「なぜそこにいるのか」──世界一の守備職人「リベロ」が魅せる超人技と戦術 @マツコの知らない世界 (元教授、定年退職823日目)
最近、バレーボール中継も楽しい!
最近、BS-TBS などで日本代表のバレーボールの試合を観ることがあります。ちょうど国際バレーボール連盟が主催する国別対抗の世界大会、いわゆる「ネーションズリーグ」の真っ最中なのです。この大会は 2018 年から始まったそうで、現在は予選ラウンド中です。世界の強豪国の男女それぞれ十数チームが参加しており、日本チームは男子も女子も絶好調で、それぞれ8連勝、6連勝しているところです。大会は大きく二つのステージに分かれています。前半は総当たりに近い形で試合を行い、ベスト8を決める予選ラウンドです。その後のファイナルラウンドはトーナメント方式で、「負けたら終わりの一発勝負」となるため、かなり緊張感があります。一方、予選ラウンドは数週間にわたって世界各地を転戦しながら戦うこともあり、意外に見ていて楽しいのです。国によって会場の雰囲気も違えば、応援の仕方や熱狂ぶりもまったく異なります。それを観ているだけでも面白くなってしまいます。
『マツコの知らない世界』に、高橋藍と古賀紗理那が来た
番宣のようになってしまい失礼しました。ただ、以前に比べてバレーボール全体に盛り上がりがあるような気がしていました。そんな折、先日 TBS『マツコの知らない世界』でバレーボール特集があり、その理由が少しわかりました。ゲストは、ネーションズリーグの合間に出演してくれた高橋藍選手と、2年前まで女子日本代表キャプテンだった古賀紗理那選手でした。月刊バレーボール元編集長も加わり、特にチーム戦術の要である「リベロ」と「セッター」の重要性に焦点を当て、かなりマニアックな話題で盛り上がっていました。(下写真もどうぞ)

最初は、現在のバレーボール人気についての話題でした。石川祐希選手や高橋藍選手といったスター選手の登場、さらに人気漫画『ハイキュー!!』の影響もあり、過去の「東洋の魔女」時代や 1980 年代のブームをも上回る、過去最高の「第6次ブーム」を迎えているのだそうです。チケットは即完売し、グッズ売上も驚異的な数字を記録しているといいます。この強さの背景には、かつての精神論に基づくスパルタ指導から、科学的なトレーニングへの移行もあるようです。選手たちは高いポテンシャルを存分に発揮し、世界と互角以上に戦う時代に入っているのです。
<奥様追記:私世代ではバレーボルといえば何といっても『アタックNo.1』と『サインは V』!>

運動神経の塊「リベロ」の魅力
ただ、盛り上がりの理由はそれだけではありません。身長の壁を越えて日本が世界と渡り合うための最大の鍵が、守備の要である「リベロ」の存在だといいます。以前から守備の上手い選手はいましたが、専門職としての「リベロ」というポジションはありませんでした。攻撃の全面禁止など、かなり不自由な制約を背負うポジションですが、その存在によってラリーが長くなり、戦術も複雑になってきたようです。個人的にも、「なぜそんな球が取れるのか」「なぜそこにいるのか」と思わせる、運動神経の塊のようなリベロを見ているだけで楽しいのです。(下写真もどうぞ)

<追記> リベロ制を提唱したのは、ミュンヘン五輪で金メダルを獲得した松平康隆監督だそうです。小柄な選手にも活躍の場を作り、競技人口を増やしたいという思いもあったようで、1998 年に正式導入されました。
世界を驚かす日本の守備力──“リベロ” がもたらす新時代
日本のリベロが世界トップレベルの守備力を誇る背景には、体格的なハンデを克服するための切実な理由と、高度に洗練された戦術があります。海外の強豪チームに比べてブロックの高さで劣る日本は、必然的にリベロが守るべき範囲が広くなります。ブロックの上を越えてくる強打、ブロックに当たって不規則にコースが変わるワンタッチボール、さらには味方のアタッカーがブロックされた際のカバーまで、日本のリベロは広大な領域を守らなければなりません。海外のリベロがあまり守らないブロックの裏側までカバーする必要があるのです。(下写真もどうぞ)

さらに、日本のリベロは、強烈なスパイクの勢いを殺し、セッターが最もトスを上げやすい定位置に「ふわり」と返す技術に長けています。ボールの回転を極限まで減らすことで、セッターが一歩も動かずに最高のジャンプトスを上げられる状況を作り出します。また、派手に飛び込んで拾うだけではありません。事前にブロッカーと連携して相手の攻撃コースを限定し、抜けてくる場所に「最初から静止して立っている」という予測能力まで持っているといいます。さらに、声を出して周囲のスパイカーの守備位置を動かし、チーム全体のディフェンス構造を最適化する「ディフェンス・コーディネーター」としての役割も担っています。
159cm の革命児・佐野優子──ラリーを支える影の主役
女子で守備技術に決定的な革命を起こしたのが、159 センチの佐野優子選手です。彼女はフランス移籍を機に、上半身の筋肉と強靭な体幹を鍛え上げ、「体から遠い位置で腕の面を頑強に固定し、体幹全体で衝撃を吸収する」という新たなフォームを確立したそうです。つまり、従来の日本で主流だった「腕を体に引き寄せて衝撃を吸収する」レシーブから脱却したのです。これにより守備範囲は左右に数メートルも拡大し、彼女は世界一のリベロとして、2012 年ロンドン五輪での銅メダル獲得に大きく貢献しました。
現在の男子では、天性の嗅覚でボールを拾い上げる山本智大選手と、正確無比な技術で守備をコーディネートする小川智大選手が切磋琢磨しています。女子でも、小島満菜美選手の広い守備範囲とリーダーシップがチームを牽引しています(タイトル写真 (国際大会でのベスト7表彰式より):注1)。彼らは単なる守備職人にとどまらず、献身的なプレーや周囲への声がけで、チームの精神的な支柱にもなっています。
猫田、中田、竹下──「天才セッター」たちの系譜
一方、チームの戦術的アイデンティティを決めるセッターも、体格的不利を卓越した技術で克服してきた歴史を持ちます。私が初めてバレーボールをはっきり認識したのは、1972 年のミュンヘン五輪でした。その男子を金メダルに導いた猫田勝敏選手は、自ら「天井サーブ」を開発し、右腕複雑骨折という大怪我から過酷なリハビリを経て復活した、不屈の精神の持ち主でした。女子バレーでは、15 歳の中学生で代表入りした天才・中田久美選手から、「世界最小最強セッター」竹下佳江選手への系譜が印象的です。竹下選手はアテネ五輪での「ゾーン」体験を経て、2012 年ロンドン五輪の銅メダル獲得時には司令塔としてチームを支えました。リベロの佐野優子選手との 159 センチ「ミニモニ」コンビも懐かしいですね。(下写真もどうぞ)

実は、私も数年前までバレーボール中継をほとんど見ない時期がありました。しかし、それを再び面白くしてくれたのが、今回取り上げた「リベロ」の存在でした。やはりラリーが続くと楽しいのです。サッカーでも、少しかじり出すと、面白いのはミッドフィルダーやディフェンスのようなポジションだったりします。もちろん、点を取るアタッカーやエースストライカーが目立つのは当然です。しかし、私も少しずつ、その面白さがわかってきた気がします。それでは、また。
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注1:TBS『マツコの知らない世界』の特集「バレーボール」より
