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音もなく飛ぶタカ、ヘビを蹴るワシ──『ザ・バックヤード』で見えた掛川花鳥園の知られざる工夫と情熱(元教授、定年退職776日目)

鳥の声から始まる朝に

5月も中旬になり、急に暑くなってきました。最近は、春や秋がだんだん短くなっているような気がしてなりません。ただ幸いなことに、自宅の周りは緑が多いせいか、まだ春がなんとか残っています。特に朝は涼しい風が通り、過ごしやすい時間です。早朝には、小鳥の声で起こされる日が続いています。昨日の朝は、ホトトギスの声まで聞こえました。ただ、これにうつつを抜かしていられるのも、あと少しです。来月になると、いきなりクマゼミの大合唱が始まります。小鳥の声なら静かに目覚められますが、セミは朝5時半頃から、目覚まし時計よりも大きな音で鳴き始めます。うるさいこと、この上ありません。もうしばらくは、鳥の声を楽しみたいものです。


『ザ・バックヤード』で知る「掛川花鳥園」の舞台裏

そんなことを思いながら、今回は NHK『ザ・バックヤード』で視聴した「掛川花鳥園」の特集を取り上げたいと思います。この花鳥園は、年間約 35 万人が訪れる「花と鳥とのふれあい」を中心にしたテーマパークです。単なる観光施設にとどまらず、希少鳥類の飼育、高度な園芸技術の継承、さらに独自の情報発信を行う拠点としても知られています。番組では、園内だけでなくバックヤードまでかなり詳しく見せてくれたため、とても楽しい時間になりました。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注1)

『ザ・バックヤード』の「掛川花鳥園」特集。そして問題のオシドリ(注1)


「おしどり夫婦」は幻? 鳥のリアルな恋愛事情

園内には約 100 種、600 羽もの鳥が暮らしており、野生の生態や個体ごとのユニークな特徴を間近で観察することができます。最初に副園長から紹介された「裏」の話は、「オシドリの実際の生態」でした(上写真、下段)。一般には、オシドリはオスとメスが常に寄り添う姿から「おしどり夫婦」と呼ばれます。芸能界などでも、仲の良い夫婦を表す言葉としてよく使われています。ところが、園長のお話によると、実際の事情は少し違うようです。オシドリは毎年パートナーを変えることがあり、浮気をすることもあるのだそうです。そのため、生態をよく知る人にとっては、「おしどり夫婦」という表現が、必ずしも褒め言葉とは限らないとのことでした(笑)。


タカが静かに飛ぶことができる秘密

今回、個人的に一番楽しかったのは猛禽類のコーナーでした。まず紹介されたのは、タカの飛行の特性です。タカは獲物に気づかれずに狩りをするため、非常に静かに、しかも低空を飛びます。実際にゲストが後ろ向きに座っていると、タカが低空飛行で近づき、すぐ横をかすめていったにもかかわらず、気づかないほどの静かさでした。まさに音もなく飛ぶ姿に、ゲストも驚いていました。ちなみに、今回登場したのは「ノスリ」という種類のタカでした。その名前には「地面を擦る」ほど地面すれすれを飛ぶ、という意味があるそうです。

では、なぜ大きなタカが俊敏に、しかも静かに飛ぶことができるのでしょうか。その秘密は羽根にありました。翼を広げたときにパッと伸びる「風切羽」が重要なのだそうです。羽根は木の葉のような形をしており、真ん中に芯があります。構造を保ちながら内部を空洞化することで、丈夫でありながら軽い構造になっているのです。このように、狩りをする鳥は、静かに飛ぶための翼の形や動かし方を身につけています。一方、ハトなどの被食者は、素早く羽ばたいて逃げる必要があるため、羽音が大きくなるのだそうです。(下写真もどうぞ)

タカの低空飛行。そして俊敏で静かな理由(注1)


ヘビクイワシの必殺キック

番組では、少し変わった猛禽類も紹介されました。それが、ヘビクイワシでした。まず、見た目がほかの猛禽類とはかなり違います。フラミンゴやツルのように長い脚を持ち、もちろん飛ぶこともできますが、1日に 20〜30km も歩いて移動することがあります。映像を見ると、走る姿もかなり速く、もし近くにいたら少し怖いかもしれません。この鳥で特に面白かったのは、ユニークな狩りの方法です。番組では、ヘビのおもちゃを使ってその様子を見せてくれました。ヘビクイワシは、長い脚を使って、ヘビを何度も蹴って攻撃します。しかも、やみくもに蹴るのではなく、急所である頭部を狙って正確に蹴るのです。どうやら、効率的に相手を弱らせる部位を理解しているようでした。長い脚を振り下ろす動きは非常にダイナミックで、実際に一度見てみたいと思いました。(下写真もどうぞ)

ヘビクイワシのキック。狩りの様子も(注1)


GPS装着から爪・くちばしケアまで──鳥の健康管理最前線

バックヤードの紹介では、鳥たちの安全管理や健康管理についても詳しく説明されました。屋外ショーを行う鳥には、万が一、風に流されたり遠くへ行ってしまったりした時のために GPS が装着されていました。これによりスタッフが鳥の位置を把握し、迎えに行くことができます。日常の健康管理にも細やかな工夫がありました。たとえば、鳥が同じ場所に止まり続けると、足裏にタコのような趾瘤症ができることがあります。それを防ぐため、止まり木にはトゲトゲした素材を使い、体重が一点に集中しないようにしていました。また、爪が伸びすぎて自分の体を傷つけたり、下くちばしが伸びすぎて食事がしづらくなったりしないよう、鳥を安全に保定したうえで、定期的に爪やくちばしを適切な長さに整えていました。(下写真もどうぞ)

鳥の健康管理も万全(注1)


自動灌水システムが支える、一年中満開の楽園

掛川花鳥園のもう一つの主役は、全天候型のガラスハウス内で、一年中満開に保たれている植物です。この空間では、鳥たちが自由に飛び回る一方で、植物を健全な状態に保つためには、相当高度な管理技術が必要です。たとえば、この園の象徴ともいえるインパチェンスの立体展示があります。自然のシャンデリアのように、天井から吊るされた鉢が空間全体を色彩で埋め尽くしていました。これは、バックヤードにある自動灌水装置によって、一年中満開の状態に保たれているのです。(下写真もどうぞ)

自動灌水装置の仕組みがすごかった(注1)


この自動灌水システムは、素焼きセンサーと毛細管現象を利用した緻密な仕組みで動いています(上写真)。天井から吊るされた無数の鉢には、それぞれ上からチューブが下がっており、一鉢ごとに自動灌水装置が接続されています。装置の先端には、土の乾燥を感知する「素焼き」の部品が取り付けられています。鉢の土が乾いてくると、毛細管現象によって、素焼きセンサー内部の水が土の側へ引き出されます。水が外へ出ることで装置内の水位が下がり、内部の圧力も低下します。この圧力低下をきっかけにバルブが開き、点滴のようにポタポタと水が供給されるのです。さらに、十分な水が供給されて土が適切な湿り具合になると、給水は自動で止まります。この仕組みの最大のメリットは、水をやりすぎるのを防ぎながら、常に植物にとって最適な水分量を保てる点にあります。


掛川花鳥園は、来園者が鳥や花と間近でふれあえる魅力的な施設でした。しかし、その表舞台の裏には、鳥の野生能力を維持する工夫、GPS による安全管理、爪やくちばしの手入れといった繊細な健康管理、さらに植物の美しさを保つ自動灌水システムなど、専門的で緻密な努力が積み重ねられていました。また、熱狂的なファンを獲得している背景には、飼育スタッフによる書籍『掛川花鳥園 鳥の事件簿』のような独自の情報発信もあるようです。中には「鳥に噛まれると痛いランキング」や珍事件など、スタッフだからこそ語れる愛情深い日常のエピソードが紹介されているとのことで、楽しそうですね。


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注1:NHK『ザ・バックヤード』の特集「掛川花鳥園」より


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