私の本は旅をする
【シロクマ文芸部: 古本を】
※小牧幸助様主催のお題に寄せて
古本を売ったのは、
結婚に伴う引っ越しの際、
昔のいわゆる『推し』に関する
蔵書が途方もない冊数だったから。
当時はさすがに、夫に対して
気遣いや遠慮なんて高尚な心理が
まだ私にも存在した。
子供の頃からマニア気質。
次々と色んな人だのキャラだの
2次元3次元2.5次元を問わず、
愛して凝って集める人生。
だから、リアル恋愛などに
かまける暇なんて無かったと言える。
(↑ え??💧)
それでも、やむに止まれぬ事情が生じ
今の夫と結婚する運びとなった。
正直ピンと来ないまま、
そんなものかと流れで結婚に至る。
原因はやはり、推し活だった。
※ここだけの話だけどね!
当時私は、全身全霊を賭けて
推している最愛のバンドがあり、
特にそのギター担当の彼を
こよなく愛してライブに通っていた。
田舎者のライブ参戦は、
都会の方には分からぬ苦労がある。
そもそも、仕事は休まねば行けない。
ライブ会場まで、電車を乗り継ぎ
片道2時間以上。
しかもこのバンド、大抵2〜3日
連続でライブを行い、しかもそれぞれ
全く違うコンセプトなので、
マニアはもちろん全日程に通う。
毎日衣装も替え、ライブ会場で
知り合った仲間の家に泊めてもらう。
凄い出費だが、それも苦にならない。
それこそが オ・タ・ク 😆💕
更に有給休暇の
連続取得も予め必要になる。
ライブに使う有給を残すため、
多少の体調不良など我慢して働く。
本当に、生活の全てを賭けていた。
楽しみであり、生きる目的だった。
そんな幸せの絶頂で、事件は起きた。
大阪城ホールでのライブ終盤、
突然MC兼ボーカルのメンバーが
私の推しであるギタリストの
結婚と、脱退を発表した。
・・・ポッキリ
貴方は、自分の心が折れた音を
聞いたことがあるだろうか?
私はその時、それを聞いた。
全身からチカラが抜けて、
盛り上がるホールの中で、
一人座席に崩れ落ちた。
隣に居たライブ仲間は後に
『ブルーちゃんの魂が、
ヒュン!と音を立てて抜けるのを
感じたよ・・・』
と、その悲劇の瞬間を語った。
ライブから帰った私は、
燃えカスだった。
何を見ても笑えないし、
何をしても楽しくない。
見かねた友人がセッティングして、
遊びに行くという体裁の
『合コン』的な催しを開き、
そこで紹介されたのが今の夫だ。
友人は、私の好みを
どう捉えていたのか?
今思えば甚だ疑問である。
だって、見事に私の好みの
逆を突く相手ではないか!
どこから見ても好みじゃない!
ただ、一つだけ思い当たるのは…
あの推しギタリストと
偶然名前が一緒!!
やはり、その時期の私は抜け殻で、
燃えカスであり、正常な思考が
働いてはいなかったようだ💧
言ってしまえば自暴自棄?
もうどうでもいい
何か、今までの自分や環境を変えたい
そんな思いに取り憑かれていた。
推しを失ったオタクとは、
これほどまでに哀れな生き物なのか😢
濁流に押し流される立木のように、
私は結婚という流れに逆らえず、
あれよあれよと期日間近になった。
とてつもない量のオタクグッズの
多くは同好の士、歴戦の戦友に
形見分け(大袈裟💧)をしたが、
マニアック過ぎる歴代推したちの
著書と、かつて三國志にハマって
わざわざ取り寄せた研究書や
解説本は貰い手がつかない😭
三國志関連は、最寄りの図書館へ
寄贈する事になり無事納まった。
で、結局推し本に関しては、
涙の別れをして、古本屋に売った。
その安価さには、腰が抜けた😭
そんな昔の出来事も、
怒涛の子育て期間を経て
遠い記憶の彼方、美しい青春の
夢のように思える頃・・・
パートを始めたホームセンターで、
古本市のイベントが開催された。
手伝いを頼まれ、古本を並べる
特設売り場を設置したり、
ポップや飾り付け、案内看板の
取り付けなどを皆で行う。
開催前日、ついに売り物の
古本を満載した段ボールが届く。
業者の男性が本を並べるのを、
手伝いながらワクワクしていた。
生来の、本好きの虫が騒ぎ出す。
専門書、児童書、小説、実用書
どれも雑多なラインナップで
見ているだけでも楽しかった。
その中に、見覚えのある
派手な背表紙が見えた。
あの時に売り払った、
ある推しの著書シリーズ三連作だ。
時を経て見ても、独特過ぎる装丁
(笑)
今でも歴代の推しは全員好きだが、
繰り返し読みたいと思うほどの
内容ではないなと思う。
愛はあっても、心は現実を見ている。
大人になったな、私! と感慨深い。
懐かしくて、一冊手に取り、
パラパラとページを開いてみた。
と、中からハラリ・・・
落ちた栞に覚えが!
それは、私の手描きの推し絵。
挟んだまま、気付かずに売ってた!
てか、
この本私があの時売ったやつ?!
マジか!?
マニアック過ぎる装丁と内容に、
買い手が付かなかったらしい。
どんだけ?!💦
しかし、業者では挟んでるものを
除去しないものなのか?
挟んだまま何年も、いやさ、
下手すりゃ10年以上に渡り、
あちこちの店頭や会場を
転々としてきたのか・・・
そして、再び私の元へ?!
こんな運命の再会を、
誰が予想した事か!
で?また買い戻すの?
答えは否!(笑)
内容はもう知ってるし、
それは繰り返し読みたいものじゃない。
栞は恥ずかしいので回収したかった
けれど、一旦売ったものは本の一部で
万引きになるみたいだから諦めた。
まあサインしてる訳でもなく、
私のだと知る人は誰も居ない。
その前に、あの本を手に取る人が
あるかどうかが甚だ疑問💧
それからまた数十年・・・
あのマニアックな本は
あれから誰かに売れただろうか?
それともまだ、あの派手な装丁を
煌めかせながらあちこちで、
『変な本・・・』
とか思われながら、流浪の旅を
続けているのだろうか?
どこかで誰かがあの変な本を、
手に取ってくれたら・・・
そんな想像をする事も、
本好きならではの楽しみかも知れない。

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