどくなる」という俗説は、現代の生化学や臨床薬理学によって否定されています。それどころか、みょうが特有の香りの成分である「α-ピネン」や「カンフェン」には、脳を覚醒させ、集中力を高める働きがあるとされています。私も安心しました。


まさるさん、みょうがの3メートル巨木に驚く

そして、高知が隠していた(?)みょうが栽培のビニールハウスに、まさるさんが潜入取材しました。その様子が実に面白かったのです。この栽培法には企業秘密が多く、これまでハウス内の取材は NG だったそうです。今回がテレビ初公開とのことで、マツコさんは「それなら最初は NHK にしなさいよ」と笑っていました。ところが、まさるさんがハウスに入ると、見せられない部分が多く、あちこちで目を伏せさせられます。ようやく顔を上げると、目の前には高さ3メートルを超えるみょうがの巨木が広がっていました。さらに、唐辛子やピーマンのように枝に実るのかと思いきや、収穫するみょうがは足元から生えていました。地下茎から伸びたつぼみの部分を収穫するのです。この光景には、私も大変驚きました。栽培には、連作障害や根茎腐敗病を防ぐために土ではなく、ヤシガラを使った培地が用いられていました。また、美しい紅色を引き出す独自の光制御など、緻密な環境管理が行われており、栽培方法を秘密にする理由がわかった気がしました。(下写真もどうぞ)

今回の一番の驚き。こんなところに生えるとは!(注1)


マツコさん、みょうがづくしの料理に舌鼓

その後は、みょうが料理が目白押しでした。まず披露されたのは、地元の郷土料理「みょうがのちらし寿司」です。みょうがを茹でて塩を振り、甘酢に漬けることで鮮やかな紅色を引き出します。刻んだ芯の部分を、酢飯に混ぜ込んでいました。一方、スタジオでは、まさみさんが採れたてを使ったみょうが御膳を作ってくれました。小口切りのみょうがと塩昆布を温かいご飯に混ぜた「おにぎり」、衣をつけてサッと揚げる「天ぷら」、みょうがをたっぷりのせた夏の「豚汁」、キャベツと合わせた「甘酢漬け」です。マツコさんは次々と頬張り、大絶賛していました。(下写真もどうぞ)

美味しそうなみょうがづくし料理(注1)


猛暑を乗り切る「激ウマ薬味料理」の数々

そのほかにも、数々の薬味レシピが紹介されました。アジの刺身にブロッコリースプラウトと大葉を山盛りにした「梅カルパッチョ」、鶏の唐揚げにみょうがと万能ネギのタレをかける「薬味たっぷり油淋鶏」、大葉をたっぷり加えたチャーハンなどです。夏のランチとして注目されたのは「ツナ缶の冷や汁」でした。ご飯にきゅうり、みょうが、大葉、ちぎった豆腐、おろし生姜を添え、ツナ缶を使った汁をかけるだけで、本格的な味わいになります。さらに究極の手抜きレシピとして、市販の塩ラーメンにニンニクとパクチーを山盛りにする「パクチーレモン塩ラーメン」や、電子レンジで温めた焼きそば麺に熱いごま油と長ネギを和えた料理も紹介されていました。どれも実においしそうでした。(下写真もどうぞ)

薬味たっぷりの料理がたくさん紹介された(注1)


日本の薬味は、単においしさを追求するものではありません。身体の安全を守る仕組みであり、心身を整える手段でもありました。私たちが何気なく親しんでいる薬味の背後には、驚くべき科学と、長い年月をかけて培われた食文化の知恵が隠されていたのです。それでは、また。


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注1:TBS『マツコの知らない世界』の特集「薬味」より



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