京都・哲学の道で出会う「花筏」、そして老舗の花見弁当: 北白川疏水と桜の思い出 (元教授、定年退職384日目)
梅から桜へ── “いけず” な京都の春紀行
先日、NHK の番組『“いけず”な京都旅: 春よ来い、にヒミツあり』を観て、北野天満宮の飛梅の話を note(4/11) に取り上げました。番組では、歌手の西川貴教さんが専門家の言葉をヒントに、京都の春を探す旅を行っていました。初めのテーマ「都に春を告げる花 = 梅」でしたが、やはり春の主役は桜です。私は梅の話を note に書いてひと息ついていたのですが、気づけば近所の桜はすでに散り始め。あわててこの稿をしたためることにしました。(下写真もどうぞ)

抜群の桜スポット──疏水沿いに感じる京都の春
京都には桜の名所が数多くあります。嵐山、御室(仁和寺)、上賀茂神社などの定番に加え、街中では円山公園や木屋町の高瀬川沿いも見どころです。ただ、私にとって思い出深いのは、北白川疏水沿いの桜です。学生時代の下宿近くにあり、日々その桜を眺めることで春の訪れを実感できたのです。(<追記>、下写真もどうぞ)
<追記> 疏水とは、琵琶湖から京都へ水を引く人工の運河「琵琶湖疏水」のこと。滋賀県大津市から京都市へ至る約 20km の第1疏水と、トンネルで並行する第2疏水、さらに左京区蹴上から北白川方面に分岐する疏水分線などがあります。明治時代の竣工以来、現在も水道水、発電、農業用水、工業用水として活用される現役の水路であり、近代化を象徴する重要な産業遺産でもあります。
ちなみに番組で、滋賀県出身の西川さんは、「京都の人と喧嘩すると “疏水止めたろか” と言っていた」と笑っていましたが、実際には疏水の管理は京都市側で、滋賀県民が止められるわけではないそうです(笑)。
春のシーズン前になると、疏水の水は一時的に減水して手入れが行われ、3月半ばには再び水が戻ります。それにあわせて乗船場も再開され、十石船が桜咲く疏水を行き交い、春の風物詩となっています。


「哲学の道」の花筏: 一瞬のピンクの絨毯
中でも、銀閣寺から南禅寺に至る「哲学の道」の桜は格別です。もちろん満開時も素晴らしいのですが、花が散り始めた頃、水面に舞い落ちた花びらが埋め尽くす「花筏」は、まさに自然の織りなすピンクの絨毯のようです(下写真)。ただし見られるのはごく短い期間。運よくその時期に訪ねられれば、まさに奇跡でしょう(ちなみに私はかつて、この界隈のご家庭で家庭教師をしており、桜の様子を日々観察してベストな時期に散策できるという特権を楽しませていただきました)。

「哲学の道」には約 450 本の桜が咲き誇ります。この桜は “関雪桜” と呼ばれ、日本画家・橋本関雪さんとその妻・ヨネさんによって寄贈した 360 本の苗木が始まりだそうです。若き日の画家として苦労していた関雪が、地域の人々への恩返しとして植えたという逸話が伝わっています。
桜と和歌の伝統──花見弁当に込められた雅
京都の花見というと、もう一つのお楽しみは「花見弁当」です。番組で紹介されたのは、老舗仕出し料理屋「辻留」による三段重でした。鯛のお寿司や海老しんじょう、木の芽あえなど、春の食材が美しく詰められていました。「辻留」の弁当は、私も京都駅で何度か購入したことがあります。かなり値は張りましたが、冷めても美味しい “さすがの逸品” でした。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注1)

なお、三段重の開け方には作法があり(下写真)、上の二段を持ち上げて右に置き、下から順に開くのが正式だそうです(私は早く中を見たくて、上の蓋から開けていました(汗))。京都の老舗商店には塗りの重箱や器を持参し、お弁当の中身だけ詰めてもらうという粋な風習も残っています。まさに雅な世界ですね。

<追記> そもそも花見の風習は、平安時代の貴族が桜を愛で、和歌を詠む中で生まれたもの。それが江戸時代になって庶民にも広がったとのことだそうです。また三段重の開け方は、茶道・裏千家の作法で「格の低い下段から開けることで、謙遜する気持ちを表している」そうです。
食後の楽しみ: 春を彩る和菓子
そして食後のお楽しみは、和菓子です。今回は改まった席ではなかったため、手頃に買える「おまんやさん」の「花見団子」や「桜餅」が紹介されていました。桜餅は、関東風とは異なり、関西では桜の葉で道明寺粉の餅を包み、中に甘いこしあんが入ったタイプが主流です。つぶつぶとした食感ともちもちの歯ごたえが、春を演出します。

大阪の自宅近くでは、万博記念公園(<追記>)の桜が美しいのですが、今年はバタバタしていて花見には行けませんでした。車窓やモノレールから見える桜の景色で、今年は我慢することにしました。それでは、また。
<追記> 前回の大阪万博の会場は、年月を経て今は大きな森となっています。万博後の赤茶けた広大なさら地の光景が目に焼き付いているという奥様は「私たちも年を取るはずだね」としみじみしています。
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注1: NHK 番組「“いけず” な京都旅: 春よ来い、にヒミツあり」より
